無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一

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第161話 ラムド渓谷へ

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 自警団からの情報をもとに、俺たちはラムド渓谷を目指して行動を開始した。

 ちなみに今回は遠征となるためクウタに乗って近くまで移動することに。
 直接渓谷へ向かわないのは本当に誰かが潜伏していた場合、クウタの姿を目撃して警戒をされる恐れがあるからだ。

 途中、俺はミネットに声をかける。

「ラムド渓谷か……ミネットは行ったことあるか?」
「残念ながら、ありませんわね。名前は耳にしているのですが、道が荒れていて危険だからとそこを通る貴族はいないそうですわ」

 自警団のライリー団長も似たようなことを言っていたな。

 あのリゾート地へ行くのにラムド渓谷は通らない――その理由は現地に到着してよく分かった。

「……何もないな」

 見渡す限りが荒れ地で道も狭く、馬車だとかなり厳しそうだ。少しでも運転を誤れば崖底に転落してしまう恐怖と文字通り隣り合わせの状況ときている。

 おまけに休憩が取れそうな町や村もなさそうだし、待ち伏せをしていた野盗にでも襲われたら一大事だ。

 ――ゆえに、悪だくみをするにはもってこいの状況でもある。

 俺たちは慎重に進んでいき、しばらくするとノエリーが何かを発見して声をあげる。

「あそこに人がいますよ」

 彼女が指さした先――谷の底の方に数十人ほどが一ヵ所に集まっている。

 ここからではかなり距離があるため表情などを読み取ることはできないが……武装しているというのは確認できる。

「観光客というわけではなさそうですね」

 アリアーヌがため息とともにそう告げる。
 まあ、それはそうだろうな。
 遠いので断言はできないけど、きっと悪人面ばかりだろうし。

 とはいえ、決めつけはいけない。
 どう考えても怪しくはあるが、念のため確認を取らなくては。

「もう少し近づいてみるか」
「だ、大丈夫でしょうか」
「問題ありませんわ。何かあれば蹴散らせばいいだけのこと」
「ミネットの言う通りよ、ノエリー」

 不安そうなノエリーとは対照的にミネットとアリアーヌは随分と好戦的だった。
 この辺は昔と変わらないなぁ。

 ――でも、言っている中身は正しい。

「ノエリー、パートナー魔獣をいつでも召喚術で呼び出せるようにしておいてくれ。彼らと一緒なら心配もないだろう?」
「そ、そうですね!」

 彼女にとってアインはまさに相棒。
 あいつがいてくれたら、ノエリーは本来の実力で暴れられる。

 俺もクウタの他、シロン、クロス、タマに目配せをして戦える態勢を整えておくように伝えた。

 さあ、連中は敵か味方か……接近開始だ。
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