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74話・兄弟[ゼルド視点]
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*ゼルドさん視点のお話です*
宿屋の食堂で『対となる剣』の交渉を終え、冒険者ギルドに金を引き出しに来たところで声を掛けられた。
「よっ、オッサン」
「……」
スルトのダンジョン踏破者ダールだ。彼は目立つ白髪を揺らしながら手持ち無沙汰な様子でギルド内をウロウロと歩き回っていた。私の姿を見るなり声を掛けてきたのは、恐らく暇潰しのためだろう。彼はライルくんの大切な友人だ。無視するわけにはいかない。どう応えるべきか分からず、軽く手を上げるだけに留める。
昼下がりということもあり、フロアに他の冒険者の姿はなかった。真っ直ぐ受付カウンターに向かい、受付嬢に用件を告げる。
「ひゃくっ……!?」
「すまないが、すぐ用意できるだろうか」
金貨百枚は一度に取り扱うには大きな額だ。受付嬢は酷く驚いていたが、すぐに気を取り直していつもの笑顔に戻った。用意に時間が掛かるということで、フロアの端にあるテーブルで待つ。
「なあなあ、剣の交渉上手くいったー?」
「……ライルくんから聞いたのか」
「そ。ゆうべ話した時に」
了承も得ずに向かいの席を陣取ったダールが私の目を真っ直ぐ見て笑った。屈託がなく人懐こいようでいて、全く気を許していない不思議な瞳だ。彼が昨夜ライルくんと同じベッドで寝たという事実を思い出し、つい眉間に力がこもる。
「暇を持て余しているのだろう。ダンジョンには潜らないのか」
「んーん。今ちょっと人を待ってんだ」
ライルくんがギルドに来るのを待っているのか。彼を連れてこなくて良かった、と小さく息をつくと、ダールは「なあなあ」と身を乗り出してきた。
「アンタ強い?今度手合わせしてよ」
「いや、遠慮しておく」
「なんで?オレに負けるのが怖い?」
「……そういうわけでは」
挑発じみた発言はわざとだろうか。
昨日は彼が同席している場でライルくんとの交際を明かした。十年ぶりに再会した友人としては面白くないのだろう。私の力量を見定めたいようだ。
どちらが怪我をしてもライルくんが悲しむ。
無駄な争いは極力避けたい。
しばらくしてからギルドの扉が開き、ヘルツが入ってきた。買い物に出ていたのか。それにしては何も持っていない。オクトの町を散策していただけかもしれない。
「少々お時間よろしいでしょうか」
「……」
テーブルの前まで進み、恭しく頭を下げるヘルツを無言で睨む。顔を上げ、にこりと張り付けたような笑みを浮かべた彼は、こちらの返答を待たずに口を開いた。
「もう一度フォルクス様とお話を」
「話すことはないと言ったはずだ」
断ったが、ヘルツは食い下がる。
「あれからずっと床に臥せっておられます。長旅の疲れと貴方様に拒絶された心労が重なったせいでしょう。昨夜は眠りながら何度も貴方様の名を呼んでおられました」
嗚呼おいたわしいフォルクス様、と舞台上の演者のような芝居がかったセリフを口にしながら、わざとらしく溜め息をつく。
「……、……少しだけだ」
「ありがとうございます。では早速」
渋々了承すると、ヘルツはパッと笑顔になった。
昔からそうだ。下手に出るふりをして相手を意のままに動かそうとする。弟のフォルクスに全てを任せ、家を飛び出した私の負い目を刺激する言葉をわざと使う。
仕方なく席を立ち、案内されるままに奥へと向かった。
「あっ兄上!来て下さったのですか」
客室に通され、中に入る。ベッドの上で上半身を起こしていたフォルクスは、私の姿を見て嬉しそうに表情をほころばせた。
「身体は大丈夫か」
「お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。すぐ起きますので」
「構わない。無理はするな」
「は、はいっ」
慌てて起きあがろうとするフォルクスを止め、楽な姿勢を取らせる。
昔からフォルクスは身体が弱かった。成人してからは昔ほど寝込むことはなくなったが体力はない。本来、馬車旅などできる身体ではないのだ。こんな遠く離れた町まで来たのは私に会うため。
ヘルツがベッド脇にある小さなテーブルにあたたかい飲み物を置き、私には椅子を持ってきた。上体を起こした状態のフォルクスと話しやすい環境を整えてから、彼は退室していった。気を利かせたのだろう。
「私に何か言いたいことがあって来たのだろう。今のうちに全部ぶつけるがいい。もうこんな風に顔を合わせる機会もないだろうから」
「そんなこと仰らないでください!……私が意地の悪い言い方をしたせいで気分を害されたのですよね。申し訳ありませんでした」
あれから反省したようで、昨日の尊大な態度はすっかり消え失せ、肩を落としている。ここには他人の目がないから気を張る必要がないというのもフォルクスがしおらしくなった理由の一つだろう。
「昨日はああ言いましたが、アンナルーサはマーセナー家当主の正妻として何不自由なく過ごさせております」
「そうだろうと思っていた」
マーセナー家はもとは下級貴族だった。先々代当主である祖父が戦争で国に貢献し、陞爵されて現在のガーラント領を任された。元が地方豪族と変わらないことから貴族社会では下に見られる立場だった。
それを憂いた父が高位貴族の令嬢との婚約を取り付けた。それがアンナルーサ嬢だ。彼女の家は由緒正しい古参貴族だが領地経営がうまく行かず、日々の暮らしに困窮する有様だった。
マーセナー家は広大な農地を有しており、財政は潤っている。アンナルーサ嬢を娶る代わりに彼女の実家に金銭的な援助をする契約だ。
しかし、気位の高い彼女は契約先である我が家の家格が気に入らなかった。後継ぎである私が正妻の子ではない点も不満だったようで、常に私を見下していた。
十年前スルトのダンジョンの大暴走で重傷を負った時、顔に目立つ傷を作った私を心配するどころか醜いと顔を背けた。マーセナー家を出ると決意した理由の一つだ。
アンナルーサ嬢との婚約は私ではなく『マーセナー家の跡継ぎ』との契約。私が家を出たことで契約は弟のフォルクスへと引き継がれた。フォルクスは正妻の子で、彼女も好意的だった。だから問題はないと思い込んでいた。
「ですが、私はどうしてもアンナルーサを愛せません。人前では夫婦らしく演じておりますが、家に帰れば口も聞きません。結婚以来ずっとそうしてきました」
私に対して酷い態度を取り続けた彼女に対し、フォルクスは怒り続けている。最初からフォルクスとの縁談であれば問題なく幸せになれただろうに、私が長子だったばかりに二人に辛い思いをさせてしまった。
「おまえの子を産んだ女性は?」
「身分は低いですが、気立の良い女です」
「アンナルーサ殿と離縁して、その女性を正妻に据えるわけにはいかないのか」
「そうしたいのは山々ですが、恐れ多いと断られ続けております」
身分を気にして正妻を辞退し、第二夫人に収まった私の母と同じだ。
家同士の契約は既に破綻している。高位貴族の令嬢を娶ったのは高貴な血をマーセナー家に入れるため。フォルクスがアンナルーサ嬢と子を成さぬのならば意味はない。もしこの先も現状のままならば、彼女自身の幸福のためにも早く離縁して自由にしてやるべきだ。
マーセナー家を捨てた私が指図することではないと理解していながら、二人とも幸せになれる選択はないものかとつい考えてしまう。
人を愛し、愛されることは幸福だ。
私は家を出て初めて幸福を知った。
「兄上が居なくなって三年、私はずっと探しておりました」
「バルネアの屋敷に踏み込んだそうだな」
「兄上が一番親しくしておられた方ですから、きっと何か知っているはずだと。申し訳ありません」
騎士時代を共に過ごしたバルネアとは冒険者となってからも手紙のやり取りで繋がっていた。そこからフォルクスに情報が漏れてしまったのは迂闊だった。
「会いたい一心で突然押し掛けた上にあんな恨み言を口走って……私は本当に愚か者です」
「恨まれて当然だ。身勝手な兄で済まない」
「そんな……!違うんです。私はただ」
そこまで言って、フォルクスは俯いた。眉は悲しげに寄せられ、膝の上で握られた拳は震えている。
「私の代わりに騎士団に入ったせいで兄上に生涯消えない傷を負わせてしまい、家督まで。わ、私は兄上から全てを奪って」
ついにフォルクスは涙を流した。他人がいる前では決して見せない顔。幼い頃から私と二人だけになると弱音をこぼしていた。昨日は他の者が同席していたから気を張り、侮られまいと振る舞っていたのだろう。
跡継ぎ以外の貴族の男子は騎士団に入る決まりがある。フォルクスには訓練も任務も耐えられないと思い、自ら代わりを申し出た。領地経営や他家との駆け引きより剣を振るっているほうが性に合うからだ。
「フォルクス」
名を呼べば、フォルクスは恐る恐るこちらに顔を向けた。
「私は貴族に向いていなかった。それに、今の暮らしが気に入っている。フォルクスがマーセナー家を継いでくれたおかげで得た暮らしだ。感謝している」
騎士団に入らなければライルくんに出会うことはなかった。弟のフォルクスがいなければ家を出ることはできなかった。
「おまえの子の誕生祝いをせねばな。王都に寄った際には顔を見に行くと約束しよう」
「兄上……っ!」
ライルくんと共に旅に出たら王都に行こう。
彼が八年過ごした孤児院にも挨拶に行こう。
そして、私には成し得なかったこと……マーセナー家の血を繋いでくれた小さな甥の誕生を祝いに行こう。
宿屋の食堂で『対となる剣』の交渉を終え、冒険者ギルドに金を引き出しに来たところで声を掛けられた。
「よっ、オッサン」
「……」
スルトのダンジョン踏破者ダールだ。彼は目立つ白髪を揺らしながら手持ち無沙汰な様子でギルド内をウロウロと歩き回っていた。私の姿を見るなり声を掛けてきたのは、恐らく暇潰しのためだろう。彼はライルくんの大切な友人だ。無視するわけにはいかない。どう応えるべきか分からず、軽く手を上げるだけに留める。
昼下がりということもあり、フロアに他の冒険者の姿はなかった。真っ直ぐ受付カウンターに向かい、受付嬢に用件を告げる。
「ひゃくっ……!?」
「すまないが、すぐ用意できるだろうか」
金貨百枚は一度に取り扱うには大きな額だ。受付嬢は酷く驚いていたが、すぐに気を取り直していつもの笑顔に戻った。用意に時間が掛かるということで、フロアの端にあるテーブルで待つ。
「なあなあ、剣の交渉上手くいったー?」
「……ライルくんから聞いたのか」
「そ。ゆうべ話した時に」
了承も得ずに向かいの席を陣取ったダールが私の目を真っ直ぐ見て笑った。屈託がなく人懐こいようでいて、全く気を許していない不思議な瞳だ。彼が昨夜ライルくんと同じベッドで寝たという事実を思い出し、つい眉間に力がこもる。
「暇を持て余しているのだろう。ダンジョンには潜らないのか」
「んーん。今ちょっと人を待ってんだ」
ライルくんがギルドに来るのを待っているのか。彼を連れてこなくて良かった、と小さく息をつくと、ダールは「なあなあ」と身を乗り出してきた。
「アンタ強い?今度手合わせしてよ」
「いや、遠慮しておく」
「なんで?オレに負けるのが怖い?」
「……そういうわけでは」
挑発じみた発言はわざとだろうか。
昨日は彼が同席している場でライルくんとの交際を明かした。十年ぶりに再会した友人としては面白くないのだろう。私の力量を見定めたいようだ。
どちらが怪我をしてもライルくんが悲しむ。
無駄な争いは極力避けたい。
しばらくしてからギルドの扉が開き、ヘルツが入ってきた。買い物に出ていたのか。それにしては何も持っていない。オクトの町を散策していただけかもしれない。
「少々お時間よろしいでしょうか」
「……」
テーブルの前まで進み、恭しく頭を下げるヘルツを無言で睨む。顔を上げ、にこりと張り付けたような笑みを浮かべた彼は、こちらの返答を待たずに口を開いた。
「もう一度フォルクス様とお話を」
「話すことはないと言ったはずだ」
断ったが、ヘルツは食い下がる。
「あれからずっと床に臥せっておられます。長旅の疲れと貴方様に拒絶された心労が重なったせいでしょう。昨夜は眠りながら何度も貴方様の名を呼んでおられました」
嗚呼おいたわしいフォルクス様、と舞台上の演者のような芝居がかったセリフを口にしながら、わざとらしく溜め息をつく。
「……、……少しだけだ」
「ありがとうございます。では早速」
渋々了承すると、ヘルツはパッと笑顔になった。
昔からそうだ。下手に出るふりをして相手を意のままに動かそうとする。弟のフォルクスに全てを任せ、家を飛び出した私の負い目を刺激する言葉をわざと使う。
仕方なく席を立ち、案内されるままに奥へと向かった。
「あっ兄上!来て下さったのですか」
客室に通され、中に入る。ベッドの上で上半身を起こしていたフォルクスは、私の姿を見て嬉しそうに表情をほころばせた。
「身体は大丈夫か」
「お見苦しい姿をお見せして申し訳ありません。すぐ起きますので」
「構わない。無理はするな」
「は、はいっ」
慌てて起きあがろうとするフォルクスを止め、楽な姿勢を取らせる。
昔からフォルクスは身体が弱かった。成人してからは昔ほど寝込むことはなくなったが体力はない。本来、馬車旅などできる身体ではないのだ。こんな遠く離れた町まで来たのは私に会うため。
ヘルツがベッド脇にある小さなテーブルにあたたかい飲み物を置き、私には椅子を持ってきた。上体を起こした状態のフォルクスと話しやすい環境を整えてから、彼は退室していった。気を利かせたのだろう。
「私に何か言いたいことがあって来たのだろう。今のうちに全部ぶつけるがいい。もうこんな風に顔を合わせる機会もないだろうから」
「そんなこと仰らないでください!……私が意地の悪い言い方をしたせいで気分を害されたのですよね。申し訳ありませんでした」
あれから反省したようで、昨日の尊大な態度はすっかり消え失せ、肩を落としている。ここには他人の目がないから気を張る必要がないというのもフォルクスがしおらしくなった理由の一つだろう。
「昨日はああ言いましたが、アンナルーサはマーセナー家当主の正妻として何不自由なく過ごさせております」
「そうだろうと思っていた」
マーセナー家はもとは下級貴族だった。先々代当主である祖父が戦争で国に貢献し、陞爵されて現在のガーラント領を任された。元が地方豪族と変わらないことから貴族社会では下に見られる立場だった。
それを憂いた父が高位貴族の令嬢との婚約を取り付けた。それがアンナルーサ嬢だ。彼女の家は由緒正しい古参貴族だが領地経営がうまく行かず、日々の暮らしに困窮する有様だった。
マーセナー家は広大な農地を有しており、財政は潤っている。アンナルーサ嬢を娶る代わりに彼女の実家に金銭的な援助をする契約だ。
しかし、気位の高い彼女は契約先である我が家の家格が気に入らなかった。後継ぎである私が正妻の子ではない点も不満だったようで、常に私を見下していた。
十年前スルトのダンジョンの大暴走で重傷を負った時、顔に目立つ傷を作った私を心配するどころか醜いと顔を背けた。マーセナー家を出ると決意した理由の一つだ。
アンナルーサ嬢との婚約は私ではなく『マーセナー家の跡継ぎ』との契約。私が家を出たことで契約は弟のフォルクスへと引き継がれた。フォルクスは正妻の子で、彼女も好意的だった。だから問題はないと思い込んでいた。
「ですが、私はどうしてもアンナルーサを愛せません。人前では夫婦らしく演じておりますが、家に帰れば口も聞きません。結婚以来ずっとそうしてきました」
私に対して酷い態度を取り続けた彼女に対し、フォルクスは怒り続けている。最初からフォルクスとの縁談であれば問題なく幸せになれただろうに、私が長子だったばかりに二人に辛い思いをさせてしまった。
「おまえの子を産んだ女性は?」
「身分は低いですが、気立の良い女です」
「アンナルーサ殿と離縁して、その女性を正妻に据えるわけにはいかないのか」
「そうしたいのは山々ですが、恐れ多いと断られ続けております」
身分を気にして正妻を辞退し、第二夫人に収まった私の母と同じだ。
家同士の契約は既に破綻している。高位貴族の令嬢を娶ったのは高貴な血をマーセナー家に入れるため。フォルクスがアンナルーサ嬢と子を成さぬのならば意味はない。もしこの先も現状のままならば、彼女自身の幸福のためにも早く離縁して自由にしてやるべきだ。
マーセナー家を捨てた私が指図することではないと理解していながら、二人とも幸せになれる選択はないものかとつい考えてしまう。
人を愛し、愛されることは幸福だ。
私は家を出て初めて幸福を知った。
「兄上が居なくなって三年、私はずっと探しておりました」
「バルネアの屋敷に踏み込んだそうだな」
「兄上が一番親しくしておられた方ですから、きっと何か知っているはずだと。申し訳ありません」
騎士時代を共に過ごしたバルネアとは冒険者となってからも手紙のやり取りで繋がっていた。そこからフォルクスに情報が漏れてしまったのは迂闊だった。
「会いたい一心で突然押し掛けた上にあんな恨み言を口走って……私は本当に愚か者です」
「恨まれて当然だ。身勝手な兄で済まない」
「そんな……!違うんです。私はただ」
そこまで言って、フォルクスは俯いた。眉は悲しげに寄せられ、膝の上で握られた拳は震えている。
「私の代わりに騎士団に入ったせいで兄上に生涯消えない傷を負わせてしまい、家督まで。わ、私は兄上から全てを奪って」
ついにフォルクスは涙を流した。他人がいる前では決して見せない顔。幼い頃から私と二人だけになると弱音をこぼしていた。昨日は他の者が同席していたから気を張り、侮られまいと振る舞っていたのだろう。
跡継ぎ以外の貴族の男子は騎士団に入る決まりがある。フォルクスには訓練も任務も耐えられないと思い、自ら代わりを申し出た。領地経営や他家との駆け引きより剣を振るっているほうが性に合うからだ。
「フォルクス」
名を呼べば、フォルクスは恐る恐るこちらに顔を向けた。
「私は貴族に向いていなかった。それに、今の暮らしが気に入っている。フォルクスがマーセナー家を継いでくれたおかげで得た暮らしだ。感謝している」
騎士団に入らなければライルくんに出会うことはなかった。弟のフォルクスがいなければ家を出ることはできなかった。
「おまえの子の誕生祝いをせねばな。王都に寄った際には顔を見に行くと約束しよう」
「兄上……っ!」
ライルくんと共に旅に出たら王都に行こう。
彼が八年過ごした孤児院にも挨拶に行こう。
そして、私には成し得なかったこと……マーセナー家の血を繋いでくれた小さな甥の誕生を祝いに行こう。
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