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第23話 しあわせすぎて悪夢
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「は~、たのしぃかったぁ~」
きらきらお菓子パーティーは、とってもたのしくて満足で、お腹も胸もいっぱい。
でもぉ……
「ふぁぁ……ねむぅ」
お部屋に戻ったとたん、ソファにどすん。うーお行儀悪いいぃ。けどもう、ふにゃふにゃだ。
「サファさま。お疲れでしょう」
「んー」
お口がもうねむねむで、あんまり動かない。
「今日は早めにお休みしましょうか」
「んー、そしよかなぁ」
「それがよろしいですわ」
侍女さんたちが、「では私が入浴を」とか「ベッドを確認してくるわね」とか言ってるのが聞こえる。
ぼくはパーティしてソファにどすん、なのに侍女さんはずっと働いてる。申し訳ない気持ち。
「サファさま、ではお手伝いさせてくださいませね」
誰かが、さっとぼくを抱えて運びはじめた。
「ん……ぼく、じぶんで歩ける……」
「あら、ふふふ。よろしいんですよ。お気になさらず」
「んんー、でもぉ……」
大丈夫かなぁ?
「お菓子たくさん食べたから重たいかもよぉ。ごめんねぇ」
「あらあら、うふふふ。平気ですわ。私、力持ちなんです」
「わぁ、すごぉぉい」
「だから、ごゆっくりなさっててくださいませ」
「んん……あぃがとぉ」
ダメだ、目が開かなくなってきた。
「あらあら、すっかりおねむですね。今日はがんばりましたものね。ふふ……」
侍女さんの声がちょっと遠くで聞こえる。
「おやすみなさいませ、サファさま」
「立派にパーティを主催されて、頑張りましたね」
「良い夢を。また明日」
気づくとぼくは、ぽかぽかのほこほこになっていた。身体中がふわふわに包まれて、ふかふかの上にごろんとしている。
「んん……おや……すみぃ――」
なんとか口を動かしながら、手に触れている大好きなふわふわを引き寄せる。
うさたん、今日は楽しかったよ。今度は一緒にパーティしようねぇ。
ふわふわボディを指先でなでながら、すっと意識が遠のいていく。
……
…………
……んー。
今日はすごかったなぁ。
大きなテーブルいっぱいの、たっくさんのキラキラのお菓子。
花束みたいな、特製のすんごいケーキ。
かわいくておいしくて……
ああ、職人さんにも、ありがとういわないと。
中庭は天気もピカピカで、お花も咲いていて、風はそよそよで。
ファランさまもハロルド殿下も、本当にきてくれて。
それに、陛下まできてくれて。
お菓子をあんなに贈ってくれて、お手紙読んでくれて、ぼくが一緒にお菓子食べたいなっていったからって、パーティにまで来てくれて。
みんなニコニコで、楽しくて、夢みたいで。
『ずいぶん準備を頑張ったようだな。ありがとう。楽しかった』
『次もちゃーんと忘れないで、ぼくを誘ってよ~?』
『ははは、実に楽しいパーティだったぞ、サファ。なかなかない機会だった』
わぁぁ。ファランさま、ハロルド殿下、陛下!
よかったぁぁ、ありがとうぅぅ
『王子たちとこんなに話したのは久しぶりか。そなたのおかげだな』
『今度は私が招待しよう。なにか食べたいものがないか、考えておくといい』
きゃぁぁ、ほんとう? 本当ですか? わー、またやりましょぉぉ!
『きっとだよ~』
『約束だ』
ふふふ。やったぁぁ。
みんな、ぼくのこと、嫌いじゃないみたい。
もしずっとこのまま、嫌われなかったら、もしかして――
『――かな』
……なぁに?
『――なんてことを、してくれたんだ』
……え?
『我が国の機密事項を、他国に……』
えっ……ちが……
『このために我が国に来たのか。母国のスパイとして』
『そなたを……信じた、私が愚かだった』
『はぁ……ほんと、おとなしい顔で、とんでもないことしてくれたね』
『この国を売るなど――!!』
え、な……ちが、ちがう……ぼくは――
『もはや、申し開きは聞かぬ』
『覚悟して、報いを受けるがいい』
や、なんで、どうして話を聞いてくれないの!?
ちがう、ぼくじゃないよ! ぼくは、なにもしてな――
「……ぁぁ! やぁぁ――」
絞り出した声の音に驚いて、目を開ける。
「はぁ……はぁ、はぁ……」
身体から酸素がなくなったみたい。息ができない。
「今の――」
夢、だった……? どこから?
――今のファランさまたち、本当にぼくを……きらってない?
ほんとうに?
10年後には、誰も会ってもくれず、話も聞いてくれず、無実の罪で……処刑される、のに?
「う……ぅぅ……」
そうだ。みんな、ぼくに会ってもくれないんだ。
「なんでぇ……」
今日、あんなにニコニコしてた人たちが。誰ひとり。
「うぅ……ファランさまぁ……っ」
いつ、ぼくのことを嫌いになるの?
本当は、今も嫌いなの?
「ふ……うぅ……」
ぼくが、どんなにがんばっても、未来は変わらないかもしれない。
原作の中の未来を知っていても、ぼくは肝心なことを思い出せない。
誰が、ぼくに罪を被せるのか。
ぼくは、どうやって処刑されるのか。
ただ覚えてるのは。
味方は誰もいない。
誰もぼくの話すら聞いてくれなかった……ってことだけ。
陛下も、ハロルド殿下も……ファランさまも。
ぼくに、会ってすらくれないんだ。
「ぅぅぅ……」
今のニコニコも、やさしいも、ぜんぶ……うそなの?
「うぅ……」
びしょびしょになった顔を、ふわふわの枕に押し付ける。
なにもかもふわふわで、キラキラなのも、きっとうそなんだ。
「じゃぁ――」
それじゃあ、ぼくは――
いなくなろう。
ここから、ぼくを誰も聞いてくれないここから……いなくなろう。
きらきらお菓子パーティーは、とってもたのしくて満足で、お腹も胸もいっぱい。
でもぉ……
「ふぁぁ……ねむぅ」
お部屋に戻ったとたん、ソファにどすん。うーお行儀悪いいぃ。けどもう、ふにゃふにゃだ。
「サファさま。お疲れでしょう」
「んー」
お口がもうねむねむで、あんまり動かない。
「今日は早めにお休みしましょうか」
「んー、そしよかなぁ」
「それがよろしいですわ」
侍女さんたちが、「では私が入浴を」とか「ベッドを確認してくるわね」とか言ってるのが聞こえる。
ぼくはパーティしてソファにどすん、なのに侍女さんはずっと働いてる。申し訳ない気持ち。
「サファさま、ではお手伝いさせてくださいませね」
誰かが、さっとぼくを抱えて運びはじめた。
「ん……ぼく、じぶんで歩ける……」
「あら、ふふふ。よろしいんですよ。お気になさらず」
「んんー、でもぉ……」
大丈夫かなぁ?
「お菓子たくさん食べたから重たいかもよぉ。ごめんねぇ」
「あらあら、うふふふ。平気ですわ。私、力持ちなんです」
「わぁ、すごぉぉい」
「だから、ごゆっくりなさっててくださいませ」
「んん……あぃがとぉ」
ダメだ、目が開かなくなってきた。
「あらあら、すっかりおねむですね。今日はがんばりましたものね。ふふ……」
侍女さんの声がちょっと遠くで聞こえる。
「おやすみなさいませ、サファさま」
「立派にパーティを主催されて、頑張りましたね」
「良い夢を。また明日」
気づくとぼくは、ぽかぽかのほこほこになっていた。身体中がふわふわに包まれて、ふかふかの上にごろんとしている。
「んん……おや……すみぃ――」
なんとか口を動かしながら、手に触れている大好きなふわふわを引き寄せる。
うさたん、今日は楽しかったよ。今度は一緒にパーティしようねぇ。
ふわふわボディを指先でなでながら、すっと意識が遠のいていく。
……
…………
……んー。
今日はすごかったなぁ。
大きなテーブルいっぱいの、たっくさんのキラキラのお菓子。
花束みたいな、特製のすんごいケーキ。
かわいくておいしくて……
ああ、職人さんにも、ありがとういわないと。
中庭は天気もピカピカで、お花も咲いていて、風はそよそよで。
ファランさまもハロルド殿下も、本当にきてくれて。
それに、陛下まできてくれて。
お菓子をあんなに贈ってくれて、お手紙読んでくれて、ぼくが一緒にお菓子食べたいなっていったからって、パーティにまで来てくれて。
みんなニコニコで、楽しくて、夢みたいで。
『ずいぶん準備を頑張ったようだな。ありがとう。楽しかった』
『次もちゃーんと忘れないで、ぼくを誘ってよ~?』
『ははは、実に楽しいパーティだったぞ、サファ。なかなかない機会だった』
わぁぁ。ファランさま、ハロルド殿下、陛下!
よかったぁぁ、ありがとうぅぅ
『王子たちとこんなに話したのは久しぶりか。そなたのおかげだな』
『今度は私が招待しよう。なにか食べたいものがないか、考えておくといい』
きゃぁぁ、ほんとう? 本当ですか? わー、またやりましょぉぉ!
『きっとだよ~』
『約束だ』
ふふふ。やったぁぁ。
みんな、ぼくのこと、嫌いじゃないみたい。
もしずっとこのまま、嫌われなかったら、もしかして――
『――かな』
……なぁに?
『――なんてことを、してくれたんだ』
……え?
『我が国の機密事項を、他国に……』
えっ……ちが……
『このために我が国に来たのか。母国のスパイとして』
『そなたを……信じた、私が愚かだった』
『はぁ……ほんと、おとなしい顔で、とんでもないことしてくれたね』
『この国を売るなど――!!』
え、な……ちが、ちがう……ぼくは――
『もはや、申し開きは聞かぬ』
『覚悟して、報いを受けるがいい』
や、なんで、どうして話を聞いてくれないの!?
ちがう、ぼくじゃないよ! ぼくは、なにもしてな――
「……ぁぁ! やぁぁ――」
絞り出した声の音に驚いて、目を開ける。
「はぁ……はぁ、はぁ……」
身体から酸素がなくなったみたい。息ができない。
「今の――」
夢、だった……? どこから?
――今のファランさまたち、本当にぼくを……きらってない?
ほんとうに?
10年後には、誰も会ってもくれず、話も聞いてくれず、無実の罪で……処刑される、のに?
「う……ぅぅ……」
そうだ。みんな、ぼくに会ってもくれないんだ。
「なんでぇ……」
今日、あんなにニコニコしてた人たちが。誰ひとり。
「うぅ……ファランさまぁ……っ」
いつ、ぼくのことを嫌いになるの?
本当は、今も嫌いなの?
「ふ……うぅ……」
ぼくが、どんなにがんばっても、未来は変わらないかもしれない。
原作の中の未来を知っていても、ぼくは肝心なことを思い出せない。
誰が、ぼくに罪を被せるのか。
ぼくは、どうやって処刑されるのか。
ただ覚えてるのは。
味方は誰もいない。
誰もぼくの話すら聞いてくれなかった……ってことだけ。
陛下も、ハロルド殿下も……ファランさまも。
ぼくに、会ってすらくれないんだ。
「ぅぅぅ……」
今のニコニコも、やさしいも、ぜんぶ……うそなの?
「うぅ……」
びしょびしょになった顔を、ふわふわの枕に押し付ける。
なにもかもふわふわで、キラキラなのも、きっとうそなんだ。
「じゃぁ――」
それじゃあ、ぼくは――
いなくなろう。
ここから、ぼくを誰も聞いてくれないここから……いなくなろう。
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