【完結】知られてはいけない

ひなこ

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九・そして事件は起きた

そして事件は起きた(2)

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「で、前も言ったけど。自分にしかわからない名前とかでもない。彼氏かれしの名前とか、家の猫の名前なんて、人にわからないでしょう?そんな答えをする人、ここに来るメンバーにえらんでないからね!もっとわかりやすいこと。答えは、広くみんなが考えそうなことだよ」
 円は得意とくいそうに言う。
「それから、似た言い方でも広く正解せいかいにすることにしました!意味いみが近ければいいです。個別判断こべつはんだんとか言ってたけど、ほぼOK。これでぐっと、簡単かんたんになったでしょう?」
 えっ?
 最初に”あい”と”好き”はちがうって言ってたけど、それも正解にするってこと?
「何でだ?困る、そんなの!」立ち上がったのは、島田圭吾(しまだ・けいご)だった。
「だって、みんななかなかバトルに挑戦ちょうせんしてくれないからさ。ちなみに、きみの答えはよほど言いえが多そうだってことかな?ふっ」
 島田圭吾は口を押さえて、そそくさとすわる。
「はいっ、と言うわけでこれからもがんばって下さい!まだ夜ミーティングまで三時間あるからね。楽しみにしてるよ。よい夕食をー」
 ブチッと変な音がして、円は消えた。
 しーん。
 重苦おもくるしい空気がかたへともってきた。

 夕食後ゆうしょくご
 わたしはまた廊下ろうかを歩いていた。今度はりょうの廊下を……だ。
 加川準(かがわ・じゅん)に、保健室ほけんしつへ連れて行ってくれたおれいを言ってないままだ。もう少しで夜ミーティングが始まるけど。明日になる前に言わなくちゃ。
 わたしは、寮の三階へと上がる。さっき夕食の帰り、部屋の表札ひょうさつを見てまわった。準の部屋が見つからなかったってことは、もうこのかいとしか思えない。
 さっきライアンのことでけつけたときも、加川準は上から降りてきた。
 手前てまえから順に、一部屋ずつ表札を見て行く。
 そのときだった。
 いきおいいよく走る、二つの足音あしおと。廊下の途中とちゅうでいきなり止まった。
「助けて!だれかあ!」
 おびえる少女の声がした。聞きおぼえない声だ。
 わたしはとっさに走り出す。
 だれかがこわい目にあっていることが、我慢がまんならなかった。
 
 駆けつけてみるとかべに男子が手をついて、女の子の行く手をふさいでいた。
 見ようによっては、かべドンにも見えるけど……。
 そんなときめく場面には全然ぜんぜん見えない。女の子はこわがっている。
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