法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

文字の大きさ
108 / 201
第二十三章 いよいよ撮影開始

第108話 所詮端役と言うことで

しおりを挟む
「そんなに嫌な顔しないでよ。良いわ。これからランちゃんとかえでちゃん達のシーンを取るから呼んできてよ」 

「おい、上官にちゃん付けは無いんじゃないの?」 

 新藤はずっとバイザーをつけたままだった。首の辺りに何本ものコードをつないだ状態で口だけがにやけたように笑っていた。

「はい、それじゃあ呼んで来ます」 

 誠はそう言ってよろよろとカプセルだらけの部屋を出た。

 アメリアに言われるままに倉庫を飛び出すとそのまま駆け足で法術特捜の分室や冷蔵庫と呼ばれるコンピュータルームを通り過ぎて機動部隊の部屋に戻った。そのあわただしい様子にランやかえではものめずらしそうな顔をしていた。

「クバルカ中佐!日野少佐!渡辺大尉!出番ですよ」 

 誠は机に向かって事務仕事をしているランに声をかけた。

「面倒くせーな。まったく。イメージだけ撮って後は全部AIにやらせるとかできんじゃねーのか?どーせアメリアの奴がそれじゃー安っぽく見えるから駄目だとか駄々こねてるんだろ?ああ、面倒くせえ」 

 そう言いながらランは椅子から降りた。彼女の幼児のような体型では当然足が届かず、ぴょいと飛び降りるように席を立った。

「なんだ?神前。文句でもあるのかよ」 

 ランが不思議そうに誠をにらんだ。実際何度見てもそんな態度のランのかわいさに抱きしめたくなるのは仕方の無いことで両手がふるふると震えた。そんな誠の様子を見て噴出しそうになる渡辺の口をかえでが押さえていた。その様がこっけいに見えたらしく噴出したアンをさらにランがにらみつけた。

「そう言うわけでは無いんですけど……」 

 口を濁す誠を慣れているとでも言うようにランは右手を振りながら扉に向かった。その後ろをかえでとリンが静かについて行きドアを閉める直前でじっと大きめに見える目で部屋をくまなく眺めた後戸を閉めて姿を消した。

「神前先輩、どうでした撮影は」 

 自分の椅子に腰掛ける誠に手にコーヒーを持った女子隊員の制服姿のアンが擦り寄った。

「ああ、俺が出る幕も無かったよ」 

 誠は自分が虫を食べられなくて撮影がストップした話などは省略してアンに虚勢を張って見せた。

「おう、神前。アンに対するときは俺でアタシ等には僕か。微妙な言い回し……もしかして神前もかえでみたいな両刀使いなのか?」 

 それまで呆然と目の前のモニターを眺めているように見えたかなめがにやけながら二人を見つめた。そこにアメリアのような腐った妄想が広がっているのがわかってさすがの誠も動揺した。

「何を言うんですか!西園寺さん!僕は女性にしか興味が有りません!」 

 タレ目を見開いているかなめに、誠は思わずそう叫んでいた。

「そうですよね。僕は男ですものね……神前先輩も女の子の方が良いんですよね……どんなに思っても無駄なんですよね……」 

 いじけるアンの後ろから鋭く光るかなめとカウラの視線が誠に突き刺さった。

 あえてかなめにかかわるのを避けるように誠は端末を起動させた。誠はとりあえず先日法術特捜からの依頼を受けた仕事の続きをすることにした。法術との関係が疑われる事故や犯罪のプロファイリング。写っているのは不審火の現場。これ以外にも三件あった。

 法術特捜の主席捜査官の嵯峨茜の誠達へ出されたこうした宿題は分量的にはたいしたものでは無かったが、その意味するところは実戦を経験してきた誠にも深刻であることが理解できた。無許可の法術使用、特に炎熱系のスキルを使用したと思われる事件の資料。無残に焦げ付いた発火した人々の遺体ははじめは誠には目を向けることもできないほど無残なものだった。

 そんな事件のファイルを見ながら誠は鑑識のデータを拾い報告書の作成を始めた。だが、すでに提出を終えているかなめは暇そうに部屋を見回して誰かに絡もうとしていた。

「西園寺さん、コーヒー飲みます?」 

 手持無沙汰の誠はそうかなめに声をかけた。

「別にいらねえよ……、神前。そこの資料は同盟司法局のデータよりも厚生局の資料を見てから書いたほうが正確になるぞ。あそこは今は違法法術研究事件のおかげで人員の総入れ替えで秘密資料なんて駄々洩れ状態だからな。結構、詳しい資料まで見られるんだ。たぶんもうそろそろ人員体制も整うだろうから今のうちだけの裏技だけどな」 

 かなめの言葉に誠はそのまま厚生局の法術事故の資料のフォルダーを開いた。

「ありがとうございます……ああ、あそこは法術犯罪のケースのまとめ方がうまいですね。参考になります」 

 そう言いながら誠は資料に目を通した。そんな彼の横から明らかに敵意をむき出しにしたかえでの視線が突き刺さった。

「まったく暇でしょうがねえな。こういう時に限って司法警察の連中の下請け仕事も無いと来てる。こういう時に派手な出動が有って映画撮影自体がパーになれば気が楽なのに」 

 かなめは退屈そうにくるくると椅子を回転させた。

 そして沈黙が部屋を支配することになった。ただキーボードを叩く音、画面が切り替わるときの動作音、そして端末の放熱ファンの音だけが響いていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...