法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 節分と『特殊な部隊』

橋本 直

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第四十七章 なんとなくハッピーエンド

第201話 逃げる『駄目人間』

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「知らないわよ!あれは新藤さんが!やったのよ!私のせいじゃないわ!私はちっとも悪くない!関係ないわ!」

 アメリアはこの場にいない新藤に全責任を押し付ける気満々だった。 

「監督ってもんはそう言うもんなの。エンドロールにお前さんの名前が有るじゃないの。だから責任はアメリア、お前さんに有ると言う訳だ。俺は知らないから」 

 すっかりアメリアを追い詰めたことに嵯峨は満足そうにほくそ笑んだ。誠は自業自得とは言えアメリアに同情の視線を送った。

「それにしてもこれで市役所の連中に俺の顔も立ったと言う訳だ。来年どうなるかは知らないけど」

 嵯峨はそう言いながら大鎧姿でマックスコーヒーを飲んだ。そんな嵯峨の姿は実にシュールなものに誠には見えた。

「叔父貴、ここまで来たら普通に終わるのはねえだろ?アメリアの案じゃ小夏とランの姐御のディープキスで終わるらしかったじゃねえか。かえでとリンがあれだけ自由気ままにやってんだからもう少しはっちゃけてもよかったんじゃねえの?」 

 かなめは機械魔女の格好のまま大鎧姿の嵯峨を詰問した。その光景はとても市民会館と言う公の場所で見られる光景では無いと誠は思った。

「あのなあ、俺がそんな指示出すと思うか?新藤の独走だ。まあプロの考えることだからその方が良かったんじゃない?」 

 そう言って嵯峨がその場にいない新藤にすべての責任を押し付けた。

「確かにここに来ているカウラさんが明らかに嫌っている層の客にはそれをやったら受けるでしょうけど、親子連れとかドン引きですよ」 

 誠は嵯峨に向けてそう言って観客の反応が微妙過ぎたことを指摘した。

「いいじゃんそれで。親子連れに受けなければ来年はうちにこんなことを頼むなんて馬鹿なことは市役所も考えないでしょ?うちの苦労も結構あったんだ。面倒ごとは全部あそこに回せって言う市の意図が見え見えで……これで来年は流鏑馬に集中できる」 

 嵯峨は開き直って今度は責任を市役所に押し付けた。

「きっかけはやはり隊長じゃないですか!しかも自分が来年面倒ごとを押し付けられるのが嫌だと言う理由だけでああなったんですか?やりすぎですよ!」 

 誠の言葉に嵯峨は困った顔をした。

「そんな顔したって無駄だよなー」 

「うん!」 

 恐る恐る嵯峨が振り返るとそこには小夏とランが立っていた。

「俺は普通の作品にしろって言っただけで……」 

「聞く耳持たねえよ!」 

「問答無用!」 

 そうして二人で嵯峨の兜を杖でぽかぽか殴った。

「馬鹿!コイツに傷ついたら!これは時代物で文化財なんだぞ!それこそ嵯峨家の家宝なんだ!やめろってば!」 

 嵯峨はそう言うと立ち上がって逃げた。それを追いかけるラン。急な展開についていけなかった誠だが、さすがに止めようと思って立ち上がった。

 フロアーを逃げたはずの嵯峨を追って誠はそのまま大ホールの裏手の楽屋を出た。そこには地味な服を着た集団に囲まれて立ち止まって助けを求めるような視線を送るランがいた。

「君……かわいいね……写真を一枚」 

「あのーサインはしてもらえますか?」 

「出来ればラストの台詞を……」 

 怪しげな一団が携帯端末を手にランを取り囲んでいた。

「はいはーい。うちの娘に手を出さないでねー!順番で写真撮影を……」 

「馬鹿野郎!」 

 その場を仕切ろうとしていたアメリアにランは思い切り延髄斬りを食らわせた。

「なによ!せっかく助けてあげたのに」 

「助けるだ?オメー……。助けるってのは違うだろうが!」 

 怒鳴り声を響かせはじめたランとアメリアにさすがの観客も引き気味にそれを眺めた。

「今度こそは……」 

「なんなんですか?」 

 エントランスホールの片隅で隠れているつもりらしい嵯峨に誠が声をかけた。

「いきなり話しかけるなよ。俺は気が弱いんだから」 

「冗談はそれくらいにしたほうがいいでしょう」 

 誠の後ろからの声に覗き込む嵯峨。そこには笑顔を浮かべてはいるものの目の笑っていない春子がいた。

「ああ、お春さん」 

「お春さんは無いんじゃないですか?あんまりクラウゼさんをいじめてるとしっぺ返しを食らっても知りませんよ」 

 そう言われて落ち込んだように嵯峨は下を向いた。

「だってさ、この上映にかかる費用とかは確かに市が持っていてくれてるけどさあ、製作までにこいつ等が馬鹿やったり宣伝とか言ってあっちこっちに秘匿回線まで使って連絡しまくったりする費用うち持ちなんだぜ」 

「だからと言ってこういうふざけたことは駄目ですよ。ちゃんとあとで新藤を説得してクラウゼに謝罪しましょう」 

 そう言い切る春子にさらに嵯峨が落ち込んだ。

「でも良いじゃないですか。これの方が面白かったですよ。実際、登場人物の設定には近かったですし」 

 誠の言葉に春子の目が輝いた。

「設定なんてあったのか?もしかして衣装とか決めたの神前だからその時クラウゼから何か貰ったんだな!」 

 食いつきの良すぎる春子に誠は慌てて頷いた。

「後で見せてもらうとしてだ。あれどうするんだ?」 

 携帯端末を持った男性陣の前で小夏は楽しそうにポーズを取っていた。相変わらず口げんかを続けるアメリアとランの姿が見えた。それをニヤニヤしながら止めるわけでもなくカウラは眺めていた。かなめの姿が見えないのはタバコでも吸いに行ったのだろう。

「隊長!」 

「ラン。落とし前は頼むわ」 

 この状況を収められるのは機動部隊長の『偉大なる中佐殿』ことクバルカ・ラン中佐しかいなかった。ランは今度はいつもの笑っているとも怒っているともわからない無表情を浮かべて騒いでいる小夏達に向かっていった。

「はいはーい。お楽しみ会はここまで!皆さんお気をつけてお帰りください!」 

 司法局の制服で手を叩きながら近づくランを見て客達はようやく平常を取り戻して出口へと向かった。

「やるもんだなクラウゼ。いつもまとめを頼んじゃって悪いね。俺は隊長失格だわ、やっぱり」 

 ランは息を切らしてホールの中央で仁王立ちしているのを見ながら嵯峨はそう言った。

「小さいくせにやるじゃない」 

 同じようにアメリアは立ち尽くした。

「見てみな、誠ちゃん。友情が芽生える瞬間よ!」 

 サラが近づいてきた誠にそう声をかけた。

「やっぱりこいつ等馬鹿だな」 

 カウラのその一言がしみじみと誠の心に染み渡った。


                                                                         了
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