異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一

文字の大きさ
117 / 168

第117話  トラブル

しおりを挟む
「このバブルの魔鉱石を俺以外に欲しがっていた人がいるんですか?」

 ダズたち冒険者や受付嬢のリアクションからして、希少価値は無に等しいバブルの魔鉱石だが、その無価値な魔鉱石を欲しがる者が優志の他にもいたという証言。

「その人物はどんなことに使用すると言っていましたか?」
「さあなぁ……そこまでは聞かなかったが」

 店主からすれば処分の必要がある魔鉱石を買い取ってくれるというだけでありがたいのだからそこまでは詮索をしなかったのだろう。下手に何かを言って気持ちが移り変わってしまうのを恐れたという点も少なからず影響しているようだ。

「一歩遅かったか……」
「安心しなよ。そいつに売ったのは何も全部じゃねぇ。バブルの魔鉱石ならまだ店に処分しきれないほどある。どうせ処分するものだし、あんたには特別大サービス価格で提供させてもらうぜ」
「ありがとう」

 店主からの心意気に優志が感謝してお辞儀をすると、

「……そういえば」

 何かを思い出したように店主は呟いた。

「さっき来たバブルの魔鉱石を買っていった客だが……どこかで会ったことがあるような気がするんだよな」
「え? 知人ってことですか?」
「確信は持てないが……なんだか懐かしい感じがしてな。まあ、冒険者ばかりいる街だから以前うちに魔鉱石を売りに来た客の一人だとは思うんのだが」

 歯に物が挟まった時のように、頭の中にある引っかかりが気になってしょうがないといった様子の店主。

「まさか……俺と同じ目的で?」

 優志がバブルの魔鉱石を求める理由――それはボディソープ兼軽石という一石二鳥の効果が得られるかもしれないからだ。もしかしたら、その男も優志と同じ目的でバブルの魔鉱石を欲していたのだろうか。

「……考えても仕方がないか」

どう足掻いたところで男の目的は不明のまま。これ以上頭を捻ったところで正解は出ないだろう。
それはさておき、優志はお目当ての代物であるバブルの魔鉱石を求めて再び店内へと戻って行った。
 今の店主とのやりとりを受付嬢に話し、まだ処分をされていないバブルの魔鉱石を購入しようとしたのだが、

「うん?」

 店に戻った優志は、その場に流れるおかしな空気に眉をひそめる。
 受付嬢は口が半開きとなり、大きな瞳をさらに大きく見開いてこれ以上ないというほど驚いている。それは受付嬢だけではなく、周りにいる来店していた冒険者や魔鉱石を購入しに来た一般客も同様だった。

「な、なんなんだ?」

 優志も思わず足が止まった。
 この異様な空気を作っていたのは、受付嬢の目の前にいる一人の女性――誰に聞いたわけでもないが、唯一他の人たちと異なる表情を浮かべていたことから恐らく元凶は彼女なのだろうと推測していた。
 その女性は、

「どうかいたしましたか?」

 黒髪ショートカットに鋭い目つき――アドンが惚れたとされる女性だ。

「何かおかしなことを申したでしょうか?」

 首をカクンと傾けてたずねる女性。
 対して、受付嬢は「え、えっと」と困惑を隠しきれなていない。
 
「あ、あんた、そいつは無茶な注文だぜ」

 たまらず仲介に入ったのは来店していた冒険者で、かつて共にダンジョンへ潜った経験もあるトラビスだった。

「無茶?」

 トラビスのツッコミがいまいち理解できていないようで、女性はそれまでとは反対側に首をカクンと傾ける。
 どこか世間離れしているように思える女性の言動。
 だが、優志には女性が何を求めてもめているのかさっぱりわからないため、トラビスが女性と話している間に受付嬢へ事の顛末を聞くことにした。

「あの人は一体何を言ったんだ?」
「実は――」

 受付嬢が説明しようとしたまさにその時だった。

「ザラはこの店にあるすべての魔鉱石を購入したいと申しただけですが」

 ザラというのは女性自身の名前だろう。
 問題はその後の言葉。

「み、店の魔鉱石を全部購入するだって?」
「そうなんですよ」
「しかし……仮にそうなるととんでもない額になるんじゃないか?」
「それが……」

 困り顔の受付嬢が移した視線の先には、

「……もしかして」

 女性の足元にあったのは大きな麻袋が置かれている。

「金額を耳にすると、表に止めていた馬車から大金の入った麻袋を持ってきて……どうやら本気ですべての魔鉱石を購入しようとしているみたいなんです」
「マジか……」
 
 この世界での生活が長くなってきた優志には、この世界の金銭感覚というものが徐々に身に付きつつあった。慣れ親しんだ円からユラへと変わり、転移当初はその価値を把握しきれずに苦労も多かったわけだが、ようやく最近になってこの世界における一般的な感覚というのがわかってきていた。

 だからこそ言える。
 この店の魔鉱石を根こそぎ買い取ろうとする財力はハンパじゃない。

「相当な金持ちなのか?」
「あるいはどこか名のある貴族の御令嬢とか」
「御令嬢? ……あ」

 ふと、頭に浮かんだのは例の結婚話。
 イングレール家が画策しているとされるものだが、もし目の前にいる大金を持った女性がイングレール家当主の娘だというのか。

 だとしたらあの大金の理由も説明がいく。

「あの子が……」

 意を決した優志は真相を突きとめるため、未だにトラビスともめている女性――ザラのもとへと近づいた。
しおりを挟む
感想 188

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

処理中です...