【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第二章 西の国の花の祭り編

一難去ってまた一難

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 自然に包まれた遺跡の全貌はわからないけれど、それでもこの遺跡は歩きやすいなと思った。
 ステラが今まで足を踏み入れたことのある遺跡は精霊の神殿であったり、幻の武器が眠っているとされている場所であったりと一筋縄ではいかない場所ばかりだった。それこそ謎かけや罠があるのは当たり前だったし、目的の場所に辿り着いたと思ったらそこを守護するモンスターが現れて戦闘になることもあった。
 それを思うと今のこの状況は正直に言えばとても楽だ。

 ステラはインベントリからモンスター避けの聖水を取り出した。手のひらに収まる雫型のガラス瓶に入ったそれは一見透明のただの水だが、これは霊山フェデルの麓にある湖の水だ。この水にはモンスターを退ける効果がある。
 キュポン、と蓋を取り外してステラは躊躇することなくそれを頭から被った。冷たい。
 勇者たちとの冒険の際は中盤以降は女性の仲間もできたから聖水を霧吹きや香水のように吹き掛けていたが、現在ステラのインベントリにはそんな便利な物はない。濡れた髪から肌に伝ってくる水に微妙な顔をしつつ、まあいいかと思いながら濡れた前髪を掻き上げた。

 ちなみにステラにとってこの遺跡にいるモンスターは脅威ではない。むしろ今手に持っている杖で少し突けば多少のダメージは与えられるだろうと思うくらいの強さだ。
 それでもステラが聖水を被ったのには意味がある。ステラの主な戦闘方法は魔法による遠距離攻撃だ。だがしかし、今いる遺跡の内部は相当な経年劣化が進んでいるしここで少しでも大きな魔法を使用してしまえばきっと壁が崩れ、最悪生き埋めにもなりかねないからだ。
 だからステラは安全に進むことにする。

「…それにしても、結構広いですね…」

 暗い遺跡の中を照らしながら慎重に最下層を目指して進む。階段を使って下に降りることもあれば既に空いている穴に飛び込むこともあった。そうやってどれ程の時間が経っただろうか、体感にしてみれば一時間と少しのような気もする。
 正直、思った以上に距離があって疲労を感じていた。まず暗闇だし、足場も悪い。トラップやモンスターからの奇襲を想定しながら動かないといけないし、何より疲労を感じるのが今どこにいるのかわからないからだ。

 途中かつて窓だった場所から差し込む光を見つけた時、外を見てみたけれどまだ最下層までは距離があった。そもそもこの遺跡は円形状だ。どう進んでいるのかも把握できない以上、円を周りながら降りている可能性だってある。
 外の様子が見えない分、距離はずっと長く感じた。けれどそんな状態も終わりを告げる。幾度目かわからない階段を下り地面に両足を着けた時「あ、ここが最下層だ」と直感した。
 理由はとても簡単で、最下層だけ光に溢れていたからである。

「……」

 杖の先端に灯していた光を止め、ステラは深く深呼吸をした。先程まで吸い込んでいた湿気とカビを含んだ香りはせず、肺を満たすのは豊かな緑と清涼な空気。自然光によって照らされた内部は広く、上の階にはたまにあった仕切りの壁がここには無いように思う。

 ……かつてはここが集会の場だったのだろうか。

 上の階の壁には劣化して解読は出来なかったか精霊や創造神であるリーベを称えているような文字が書いてあった。ここがかつての教会のような場所だとしたら、最も開けている最下層で礼拝が行われていても不思議ではない。
 もう一度深呼吸をして、出口を目指す。何はともあれ最下層には到着した。まだリヴィウスたちの声は聞こえないけれど、あの二人のことだからそう時間も掛からずに到着するだろう。二人に会ったら心配を掛けてごめんなさいと謝らないとな、そんなことを考えながら遺跡の内部から出ようと足を踏み出した時、視界の端に黒い靄を捉えた。

 その直後感じた悪寒にも殺気にステラは目を見開いた。
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