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第4章 小さな姐御の本配属
不死人
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「結構……もったじゃねえか!」
かなめが少し引きつった笑いを浮かべている。カウラはハンガーの脇の先ほどの戦闘が映っている画像を何度も巻き戻しながら見ていた。目の前には西が敬礼をしている。何か自分でも不思議な感覚に囚われたように感じながら、誠は静かにコックピットから降りた。
「ベルガー!ちっとは新人の教育の仕方がわかってきたみてーだな。まあ詰めは甘いけどな」
モニターとにらめっこをしているカウラにそう言うと、ランは慣れた調子でそのままシミュレーターから降りた。
「それとクラウゼ!」
カウラの機体からアメリアがエレベータで降りようとしている。彼女は自分の方にランの関心が移ったと知るやびくりと背筋を震わせる。
「一応、予備って言ってもオメエもパイロットだろ?もう少し何とかならねーのか?神前に頼りっきりってのは感心しねーな」
奥から出てきた西が図ったようにランにタオルとスポーツドリンクを差し出す。ランはそれを受け取るとそのまままだ画面を見つめているカウラに向かって歩いていく。
「なんかわかったか?」
後ろからランに声をかけられて、カウラは驚いたように振り返って直立不動の姿勢をとる。
「おいおい、神前はお前等の部下だろ?それにあのおっさんのやり方もあるだろうからな。もっと力抜けよ」
ランは笑いながらそう言ってそのままスポーツドリンクのボトルを手に執務室のある階段を登り始めた。
「お疲れ様でした!」
そう叫んだのはアメリアだった。ランは口元を少し緩めると軽く右手を上げてそのまま階段を登っていった。
「言いたいこと言いやがって……あの餓鬼、いつかシメる」
そう言いながらかなめはハンガーの扉に拳を叩き込む。アメリアはすぐに彼女に駆け寄るとかなめの拳ではなくそれが叩き込まれたハンガーの扉をさすった。さすがに手加減をしたらしくへこんでいないことを確認すると、アメリアはかなめの肩に手をおく。
「しょうがないじゃないの。一応あんなちびっ子でも私達の教官なんだから。それに腕は確かなのは一番気に入られていたかなめちゃんが良く知ってるんじゃないの?」
アメリアのその言葉に、口の中でぼそぼそ聞こえない言葉を漏らしながらかなめはそのままグラウンドの外で熊と戯れているシャムと整備員達の方に向かって歩いていった。
「しかし……あらためて見るとクバルカ中佐は本当に小さいですね……」
「『幼生固定』って言うらしいわよ……普通の不死人は成長後に老化が止まるけどクバルカ中佐はあそこで止まっちゃったのよ」
アメリアの口にした『幼生固定』と言う言葉に誠は首をひねった。
「いいじゃないの、ちっちゃくってかわいいから素敵じゃないの。それに丈夫で長持ち……うらやましいわね」
その教え諭すようなアメリアの口調に誠はしぶしぶうなづいていた。
「そう言えば……あの人数億年生きてるんですよね」
誠は以前ランに言われた昔話を思い出してそうつぶやいた。
「あの話か……アタシも聞いてる。でもなあ……はったりだろ、どうせ。遼州文明は確かに古いがそこまで古くはねえらしいからな……」
かなめはそう言うと苦笑いを浮かべた。
「ちょっとアメリアさん……何度も聞きますけど本当なんですか……あの人が不死人だって……」
誠がそう言い掛けたが、アメリアの顔は笑っていなかった。地球人がこの星に植民を始めて500年が過ぎようとしているが、この星の先住民族『リャオ』についての研究は進んでいないと言うことになっていた。入植と同時に起きた独立戦争に端を発する動乱で100年ほどの時間を浪費し、その間に多くの先住民族の遺構は失われ、言葉も文化も今や何一つ残ってはいなかった。
ここ東和共和国も二十世紀末の日本のコピーとしか思えない国となっていた。
「誠ちゃんは隊長とは付き合い長いんでしょ?あの人昔と変わったところある?」
そうアメリアに言われて誠は戸惑った。
確かに彼女が言うように嵯峨は何一つ変わっていない。いい加減な態度はもちろん、誠とはじめてあった時には三十も半ばだったと言うのに今の姿と同じく誠よりも年下な二十歳くらいに見える。ただ誠はそう言うものだとしか思っていなかった自分に恥じた。
「確かにそうなんですね……でも……不老不死なんて……そんなだったらなんで遼州の人口は地球より圧倒的に少ないんですか?」
誠の問いにアメリアは老成した笑みを返す。
「不死人も……『死ねる』のよ」
そう言うアメリアを誠はけげんそうな表情を浮かべて見つめる。
「『死ねる』って……どういう意味です?」
「どういう意味も何もないわよ。文字通りの意味。ある条件を満たすと不死人も『死ぬ』のよ……ああ、私に聞いても無駄よ。そのあたりのことは法術師研究をかじってるひよこちゃんに聞いてみれば……まあひよこちゃんは優しいから法術師である誠ちゃんには教えてくれないかもしれないけど」
「『優しい』から……」
そう言う誠にアメリアは寒い笑いを浮かべる。
「それに簡単に死んだら不死人だなんて言えないわよ」
そう言って笑みを浮かべるアメリアの笑いが寒く感じられる。思わず誠はモニターを確認し終わったカウラに目を向けた。
「ずいぶんとやるもんだな」
近づいてきたカウラのその言葉に誠は思わず笑みを浮かべていた。そんな誠にアメリアがボディーブローを入れる。
「まったく誠ちゃんは!私と話したら次はカウラ?本当に見境無いんだから」
咳き込む誠にカウラが駆け寄った。
「酷いですよ……アメリアさん」
痛みに体を折り曲げる誠を置いて、アメリアはそのままグラウンドに走り出す。
「あいつ、最近お前にきつく当たるようになったな。なにか身に覚えがあるんじゃないか?」
「そんな……ただ不死人の話をしてただけですよ」
「その話はしない方がいい……デリケートな問題だからな」
そう言ってカウラは乾いた笑みを浮かべた。誠は不死の存在だと自称するランのことを思い出しながらアメリアにパンチを食らった腹を押さえつつ苦笑いを浮かべた。
かなめが少し引きつった笑いを浮かべている。カウラはハンガーの脇の先ほどの戦闘が映っている画像を何度も巻き戻しながら見ていた。目の前には西が敬礼をしている。何か自分でも不思議な感覚に囚われたように感じながら、誠は静かにコックピットから降りた。
「ベルガー!ちっとは新人の教育の仕方がわかってきたみてーだな。まあ詰めは甘いけどな」
モニターとにらめっこをしているカウラにそう言うと、ランは慣れた調子でそのままシミュレーターから降りた。
「それとクラウゼ!」
カウラの機体からアメリアがエレベータで降りようとしている。彼女は自分の方にランの関心が移ったと知るやびくりと背筋を震わせる。
「一応、予備って言ってもオメエもパイロットだろ?もう少し何とかならねーのか?神前に頼りっきりってのは感心しねーな」
奥から出てきた西が図ったようにランにタオルとスポーツドリンクを差し出す。ランはそれを受け取るとそのまままだ画面を見つめているカウラに向かって歩いていく。
「なんかわかったか?」
後ろからランに声をかけられて、カウラは驚いたように振り返って直立不動の姿勢をとる。
「おいおい、神前はお前等の部下だろ?それにあのおっさんのやり方もあるだろうからな。もっと力抜けよ」
ランは笑いながらそう言ってそのままスポーツドリンクのボトルを手に執務室のある階段を登り始めた。
「お疲れ様でした!」
そう叫んだのはアメリアだった。ランは口元を少し緩めると軽く右手を上げてそのまま階段を登っていった。
「言いたいこと言いやがって……あの餓鬼、いつかシメる」
そう言いながらかなめはハンガーの扉に拳を叩き込む。アメリアはすぐに彼女に駆け寄るとかなめの拳ではなくそれが叩き込まれたハンガーの扉をさすった。さすがに手加減をしたらしくへこんでいないことを確認すると、アメリアはかなめの肩に手をおく。
「しょうがないじゃないの。一応あんなちびっ子でも私達の教官なんだから。それに腕は確かなのは一番気に入られていたかなめちゃんが良く知ってるんじゃないの?」
アメリアのその言葉に、口の中でぼそぼそ聞こえない言葉を漏らしながらかなめはそのままグラウンドの外で熊と戯れているシャムと整備員達の方に向かって歩いていった。
「しかし……あらためて見るとクバルカ中佐は本当に小さいですね……」
「『幼生固定』って言うらしいわよ……普通の不死人は成長後に老化が止まるけどクバルカ中佐はあそこで止まっちゃったのよ」
アメリアの口にした『幼生固定』と言う言葉に誠は首をひねった。
「いいじゃないの、ちっちゃくってかわいいから素敵じゃないの。それに丈夫で長持ち……うらやましいわね」
その教え諭すようなアメリアの口調に誠はしぶしぶうなづいていた。
「そう言えば……あの人数億年生きてるんですよね」
誠は以前ランに言われた昔話を思い出してそうつぶやいた。
「あの話か……アタシも聞いてる。でもなあ……はったりだろ、どうせ。遼州文明は確かに古いがそこまで古くはねえらしいからな……」
かなめはそう言うと苦笑いを浮かべた。
「ちょっとアメリアさん……何度も聞きますけど本当なんですか……あの人が不死人だって……」
誠がそう言い掛けたが、アメリアの顔は笑っていなかった。地球人がこの星に植民を始めて500年が過ぎようとしているが、この星の先住民族『リャオ』についての研究は進んでいないと言うことになっていた。入植と同時に起きた独立戦争に端を発する動乱で100年ほどの時間を浪費し、その間に多くの先住民族の遺構は失われ、言葉も文化も今や何一つ残ってはいなかった。
ここ東和共和国も二十世紀末の日本のコピーとしか思えない国となっていた。
「誠ちゃんは隊長とは付き合い長いんでしょ?あの人昔と変わったところある?」
そうアメリアに言われて誠は戸惑った。
確かに彼女が言うように嵯峨は何一つ変わっていない。いい加減な態度はもちろん、誠とはじめてあった時には三十も半ばだったと言うのに今の姿と同じく誠よりも年下な二十歳くらいに見える。ただ誠はそう言うものだとしか思っていなかった自分に恥じた。
「確かにそうなんですね……でも……不老不死なんて……そんなだったらなんで遼州の人口は地球より圧倒的に少ないんですか?」
誠の問いにアメリアは老成した笑みを返す。
「不死人も……『死ねる』のよ」
そう言うアメリアを誠はけげんそうな表情を浮かべて見つめる。
「『死ねる』って……どういう意味です?」
「どういう意味も何もないわよ。文字通りの意味。ある条件を満たすと不死人も『死ぬ』のよ……ああ、私に聞いても無駄よ。そのあたりのことは法術師研究をかじってるひよこちゃんに聞いてみれば……まあひよこちゃんは優しいから法術師である誠ちゃんには教えてくれないかもしれないけど」
「『優しい』から……」
そう言う誠にアメリアは寒い笑いを浮かべる。
「それに簡単に死んだら不死人だなんて言えないわよ」
そう言って笑みを浮かべるアメリアの笑いが寒く感じられる。思わず誠はモニターを確認し終わったカウラに目を向けた。
「ずいぶんとやるもんだな」
近づいてきたカウラのその言葉に誠は思わず笑みを浮かべていた。そんな誠にアメリアがボディーブローを入れる。
「まったく誠ちゃんは!私と話したら次はカウラ?本当に見境無いんだから」
咳き込む誠にカウラが駆け寄った。
「酷いですよ……アメリアさん」
痛みに体を折り曲げる誠を置いて、アメリアはそのままグラウンドに走り出す。
「あいつ、最近お前にきつく当たるようになったな。なにか身に覚えがあるんじゃないか?」
「そんな……ただ不死人の話をしてただけですよ」
「その話はしない方がいい……デリケートな問題だからな」
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