人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ

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第27話 てっぺんから見つける作戦

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「ここから塔に登るんだ」
「ふわぁぁぁ……」

ファランさまとの久しぶりの王宮探索タイム。
今までに行ったことのないところにいこう、となって、ぼくがリクエストしたのは、このへんで一番高いところ!
ぼくの、ひみつの目的を果たすヒントは高いところにある! ……かもしれないなって。

それがこの展望塔だっていうのは、事前の入念な調査により把握済み。
ま、侍女さんに聞いただけだけど。

景色がいいところだ、一度行ってみるのもいいな。とファランさまが快く連れてきてくれたのはよかったけどぉ……。

「すっっっごく、なっがいかいだんん……」

塔の入口の一歩目で、ぼくはさっそく気持ちがしょぼしょぼになっちゃたりぃ……。

「これぇ、なんだんくらいあるんだろぉお……」

上へ上へと続く階段は、果てしなく長く続いている。とても行き着ける気がしない。
これたぶん、てっぺんにつくまでに日が暮れちゃう。いや、きっと二泊三日くらい必要。

「おべんとうとか、なくてへいきですか?」
「おべんとう?」

ファランさまが、レアなきょとん顔で目をパチパチする。ちょっと子どもみたいな感じで新鮮。

「展望塔の上で昼食を、ということか?」
「えへへ、あの――」

あわわ、それはそう! ピクニックかキャンプでもするつもりぃ?ってなるよねぇ。

「上につくまでにぃ、2日か3日くらいかかるかなーって、おもって」

ピクニックとキャンプじゃなくても、あるいみ登山ではあるのでは?

「ははは。3日がかりで登るつもりだったか」
「やまにのぼるつもりで!」
「あははは!」

おお、すごい笑ってるぅぅ。……でも、なんでぇ?

「そなたは、おもしろいことを考えるな。それに肝が座っている」
「ふぇ?」
「2日でも3日でも、登り切るつもりなのか」
「はいぃ」

途中でぇ帰るのもあれだしね?

「あはは、それはいい」

なんかぁ、ほめられたっぽい? ……でも、なんでぇ?

まぁー、ファランさまが楽しそーなのでなんでもいいかー。

「ここは防犯上の理由で、途中までは昇降機もないからな。そなたの足で登るのはあまりに大変だろう」
「ふぇ? そぉぉなんですか?」
「ああ。外から侵入した者が簡単に登れないようにな」
「ふぁぁぁ、なるほどぉぉぉ」
さすが王宮! 防犯意識もばっちし!
「だが、上層部には昇降機があるから、そこまで頑張ればすぐだ」

途中からは、すいーって行けるってことぉ? じゃあ、一泊二日くらいでだいじょぶかなぁ?
でも、やっぱりお弁当は必要かなぁ。あと、おやつも。

「じゃあ、いちどもどってぇ、おべんとうとおやつを――」

「はっはは……そなたは本当におもしろい」

ファランさまは、こらえきれないって感じで笑いながら、ちょっとからだをひねった。
ええー、なにぃ? なんかツボに入ったのぉぉ?

「さぁ」
と思ったら、すっと腕を差し出してくれる。

「ほぇ?」

あくしゅ? いいけどぉ……両手で? なんか変わったあくしゅだねぇ?

「私が抱えていこう」
「ふぁひぇっっ!?」

反射的にちょっと跳び上がった。

「ななな――」

なな、なんてことをおっしゃるぅ!?
王太子様がぁ、ぼくを? 抱えていくぅてぇぇぇ!?
と、とんでもないことをっっ!

「だだだ、ダメですううう!」

アワアワのヒヤヒヤで、すさささーっとあとずさり。
ファランさまの差し出されたお手々を置き去りにするのは……ちょっと、しのびないけども。

「なぜだ。遠慮はいらぬぞ?」
「え、や、だって……そんな――」

王太子様に、そんなこと、させたら、ぼくが、あとで、えらいひと(誰かわからないけど)に、めぇぇっちゃ怒られるでしょ!

激おこのプンプンでおやつ抜き、くらいで済めばいいけど、そんなんじゃないでしょ! へたしたら処される。サクッとお手軽に処されて終了しそう! 身の程知らず不敬罪ってやつ!

こわいぃぃぃぃ……。

「……そうか。私では少々……頼りないかもな」
「そんなじゃありませんっ!」

あ、勢いでぐぐっと前のめってしまった。

「そうか? ならば、さあ」
ほんのりにこっ、なファランさまが腕をどーぞ、してくれる。
「ふぇ、はわ……」
思わず手を伸ばしてしまいそうになっちゃうぅぅ……けど、それはさすがにっ!
「ん? どうした?」
「いえ、あの、えっと……」
はわわわ。断っても受け入れても、まずい感じになりそぉぉぉ……!
どどどど、どうしよぉぉぉ!?

「王太子様、ここは私にお任せを」
「ふえっ?」

後ろからすっとでてきたのは、お部屋の騎士さんだった。部屋から出るときはだいたい着いてきてくれる。

なんでだろ? ころんだら危ないからかな?

「そなたが?」
「はっ。王太子様は塔のご案内などもされるでしょうし、サファさまのことはぜひ私が」

はわわわ。さぁすが、王宮の騎士さん!
殿下より自分のほうが力あるんで!大人だし!とか言わない。殿下にはもっと大事なお役目があるので、こっちは自分にやらせてください、みたいな感じで言うのね。じょうず!

「そうか。そうだな。そなたに任せたほうが安心だろう。では、頼むぞ」
「はっ!」

わははは。ファランさまはファランさまで、さくっと適任者を認めて任せる、冷静な判断。
すごい、大人の会話だ。

……いや、ファランさま確かぁ12才では。
さすが大国の王太子、なんかいろいろすごい。

「では、サファさま。私がお運びしてもよろしいでしょうか?」

いっぽうのぼく。おとなしく運ばれる。以上。

「あ……はいぃ。よろしくねぇ」

でもまぁ、お願いできるならそれでよいのではぁ。
だって、高いとこまで階段登るのって、ちょっとこわいしねぇぇ。

「では、失礼します」
「はぁぁい」

すっと腕を差し込まれで、ぐいっと持ち上げられる。

「おぉぉ、すごい、たかいぃぃ」
「大丈夫でしょうか? サファさま」
「うん。だいじょうぶぅ。あんていかんばっちりぃ」

まるで、専用の乗り物に乗ったみたいな安定感。
ぼく専用機、騎士さん!みたいな。さすが、鍛えてるだけあるねぇぇ。

「では、行こうか」
「はぁーい」

元気にお返事するけど、移動は騎士さん任せだ。ぼくはおとなしくしているのみ。

がしっと抱えられたまま、運搬される。

おおお、揺れもない。すごい。
抜群の安定感を保ったまま、どんどん階段を登っていく。


どんどん登って、どんどん――

……あれ?

な……なんか高くない?
すごい地面遠いんだけどぉぉ。

騎士さんの腕の隙間から、ちらっと階段の下の方を見てみる。

「……っ」

こ、声出そうになった……。

す……スリルがすごい。

高いとこまで階段登るの怖いなぁ、じゃないのよ。高いとこに抱えられて高いとこまで階段登ったら……怖さ倍増なのあたりまえじゃない?

こりずに、また後ろをちらっとのぞき見してしまう。

ひえぇぇぇ……。ダメダメ、もう見ちゃダメ!

「数百段ほど登ったら昇降機だ。サファ、大丈夫か?」
「……っ、はい!」

へ、平気なフリ、平気なフリ。なんでもない感じでお返事。

見ない見ない、こわくないこわくない!
ぎゅぅっと目をとじてればへーきっ! しっかり塔の上から脱出ルートを探さなきゃ。
だいじょぶだいじょうぶ、騎士さんはきっちしっかり安全……だからねっ!

えっ? さっき階段は何百段かあるっていった? え? それって百段の何倍かはあるってことよね? え?

「実は、この階段にはちょっとした仕掛けがあって――」

あぁぁぁ、せっかくファランさまがお話してくれてるのに、ぜんぜんはいってこないぃぃぃ……!

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