【完結】かみなりのむすめ。

みやこ嬢

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選び取る未来

第71話:光の運び手

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「……対策だって?」

 つたに捕らわれたままの八十神やそがみくんが首を傾げる。人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべていたけど、その表情がパッと変わった。

 ガサガサと茂みを掻き分けて近付いてくる気配を感じたからだ。

朝陽あさひ夕月ゆうづきちゃん、大丈夫か!」
「れ、玲司れいじさん?」

 現れたのは、お兄ちゃんの友達の玲司さんだった。なんでこんな時間、こんな場所にいるの?

「たまたま実家に戻ってたら朝陽から『すぐ来い』ってメールが来たんだよ。急に家に呼んだかと思えば走ってどっか行っちゃうし、追い掛けるだけで大変だった~!」

 なにそれ。お兄ちゃん、こんな夜遅くにわざわざ玲司さんを呼び出したの?
 なんのために?

「玲司は単なる運び役だよ」
「え?」

 次の瞬間、玲司さんの身体から青色の光が飛び出して辺りを明るく照らした。

『御苦労。お陰でここに戻ってこられた』
御水振オミフリさん!」

 玲司さんから離れた青色の光はあたしの側に飛んできた。さっき八十神くんに触れられて引き離され、家の二階にあるあたしの部屋まで飛ばされていたはずなのに。

「玲司と御水振さんは割と相性がいいんだ」
「そ、そうなんだ」

 お兄ちゃんと瑪珞バラクさんみたいに相性のいい人の体内に宿れば、あたしが迎えに行かなくても移動が出来る。それを利用して御水振さんを戻す。
 お兄ちゃんの言ってた対策って、こういうことだったんだ!

「……他にもいるみたいだね」

 八十神くんはまだ茂みの向こうを睨み付けている。すると、今度は複数の足音が聞こえてきた。

「夕月ちゃん!」
「夕月!」

 次に茂みから顔を出したのは、千景ちかげちゃんと夢路ゆめじちゃんだった。
 そして……

「ま、待ってぇ~!」

 なんと、叶恵かなえちゃんまで現れた。
 それだけじゃない。

「こら、先生を置いていくな、危ないぞ!」
「えっ……鞍多くらた先生まで!」

 中学の養護教諭、鞍多先生が息を切らせて追いついた。とっくに学校が終わっている時間なのに、何故かまだ白衣を着ている。
 普段は呑気な先生の表情があたしを見た瞬間に険しくなった。そして、八十神くんを睨み付ける。

『許さんぞ小童こわっぱ! この華陀真カダマを怒らせてタダで済むと思うなよ!』

 え、誰?
 もしかして、赤色の光のひと?
 先生の意識を乗っ取ってない??
 顔付きも話し方も普段と全然違うよ???

「おやおや、これは……」

 目を丸くする八十神くんを更に驚かせる人物が現れた。玲司さんのおじいさんだ。高齢のためか、七人の中で一番遅くに到着した。

 そう、七人。

巫山戯フザケた真似しやがって!』
『ヨッシャ、お嬢ちゃんのとこに帰れた!』
『はぁ~、なんで俺だけ爺さんなんだよ……』



 お兄ちゃんからは緑色の光、瑪珞バラクさん。

 玲司さんからは青色の光、御水振オミフリさん。

 千景ちゃんからは藍色の光、螺圡我ラドガさん。

 夢路ちゃんからは橙色の光、阿志芭アシハさん。

 叶恵ちゃんからは紫色の光、小凍羅コトラさん。

 鞍多先生からは赤色の光、華陀真カダマさん。

 おじいさんからは黄色の光、太儺奴タナドさん。



 それぞれ身体から飛び出して、あたしの側に全員戻ってきた。さっきまであんなに暗かった森の中が明るく照らされる。

「お兄ちゃん、どういうこと?」
「以前から七つの光と相性の良い人を探してたんだ。ある程度耐性があって、事情が話せるくらい信頼出来て、しかも協力してくれる人をね」
「そ、それでみんなを……?」
「みんな夕月を心配して手を貸してくれたんだ」

 こういう時のために、あたしの知らないところでみんなに協力を頼んでたんだ。
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