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#推しの幸せが供給
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部屋の中は、夜の静けさに包まれていた。
カーテンの隙間から漏れる街灯の光が、床にうっすらと影を落としている。
デスクのライトだけが灯され、白いキーボードと西中島の手元を柔らかく照らしていた。
パソコンの画面には、なにスタのタイムライン。
スクロールするたびに、「#きょゆう」の文字が目に入る。
前ほど騒がしくはない。
でも、途切れることなく続く投稿たちは、確かにこの数日間の流れを物語っていた。
「記念誌、手に入れた。挿絵、まじでやばい」
「詩のページ読んで泣いた……ほんとにあの二人、物語の中にいるみたい」
「供給が現実化する瞬間って、こういうのなんだな」
コメントは、もう“炎上”ではなかった。
とがった言葉や批判の色は、いつの間にか消えていた。
代わりにあったのは、じんわりとした肯定の空気。
誰かの物語を、少し遠くから見つめて「よかったね」と思えるような、そんなやさしさだった。
西中島は、画面の端に開いた自分の裏垢に視線を落とす。
小さなアイコン、控えめなプロフィール文。
ここは“会長”としての顔ではなく、ひとりのオタクとして、自分の感情を吐き出す場所だった。
キーボードに手を置いた。
今日は、何を書くでもなく、ただ開いただけだった。
けれど、いまこの瞬間、指先は自然に動き始めていた。
推しの幸せが供給って、最強じゃん
#推しの幸せが供給
エンターキーを押す瞬間、ためらいはなかった。
いつもよりずっと軽く、すっと押せた。
それだけで、胸の奥のどこかがじんわりと温かくなっていく。
投稿が表示される。
何も特別な言葉じゃない。
短い文章と、ひとつのタグだけ。
でも、それが今の自分にとっての本音だった。
画面を見つめながら、ふと隣の壁に視線を移す。
そこには、数ヶ月前に自分でプリントした京橋の写真が数枚、飾られていた。
体育祭での笑顔、文化祭準備での真剣な横顔。
どれもが“推し”だった頃の、自分の心を支えてくれていた表情だ。
今、そのひとつに、そっと視線を合わせる。
「……これでいい」
小さな声で、そうつぶやいた。
微笑ではなかった。
でも、そこには確かに“納得”があった。
戦い終わったあとの静かな満足。
誰かの幸せを、自分のものとして喜べるようになるまでの、長い道のり。
再び画面を見ると、投稿にはいくつかの「いいね」がついていた。
知らない誰かの裏垢からも、共感のスタンプが返ってきていた。
「このタグ、すごい好き」
「泣いた」
「わかる。供給って、ほんと色んな形があるんだね」
「これ見てやっと整理できた気がする」
「私も、そう思う。好きな人が笑ってくれてるのが、いちばんの供給だよ」
タイムラインの流れが、少しずつ変わっていくのがわかった。
炎上でもバズりでもなく、静かに染みるように広がる共感。
そのタグの言葉が、誰かの感情の整理に繋がっていくのが見えた。
西中島は、それを見ながら、ふう、と息を吐いた。
深呼吸ではなく、ごく自然な、息継ぎだった。
もう、見守るだけでいい。
誰かの隣に自分がいなくても、
その人が笑っていられるなら、それが一番幸せなんだと思えた。
それって、昔だったら「負け」と思っていたかもしれない。
でも今は違う。
推しを“勝ち負け”で見ることなんて、もう意味がない。
ただ、その幸せを受け取って、心から応援できることこそが、自分にとっての“供給”だった。
デスクの上にあるノートを閉じる。
それは、かつては京橋の情報を記録するためのものだった。
今はもう、新しいページは開かないかもしれない。
けれど、そのすべてが無駄だったなんて思っていない。
“好き”という気持ちは、いつか形を変えていく。
でも、変わったからといって、薄れたわけじゃない。
画面の明かりが、ゆっくりとまぶたに滲む。
パソコンを閉じた瞬間、部屋の中には静寂が戻ってきた。
風の音が窓の外で鳴っている。
「……最強か、ほんとに」
もう一度、小さく呟いて、目を閉じる。
今日という一日が、少しだけ優しく終わっていく。
推しの幸せを、まっすぐに“供給”として受け止められる。
そんな夜だった。
カーテンの隙間から漏れる街灯の光が、床にうっすらと影を落としている。
デスクのライトだけが灯され、白いキーボードと西中島の手元を柔らかく照らしていた。
パソコンの画面には、なにスタのタイムライン。
スクロールするたびに、「#きょゆう」の文字が目に入る。
前ほど騒がしくはない。
でも、途切れることなく続く投稿たちは、確かにこの数日間の流れを物語っていた。
「記念誌、手に入れた。挿絵、まじでやばい」
「詩のページ読んで泣いた……ほんとにあの二人、物語の中にいるみたい」
「供給が現実化する瞬間って、こういうのなんだな」
コメントは、もう“炎上”ではなかった。
とがった言葉や批判の色は、いつの間にか消えていた。
代わりにあったのは、じんわりとした肯定の空気。
誰かの物語を、少し遠くから見つめて「よかったね」と思えるような、そんなやさしさだった。
西中島は、画面の端に開いた自分の裏垢に視線を落とす。
小さなアイコン、控えめなプロフィール文。
ここは“会長”としての顔ではなく、ひとりのオタクとして、自分の感情を吐き出す場所だった。
キーボードに手を置いた。
今日は、何を書くでもなく、ただ開いただけだった。
けれど、いまこの瞬間、指先は自然に動き始めていた。
推しの幸せが供給って、最強じゃん
#推しの幸せが供給
エンターキーを押す瞬間、ためらいはなかった。
いつもよりずっと軽く、すっと押せた。
それだけで、胸の奥のどこかがじんわりと温かくなっていく。
投稿が表示される。
何も特別な言葉じゃない。
短い文章と、ひとつのタグだけ。
でも、それが今の自分にとっての本音だった。
画面を見つめながら、ふと隣の壁に視線を移す。
そこには、数ヶ月前に自分でプリントした京橋の写真が数枚、飾られていた。
体育祭での笑顔、文化祭準備での真剣な横顔。
どれもが“推し”だった頃の、自分の心を支えてくれていた表情だ。
今、そのひとつに、そっと視線を合わせる。
「……これでいい」
小さな声で、そうつぶやいた。
微笑ではなかった。
でも、そこには確かに“納得”があった。
戦い終わったあとの静かな満足。
誰かの幸せを、自分のものとして喜べるようになるまでの、長い道のり。
再び画面を見ると、投稿にはいくつかの「いいね」がついていた。
知らない誰かの裏垢からも、共感のスタンプが返ってきていた。
「このタグ、すごい好き」
「泣いた」
「わかる。供給って、ほんと色んな形があるんだね」
「これ見てやっと整理できた気がする」
「私も、そう思う。好きな人が笑ってくれてるのが、いちばんの供給だよ」
タイムラインの流れが、少しずつ変わっていくのがわかった。
炎上でもバズりでもなく、静かに染みるように広がる共感。
そのタグの言葉が、誰かの感情の整理に繋がっていくのが見えた。
西中島は、それを見ながら、ふう、と息を吐いた。
深呼吸ではなく、ごく自然な、息継ぎだった。
もう、見守るだけでいい。
誰かの隣に自分がいなくても、
その人が笑っていられるなら、それが一番幸せなんだと思えた。
それって、昔だったら「負け」と思っていたかもしれない。
でも今は違う。
推しを“勝ち負け”で見ることなんて、もう意味がない。
ただ、その幸せを受け取って、心から応援できることこそが、自分にとっての“供給”だった。
デスクの上にあるノートを閉じる。
それは、かつては京橋の情報を記録するためのものだった。
今はもう、新しいページは開かないかもしれない。
けれど、そのすべてが無駄だったなんて思っていない。
“好き”という気持ちは、いつか形を変えていく。
でも、変わったからといって、薄れたわけじゃない。
画面の明かりが、ゆっくりとまぶたに滲む。
パソコンを閉じた瞬間、部屋の中には静寂が戻ってきた。
風の音が窓の外で鳴っている。
「……最強か、ほんとに」
もう一度、小さく呟いて、目を閉じる。
今日という一日が、少しだけ優しく終わっていく。
推しの幸せを、まっすぐに“供給”として受け止められる。
そんな夜だった。
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