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第24章 巨星と大公
初戦
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「保科公が……亡くなられました……」
別所の言葉に司令官室の赤松は静かに頷いた。西園寺と烏丸の対立を危惧していた巨星保科老人の死の意味するところは一つだった。清原准将貴下の烏丸派の部隊の決起は近づいている。しかし赤松にはしなければならないことがあった。
「準備を。出撃準備の中止を……」
「それは無理やろ」
そう言って手にしていたペンをくるりと回す。実際、別所に言われるまでもなく艦隊指揮官達は誰もがこの出撃を中止するように進言を受けていた。特に陸軍の帝都周辺の守備隊のわずかな西園寺派の一人、醍醐文隆准将には昨日の深夜まで説得を受けていた所だった。
「確かに越州の行動を許せば胡州は分裂します。ですが全艦出す必要は……」
「あるから出すんじゃ。必要ないのやったら誰もそんなことするわけないやろ」
別所の言葉をあっさりとさえぎる赤松。その態度の別所はこの上官があることを決めているのではないかと思って口を開いた。
「清原軍と決戦を行なうつもりですか?」
そう言われると嘘のつけない赤松はニヤリと笑った。
「恐らく船の数なら陸軍の佐賀さんの揚陸艦を大量に動員してくるあちらが上や。でもこちらは海軍。宇宙を制するのはお手の物やろ?ワシとしては貞坊……いや安東のアサルト・モジュール部隊がつぶせればいい勝負ができる思うとるんやけど」
「それならお任せください……と言いたい所ですが……」
赤松の挑発に乗るほど別所は自信家では無かった。海軍の教導隊の隊長として何度か安東とは模擬戦を経験しているがすべて安東が勝利している。同じ三式ならば数で押してもどうにかなるだろうが、安東は現在、胡州陸軍で最新式の五式試作戦を使用しての運用試験を行なっている最中と聞いていた。そのスペックは別所も聞いていたので勝ち目が少ない事実も知っていた。
しばらく黙り込んでいる別所に近づくようにと赤松は手招きする。
「実は……新三の奴が動いてるみたいでな」
そう言って赤松は端末の画面を別所に向けてニヤリと笑った。
「嵯峨大公が?しかし何で……」
別所の言葉に赤松は不敵な笑みを浮かべて机の上に画像を表示させる。
そこには濃州に向かう泉州艦隊の姿が見て取れた。
「同じ嵯峨でも地下の佐賀高家はんは人望が無いからな。嵯峨家の被官でも濃州に近い泉州の自衛軍の面々は高家はんと心中するつもりは無い言うことや。越州軍ははやまった……言うことやな」
「ならなおのこと……」
モニターをにらみつけている別所に笑みで返す赤松。そこにはある決意と冷酷な計算があることがうかがい知れる表情が見て取れた。
「なあに、事を起こしたかったのはワシ等も一緒やねん。在外資産の凍結を解くにはどないな事をしても烏丸はんの一派を駆逐せなならん。その為にはワシ等から動いて見せる必要がある言う事や」
「割り切れるんですか?将軍は」
別所の言葉に視線を落とす赤松。言葉では割り切れていても自分でもどうしようもない感情がそこに見て取れた。妻の実家で妹の嫁ぎ先である安東家と敵対すること。高等予科学校以来の親友の安東貞盛を敵に回すこと。どれもが感情のしこりを残す事実だった。
「下手に察しても何も得にならんわ……ただそう言う状況なんや」
まるで自分自身に言い聞かせるような赤松の言葉に別所はただ静かに敬礼をしてそのまま司令室を後にした。
別所の言葉に司令官室の赤松は静かに頷いた。西園寺と烏丸の対立を危惧していた巨星保科老人の死の意味するところは一つだった。清原准将貴下の烏丸派の部隊の決起は近づいている。しかし赤松にはしなければならないことがあった。
「準備を。出撃準備の中止を……」
「それは無理やろ」
そう言って手にしていたペンをくるりと回す。実際、別所に言われるまでもなく艦隊指揮官達は誰もがこの出撃を中止するように進言を受けていた。特に陸軍の帝都周辺の守備隊のわずかな西園寺派の一人、醍醐文隆准将には昨日の深夜まで説得を受けていた所だった。
「確かに越州の行動を許せば胡州は分裂します。ですが全艦出す必要は……」
「あるから出すんじゃ。必要ないのやったら誰もそんなことするわけないやろ」
別所の言葉をあっさりとさえぎる赤松。その態度の別所はこの上官があることを決めているのではないかと思って口を開いた。
「清原軍と決戦を行なうつもりですか?」
そう言われると嘘のつけない赤松はニヤリと笑った。
「恐らく船の数なら陸軍の佐賀さんの揚陸艦を大量に動員してくるあちらが上や。でもこちらは海軍。宇宙を制するのはお手の物やろ?ワシとしては貞坊……いや安東のアサルト・モジュール部隊がつぶせればいい勝負ができる思うとるんやけど」
「それならお任せください……と言いたい所ですが……」
赤松の挑発に乗るほど別所は自信家では無かった。海軍の教導隊の隊長として何度か安東とは模擬戦を経験しているがすべて安東が勝利している。同じ三式ならば数で押してもどうにかなるだろうが、安東は現在、胡州陸軍で最新式の五式試作戦を使用しての運用試験を行なっている最中と聞いていた。そのスペックは別所も聞いていたので勝ち目が少ない事実も知っていた。
しばらく黙り込んでいる別所に近づくようにと赤松は手招きする。
「実は……新三の奴が動いてるみたいでな」
そう言って赤松は端末の画面を別所に向けてニヤリと笑った。
「嵯峨大公が?しかし何で……」
別所の言葉に赤松は不敵な笑みを浮かべて机の上に画像を表示させる。
そこには濃州に向かう泉州艦隊の姿が見て取れた。
「同じ嵯峨でも地下の佐賀高家はんは人望が無いからな。嵯峨家の被官でも濃州に近い泉州の自衛軍の面々は高家はんと心中するつもりは無い言うことや。越州軍ははやまった……言うことやな」
「ならなおのこと……」
モニターをにらみつけている別所に笑みで返す赤松。そこにはある決意と冷酷な計算があることがうかがい知れる表情が見て取れた。
「なあに、事を起こしたかったのはワシ等も一緒やねん。在外資産の凍結を解くにはどないな事をしても烏丸はんの一派を駆逐せなならん。その為にはワシ等から動いて見せる必要がある言う事や」
「割り切れるんですか?将軍は」
別所の言葉に視線を落とす赤松。言葉では割り切れていても自分でもどうしようもない感情がそこに見て取れた。妻の実家で妹の嫁ぎ先である安東家と敵対すること。高等予科学校以来の親友の安東貞盛を敵に回すこと。どれもが感情のしこりを残す事実だった。
「下手に察しても何も得にならんわ……ただそう言う状況なんや」
まるで自分自身に言い聞かせるような赤松の言葉に別所はただ静かに敬礼をしてそのまま司令室を後にした。
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