59 / 105
第三章 東の国の大きなお風呂編
お預け、肉入り芋揚げへの道
しおりを挟む
打ち合わせ通り夜になりキキョウの案内のもと向かった海岸。そして出会った異常なほど大きな角と頭を持った、けれど身体は小さくアンバランスな不気味さが目立つモンスターと遭遇した。見た目の気色悪さとすばしっこさ、そしてその体からは想像が出来ないほどの怪力に苦戦するのだと、キキョウは言っていたがリヴィウスにかかれば一撃である。拳で。
「ンモオオオ⁉︎」
悲痛な叫びを上げて一撃の拳骨の元に沈んだ牛鬼にキキョウはあんぐりと口を開けて驚き、ステラとてぷはまあ当然だよなと頷いた。完全に伸びてしまった牛鬼を一瞬で氷漬けにしたのはステラである。
「ええ⁉︎」
「鮮度保持には大事かと思いまして」
「角に縄を掛けて引っ張るか?」
「それじゃあ傷がついてしまいませんか?」
『なら風魔法で浮かせて行けばいいんだぞ』
なるほどその手があったかと手を叩いたリヴィウスとステラを見ていたキキョウが悪夢を見ているかのように両手で頭を抱えた。
「……なんなのよあんたたち……」
「旅人、ですかね?」
ステラはリヴィウスたちを見ながら首を傾げた。
「普通の旅人はこんなデタラメなことしないわ! ……はあ、夢を見てる気分だよ。とりあえずもうそれでいいや。一度お源さんのとこに行こう」
溜息と一緒に呟かれた言葉にてぷはわっと声を上げた。
『これで芋揚げ食べられるのか⁉︎』
「すぐには無理だって言っただろ? 捌いたり熟成させたりって料理には手間が掛かるもんなんだよ。ほらそこの二人、あたしの後にちゃんと着いてくるんだよ」
出会って間もないがどうやらてぷはキキョウのことが気に入ったらしく今はキキョウと手を繋いで歩いている。それに一抹の寂しさを感じながら、ステラたちは町へと戻っていった。
───
牛鬼の肉は無事芋揚げ屋のお源の手元に渡った。言ったその日に物が届くとは思っていなかったらしく、氷漬けの牛鬼を持って行った時はあまりに驚きすぎて腰を抜かしてしまっていた。だが少しして復活した店主は採れたての牛鬼を見て目を輝かせていた。
「これだけありゃあいくらでも作れるぜ! でもうちだけじゃあ使い切れねえから他にも回させて貰うよ」
一仕事終えたステラたちにはお源から感謝の芋揚げが手渡された。じゃがいもしか入っていない揚げ物だったが下味がいいのか、薄付きの衣の食感がいいのか、否その全てか。揚げたてというのも手伝って想像以上に美味しかったそれにてぷの目がきらきらと星のように輝いていた。
『普通の芋揚げでもすんごく美味しいんだぞ! これ、これ肉が入ったらもっと美味しくなるのか⁉︎』
「おうともよ! 捌いたりなんだりがあるから明日明後日じゃ食わせてやれねえけど、三日後には絶対に用意しておくからよ。それまでこのオーエドの飯と文化を楽しんどいてくれ」
『三日も掛かるのか…! でもわかったんだぞ。美味しいのは時間と手間をかけたほうが美味しくなるって、キキョウも言ってたんだぞ!』
期待に表情を明るくしているてぷにお源の頬がデレっと緩んでいた。それを見てステラは「わかります」と深く深く頷いた。そのステラを見てリヴィウスはやれやれと首を振っていたがちゃっかり芋揚げのおかわりを要求していた。
三日後にまた店に訪れるという約束をして、その日は解散となる予定だったが、宿に戻ろうとしたステラたちを引き止めたのはキキョウだった。
まだ出会って一日も経っていないけれど、キキョウは常に読めない笑顔を浮かべていた気がする。けれど今ステラの前にいるのは真剣な顔をしたその人だ。
「……あんたたちに折り入って頼みがあるんだ」
夜になって更に賑やかさが増した通りでもキキョウの声はよく聞こえた。
「一緒に調べて欲しいことがある」
その真っ直ぐな目をステラはじっと見返した。きっと嘘はないだろうが、目的が見えないことに声を出さずにいると頭上から明るい声が聞こえた。
『いいぞ!』
「おい」
『大丈夫だぞ。キキョウは悪いヤツじゃないからな!』
てぷの底抜けの明るい声にステラは無意識に入っていた肩の力を抜いて笑った。それにキキョウが少しだけ眉を寄せているのがわかった。きっと困惑しているのだろう。
「はい、わかりました」
「……いいのかい? どんな用件かも言っていないのに」
「てぷ様は悪い人を見抜くのがとびきり上手なので大丈夫かと」
その言葉に今度はキキョウが肩の力を抜いて笑った。
「……末恐ろしい子供だねえ」
キキョウの言葉にてぷは得意げに胸を張り『ふふん』と笑って見せたのだった。
「ンモオオオ⁉︎」
悲痛な叫びを上げて一撃の拳骨の元に沈んだ牛鬼にキキョウはあんぐりと口を開けて驚き、ステラとてぷはまあ当然だよなと頷いた。完全に伸びてしまった牛鬼を一瞬で氷漬けにしたのはステラである。
「ええ⁉︎」
「鮮度保持には大事かと思いまして」
「角に縄を掛けて引っ張るか?」
「それじゃあ傷がついてしまいませんか?」
『なら風魔法で浮かせて行けばいいんだぞ』
なるほどその手があったかと手を叩いたリヴィウスとステラを見ていたキキョウが悪夢を見ているかのように両手で頭を抱えた。
「……なんなのよあんたたち……」
「旅人、ですかね?」
ステラはリヴィウスたちを見ながら首を傾げた。
「普通の旅人はこんなデタラメなことしないわ! ……はあ、夢を見てる気分だよ。とりあえずもうそれでいいや。一度お源さんのとこに行こう」
溜息と一緒に呟かれた言葉にてぷはわっと声を上げた。
『これで芋揚げ食べられるのか⁉︎』
「すぐには無理だって言っただろ? 捌いたり熟成させたりって料理には手間が掛かるもんなんだよ。ほらそこの二人、あたしの後にちゃんと着いてくるんだよ」
出会って間もないがどうやらてぷはキキョウのことが気に入ったらしく今はキキョウと手を繋いで歩いている。それに一抹の寂しさを感じながら、ステラたちは町へと戻っていった。
───
牛鬼の肉は無事芋揚げ屋のお源の手元に渡った。言ったその日に物が届くとは思っていなかったらしく、氷漬けの牛鬼を持って行った時はあまりに驚きすぎて腰を抜かしてしまっていた。だが少しして復活した店主は採れたての牛鬼を見て目を輝かせていた。
「これだけありゃあいくらでも作れるぜ! でもうちだけじゃあ使い切れねえから他にも回させて貰うよ」
一仕事終えたステラたちにはお源から感謝の芋揚げが手渡された。じゃがいもしか入っていない揚げ物だったが下味がいいのか、薄付きの衣の食感がいいのか、否その全てか。揚げたてというのも手伝って想像以上に美味しかったそれにてぷの目がきらきらと星のように輝いていた。
『普通の芋揚げでもすんごく美味しいんだぞ! これ、これ肉が入ったらもっと美味しくなるのか⁉︎』
「おうともよ! 捌いたりなんだりがあるから明日明後日じゃ食わせてやれねえけど、三日後には絶対に用意しておくからよ。それまでこのオーエドの飯と文化を楽しんどいてくれ」
『三日も掛かるのか…! でもわかったんだぞ。美味しいのは時間と手間をかけたほうが美味しくなるって、キキョウも言ってたんだぞ!』
期待に表情を明るくしているてぷにお源の頬がデレっと緩んでいた。それを見てステラは「わかります」と深く深く頷いた。そのステラを見てリヴィウスはやれやれと首を振っていたがちゃっかり芋揚げのおかわりを要求していた。
三日後にまた店に訪れるという約束をして、その日は解散となる予定だったが、宿に戻ろうとしたステラたちを引き止めたのはキキョウだった。
まだ出会って一日も経っていないけれど、キキョウは常に読めない笑顔を浮かべていた気がする。けれど今ステラの前にいるのは真剣な顔をしたその人だ。
「……あんたたちに折り入って頼みがあるんだ」
夜になって更に賑やかさが増した通りでもキキョウの声はよく聞こえた。
「一緒に調べて欲しいことがある」
その真っ直ぐな目をステラはじっと見返した。きっと嘘はないだろうが、目的が見えないことに声を出さずにいると頭上から明るい声が聞こえた。
『いいぞ!』
「おい」
『大丈夫だぞ。キキョウは悪いヤツじゃないからな!』
てぷの底抜けの明るい声にステラは無意識に入っていた肩の力を抜いて笑った。それにキキョウが少しだけ眉を寄せているのがわかった。きっと困惑しているのだろう。
「はい、わかりました」
「……いいのかい? どんな用件かも言っていないのに」
「てぷ様は悪い人を見抜くのがとびきり上手なので大丈夫かと」
その言葉に今度はキキョウが肩の力を抜いて笑った。
「……末恐ろしい子供だねえ」
キキョウの言葉にてぷは得意げに胸を張り『ふふん』と笑って見せたのだった。
129
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる
水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。
「君のすべては、俺が管理する」
戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。
これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。
みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。
愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。
「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。
あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。
最後のエンドロールまで見た後に
「裏乙女ゲームを開始しますか?」
という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。
あ。俺3日寝てなかったんだ…
そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。
次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。
「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」
何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。
え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね?
これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
本当に悪役なんですか?
メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。
状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて…
ムーンライトノベルズ にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる