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第10章 混沌の戦場
異能力
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「さてと、偉いさんもいなくなったわけだ。ちょっとは肩の力抜いた方が良いんじゃないですか 」
嵯峨の言葉に戸惑う兵士達。彼らの顔を見ながら嵯峨は満足げにタバコをくゆらせた。
「あのー 」
一人の若い下士官が微笑みながら顔を覗き込んでくる嵯峨の独特な雰囲気に耐え切れずに声をかけてきた。
「はい、何でしょう 」
嵯峨はそう言うとくわえていたタバコを、ズボンのポケットに入れていた携帯灰皿に放り込む。
「あなたは本当に嵯峨惟基中佐なんですか? 」
彼の指摘ももっともなことだとクリスは思った。北兼軍閥の指導者として多くのメディアに流布されている重要人物がほとんど手ぶらで敵陣にやってくるなど考えられないことだ。
「ああ、仮面はしてますが本人ですよ 」
そう言うとまたタバコを取り出し火をつける。
「ああ、なんで俺が自分で出てきたかって聞きたいんでしょ? まあ、アサルト・モジュールでの敵中突破、それにその後の交渉ごととか、任せられる人物がいなくってねえ。どこも人手不足ってことですよ 」
そう言いながら笑う嵯峨。兵士達はお互い顔を見合わせた。
「しかし、我々がここであなたの身柄の拘束をするとか…… 」
「ああ、それは無理 」
中年の兵士の言葉をすぐさま嵯峨はさえぎった。
「なんでこのヘルメットしてると思います? 」
後ろのヘルメットの隙間から見える嵯峨の口元が笑っている。こういうときの子供のような目つきを思い出してクリスは危うく噴出すところだった。
「趣味ですか? 」
下卑た笑いを浮かべる無精髭の古参兵。その表情に嵯峨は笑みで返した。
「あのねえ、コイツは思念波遮断の効果のあるヘルメットでしてね。たとえば人間の心臓の動脈はどれくらいの太さがあると思いますか? 」
謎をかけるように嵯峨は兵士達を見回した。
「まあ、答えはどうでも良いんですがね。噂には聞いてるんじゃないですか? 遼州王家の血を引くものに地球人には考えられない力を持つものがあるってこと……その力で頚動脈をキュッてやると当然血管は機能しなくなって瞬く間に脳は酸欠。そのまま昇天と相成るわけですな。他にも心臓、肺、大腿部の血管、それに…… 」
嵯峨はそれだけ言うとまたタバコをふかす。彼の狙いはみごとに決まっていた。人間の心臓の動脈、王家の力。
一つの都市伝説として知られる『王家の力 』。それは透視、空間干渉、思念介入と言った超能力者の部類に入るような力を持った存在がいるらしいというものだった。遼南王家は一切その件には沈黙を守っていただけに真実味がある。兵士達の顔が不安に包まれる。
「安心していいっすよ。俺は今のところそんな力を使う気は無いですから 」
「じゃああなたは力が使えるんですか! 」
幼く見える少年兵士が叫んだ。
「どうでしょうねえ。否定も肯定もできませんね、使えるかもしれない……あるかもしれない。そんなところでしょうか? 不気味でしょ? それが俺の切り札でね 」
そう言うと嵯峨はヘルメットの下から見える頬を緩めた。
「しかし、何ですかねえ。あちらさんもにらみ合いは疲れたでしょうに 」
嵯峨はようやくコックピットから降りようとしている三派連合の隊長機を見つめていた。
「人の心配をしている場合じゃ……!! 」
剣を預かっていた若い兵卒が急に剣を落としそうになった。傷がつけば駆逐艦一隻分の金額を請求されると思っていた彼が無理に手を伸ばしたのが悪かった。剣は地面に転げ落ちると誰もが思っていた。
しかし、剣は滑るように地面を飛んで嵯峨の手に握られた。
「危なかったなあ。ちゃんと持っといてくれないと 」
嵯峨の言葉を最後まで聞くだけの度胸のある兵士はいなかった。彼らはそのまま蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「なんだよ。人のものが傷つくかもしれなかったって言うのにな 」
「嵯峨中佐! 」
クリスのその言葉に嵯峨は振り向いた。仮面の下ではいつもの困ったような顔をあるに違いない。
「見ました? 」
嵯峨はそう言うとポケットを漁る。
「釣り糸、忘れたなあ 」
「そうじゃないでしょ! 今のはなんなんですか! 」
確かに今の動きは嵯峨が剣を操っているとしか思えなかった。当然すべてを見ていたクリスにはこの芸当が手品などで無いことは分かっている。
「ちょっとしたお座敷芸。と言うことでどうです? 」
嵯峨はそう言うと今度は自分の軍服のポケットからタバコを取り出して火をつける。
「それがちょっとしたお座敷芸? それなら…… 」
「ああ、なんならアメリカ陸軍に問い合わせてくださいよ。俺が知っている以上にあちらさんは俺のことを良く知っていますから。なんせ俺を生きたまま解剖した資料が残ってるんだから 」
嵯峨はそう言うと剣を腰の金具に取り付けた。本部のビルと思われるところで逃げ出した兵士が上官に何かを訴えているのがよく見える。
「まあ、初めて見る人には刺激が強すぎたかねえ 」
タバコの煙が目にしみたクリスの表情を察して、嵯峨はタバコを携帯灰皿に放り込むと、四輪駆動車でこちらに向かってくる士官を待っているように直立不動の姿勢をとった。
嵯峨の言葉に戸惑う兵士達。彼らの顔を見ながら嵯峨は満足げにタバコをくゆらせた。
「あのー 」
一人の若い下士官が微笑みながら顔を覗き込んでくる嵯峨の独特な雰囲気に耐え切れずに声をかけてきた。
「はい、何でしょう 」
嵯峨はそう言うとくわえていたタバコを、ズボンのポケットに入れていた携帯灰皿に放り込む。
「あなたは本当に嵯峨惟基中佐なんですか? 」
彼の指摘ももっともなことだとクリスは思った。北兼軍閥の指導者として多くのメディアに流布されている重要人物がほとんど手ぶらで敵陣にやってくるなど考えられないことだ。
「ああ、仮面はしてますが本人ですよ 」
そう言うとまたタバコを取り出し火をつける。
「ああ、なんで俺が自分で出てきたかって聞きたいんでしょ? まあ、アサルト・モジュールでの敵中突破、それにその後の交渉ごととか、任せられる人物がいなくってねえ。どこも人手不足ってことですよ 」
そう言いながら笑う嵯峨。兵士達はお互い顔を見合わせた。
「しかし、我々がここであなたの身柄の拘束をするとか…… 」
「ああ、それは無理 」
中年の兵士の言葉をすぐさま嵯峨はさえぎった。
「なんでこのヘルメットしてると思います? 」
後ろのヘルメットの隙間から見える嵯峨の口元が笑っている。こういうときの子供のような目つきを思い出してクリスは危うく噴出すところだった。
「趣味ですか? 」
下卑た笑いを浮かべる無精髭の古参兵。その表情に嵯峨は笑みで返した。
「あのねえ、コイツは思念波遮断の効果のあるヘルメットでしてね。たとえば人間の心臓の動脈はどれくらいの太さがあると思いますか? 」
謎をかけるように嵯峨は兵士達を見回した。
「まあ、答えはどうでも良いんですがね。噂には聞いてるんじゃないですか? 遼州王家の血を引くものに地球人には考えられない力を持つものがあるってこと……その力で頚動脈をキュッてやると当然血管は機能しなくなって瞬く間に脳は酸欠。そのまま昇天と相成るわけですな。他にも心臓、肺、大腿部の血管、それに…… 」
嵯峨はそれだけ言うとまたタバコをふかす。彼の狙いはみごとに決まっていた。人間の心臓の動脈、王家の力。
一つの都市伝説として知られる『王家の力 』。それは透視、空間干渉、思念介入と言った超能力者の部類に入るような力を持った存在がいるらしいというものだった。遼南王家は一切その件には沈黙を守っていただけに真実味がある。兵士達の顔が不安に包まれる。
「安心していいっすよ。俺は今のところそんな力を使う気は無いですから 」
「じゃああなたは力が使えるんですか! 」
幼く見える少年兵士が叫んだ。
「どうでしょうねえ。否定も肯定もできませんね、使えるかもしれない……あるかもしれない。そんなところでしょうか? 不気味でしょ? それが俺の切り札でね 」
そう言うと嵯峨はヘルメットの下から見える頬を緩めた。
「しかし、何ですかねえ。あちらさんもにらみ合いは疲れたでしょうに 」
嵯峨はようやくコックピットから降りようとしている三派連合の隊長機を見つめていた。
「人の心配をしている場合じゃ……!! 」
剣を預かっていた若い兵卒が急に剣を落としそうになった。傷がつけば駆逐艦一隻分の金額を請求されると思っていた彼が無理に手を伸ばしたのが悪かった。剣は地面に転げ落ちると誰もが思っていた。
しかし、剣は滑るように地面を飛んで嵯峨の手に握られた。
「危なかったなあ。ちゃんと持っといてくれないと 」
嵯峨の言葉を最後まで聞くだけの度胸のある兵士はいなかった。彼らはそのまま蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「なんだよ。人のものが傷つくかもしれなかったって言うのにな 」
「嵯峨中佐! 」
クリスのその言葉に嵯峨は振り向いた。仮面の下ではいつもの困ったような顔をあるに違いない。
「見ました? 」
嵯峨はそう言うとポケットを漁る。
「釣り糸、忘れたなあ 」
「そうじゃないでしょ! 今のはなんなんですか! 」
確かに今の動きは嵯峨が剣を操っているとしか思えなかった。当然すべてを見ていたクリスにはこの芸当が手品などで無いことは分かっている。
「ちょっとしたお座敷芸。と言うことでどうです? 」
嵯峨はそう言うと今度は自分の軍服のポケットからタバコを取り出して火をつける。
「それがちょっとしたお座敷芸? それなら…… 」
「ああ、なんならアメリカ陸軍に問い合わせてくださいよ。俺が知っている以上にあちらさんは俺のことを良く知っていますから。なんせ俺を生きたまま解剖した資料が残ってるんだから 」
嵯峨はそう言うと剣を腰の金具に取り付けた。本部のビルと思われるところで逃げ出した兵士が上官に何かを訴えているのがよく見える。
「まあ、初めて見る人には刺激が強すぎたかねえ 」
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