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選び取る未来
第72話:華陀真《カダマ》
しおりを挟む「わざわざ引き離したっていうのに、そんな方法で戻ってくるとは思わなかったなぁ」
瑪珞さんの蔦に捕らわれたまま、八十神くんが感心したように呟いた。
あたしに宿る七つの魂は、一度引き離されると迎えにいかない限り戻ってこれない。その問題を解決するためにお兄ちゃんが取った秘策がコレ。
相性の良い人に魂を運ばせること。
そのおかげで再びみんながあたしの元に帰ってきた。
でも、いつの間に?
「前に夕月んちで勉強会した時に連絡先交換したじゃん? あの後で直接連絡きて頼まれたんだ」
「私は千景ちゃん伝に。朝陽さんの頼みだし、夕月ちゃんの役に立ちたかったから……」
千景ちゃんと夢路ちゃんはそう言って、いつものようにあたしの左右に並んで腕を組んできた。
「わ、私も勉強会の後で頼まれたの。夕月ちゃんに何かお礼しなきゃって気持ちがずっとあったから。それに、歩香ちゃんのことも心配だったし」
叶恵ちゃんまで。家が遠いのに、夜にこんな所まで来てくれるなんて。行方不明の歩香ちゃんを探す名目で外出したのかな?
「こんな遅い時間に中学生の、しかも女子が外に出るんじゃマズいからな。俺が三人を車で迎えに行ったんだ」
そうか、鞍多先生はみんなの保護者として来てくれたんだ。先生が一緒なら叶恵ちゃんのご両親も安心して送り出せる。
それにしても、お兄ちゃんとは何年も会ってなかったはずなのにいつ相性チェックしたんだろ。
「今日、先生に直接手紙を届けてもらっただろ? 御水振さんたちに頼んでたんだ。先生なら多分いけると思ったからさ。間に合って良かったよ」
「あーあ、卒業生から手紙なんて珍しいと思ったらコレだよ。良いように使われてんだ俺は」
手紙には連絡先や簡単な事情説明でも書いてあったんだろうか。愚痴りながらも鞍多先生は笑っていた。気に掛けていた元生徒から頼られて、少し嬉しいみたい。
「儂は未だによく分かってないんだが、何故こんな場所に何人も集まっているんだね?」
「じーちゃん、後で説明すっから!」
隣の市から車で駆け付けたんだよね。玲司さんのおじいさんは感覚が鋭い人らしいから魂にも順応できたんだろう。
生前の太儺奴さんの死因は老衰だって八十神くんが言ってたから、お年寄りの身体が馴染みやすかったのかもしれない。
でも、流石にこの状況は意味わからないよね。
八十神くんに対峙するような形で、あたしの周りにみんなが固まった。
「あーあ、どうしようかな」
ぽつりとこぼす八十神くんは、心底困ったように溜め息をついた。
「お、おい、おまえ、三年の転校生だよな。なんでそんなことになってんだ?」
そこで初めて鞍多先生が八十神くんの状況に気付き、困惑した様子で声を掛けた。
夜の森の中で、一人だけ蔦に雁字搦めにされている異様な光景だ。そりゃ疑問に思うよね。
「先生助けてください。僕、動けなくて」
意外なことに、八十神くんは助けを求めてきた。
今まで色々あって警戒してきた千景ちゃんたちはともかく、彼と面識のない玲司さんやおじいさんも心配そうに見つめている。
でも、鞍多先生はすぐに表情を一変させた。
『今更そんな小芝居で騙されると思うたか! 貴様がこの娘に危害を加えようとしたことは忘れんぞ!!』
声も姿も鞍多先生だけど、これは華陀真さんだ。お兄ちゃんと瑪珞さんみたいにかなり相性が良いようで、完全に乗り移られている。
「あ、主人様……」
この気性の荒さ、間違いない。
あたしが仕えていた主人様だ。
『オレはもう二度と過ちを繰り返さん!』
そう言いながら、先生は両手を突き出した。同時に八十神くんの周りに何本もの火柱が上がる。
少し開けている場所とはいえ、ここは森の中だ。地面には足が沈むくらい落ち葉が積もっている。そんな場所で炎なんか出したら火事になっちゃうよ!
みんなが慌てて下がろうとした瞬間、火柱は跡形も無く消え去った。
「……あのさぁ、勘違いしてない? 僕を倒してハイお仕舞いみたいな話じゃないんだよね」
白い煙の向こうから笑いながら現れたのは、蔦の縛めから解かれた八十神くんだった。
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