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追ってみたくなった
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夜の部屋は、昼間のぬくもりをすっかり手放していた。
ベッドに寝転び、スマホを持った手だけが時折、指先で画面をなぞる。
窓の外では、かすかに車の音が響いている。
それ以外は、静かだった。
梅田は、何をするでもなく、無意識に検索窓を開いていた。
「天王寺 悠」
フルネームで打ち込む。
検索ボタンを押して、ページを読み込む間、なぜか心がざわつく。
だが、画面に表示されたのは、ありふれた名前の重複ばかりだった。
同姓同名の別人のSNSアカウント、地味な求人情報、どこかの市役所の職員名簿。
どれも、あの顔には結びつかない。
しばらくスクロールしてみても、やはり何も出てこなかった。
「……マジで、何もないやん」
思わず小さく笑った。
普通なら、あれだけの顔を持っていたら、どこかで何かしら引っかかるはずだ。
過去のモデル活動、学生時代の写真、インスタのタグ。
何かしら、誰かが見つけて、記録して、ネットに残しているはずなのに。
けれど、何もなかった。
まるで、最初から、存在を隠してきたかのように。
あるいは、誰にも見つけられたくなかったかのように。
それでも、昨日確かに見た。
地下鉄の構内で、眼鏡を外したあの横顔。
髪の奥に隠された、鋭くも静かな目元。
輪郭の整った、涼やかな顔立ち。
「……もったいなさすぎるやろ」
声に出して言って、また苦笑する。
誰にも知られず、誰にも見られず、ただ会社の隅で生きている。
そんな生き方を、天王寺は自分で選んでいるのだろうか。
画面を閉じた。
スマホを腹の上に置き、ゆっくりと天井を見上げる。
暗闇の中で、ぼんやりと天井の模様が浮かんでいた。
シンプルな白い天井。何の飾り気もない。
でも、その白の奥に、昨日見た“光”の感触がまだ残っている気がした。
心が、妙に落ち着かない。
あれはただの顔じゃない。
ただ綺麗なだけでもない。
何か、それ以上のものを――見たような気がした。
「……あかん。なんか……追ってみたなってきたわ」
ぽつりと、天井に向かって呟いた。
恋だとか、興味本位だとか、そんな簡単なものじゃなかった。
もっと本能的な、もっと深いところで。
ただ、知りたいと思った。
あの目の奥にあるものを。
あの無表情の奥に、しまい込まれているものを。
知らず知らずのうちに、指が胸元を握りしめていた。
ゆっくりと開いた手のひらには、何もない。
だけど、もう戻れない気がしていた。
このざわめきの正体が何かも、
どこに辿り着くのかも、まだ分からないまま。
ただ、確かに一歩、踏み出してしまった。
ベッドに寝転び、スマホを持った手だけが時折、指先で画面をなぞる。
窓の外では、かすかに車の音が響いている。
それ以外は、静かだった。
梅田は、何をするでもなく、無意識に検索窓を開いていた。
「天王寺 悠」
フルネームで打ち込む。
検索ボタンを押して、ページを読み込む間、なぜか心がざわつく。
だが、画面に表示されたのは、ありふれた名前の重複ばかりだった。
同姓同名の別人のSNSアカウント、地味な求人情報、どこかの市役所の職員名簿。
どれも、あの顔には結びつかない。
しばらくスクロールしてみても、やはり何も出てこなかった。
「……マジで、何もないやん」
思わず小さく笑った。
普通なら、あれだけの顔を持っていたら、どこかで何かしら引っかかるはずだ。
過去のモデル活動、学生時代の写真、インスタのタグ。
何かしら、誰かが見つけて、記録して、ネットに残しているはずなのに。
けれど、何もなかった。
まるで、最初から、存在を隠してきたかのように。
あるいは、誰にも見つけられたくなかったかのように。
それでも、昨日確かに見た。
地下鉄の構内で、眼鏡を外したあの横顔。
髪の奥に隠された、鋭くも静かな目元。
輪郭の整った、涼やかな顔立ち。
「……もったいなさすぎるやろ」
声に出して言って、また苦笑する。
誰にも知られず、誰にも見られず、ただ会社の隅で生きている。
そんな生き方を、天王寺は自分で選んでいるのだろうか。
画面を閉じた。
スマホを腹の上に置き、ゆっくりと天井を見上げる。
暗闇の中で、ぼんやりと天井の模様が浮かんでいた。
シンプルな白い天井。何の飾り気もない。
でも、その白の奥に、昨日見た“光”の感触がまだ残っている気がした。
心が、妙に落ち着かない。
あれはただの顔じゃない。
ただ綺麗なだけでもない。
何か、それ以上のものを――見たような気がした。
「……あかん。なんか……追ってみたなってきたわ」
ぽつりと、天井に向かって呟いた。
恋だとか、興味本位だとか、そんな簡単なものじゃなかった。
もっと本能的な、もっと深いところで。
ただ、知りたいと思った。
あの目の奥にあるものを。
あの無表情の奥に、しまい込まれているものを。
知らず知らずのうちに、指が胸元を握りしめていた。
ゆっくりと開いた手のひらには、何もない。
だけど、もう戻れない気がしていた。
このざわめきの正体が何かも、
どこに辿り着くのかも、まだ分からないまま。
ただ、確かに一歩、踏み出してしまった。
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