【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第三章 東の国の大きなお風呂編

再開、肉入り芋揚げへの道

 外観は派手だが内装は思いの外落ち着いているキキョウの店に到着してからそれなりの時間が経った。応接間のような広い部屋に通された三人はキキョウと色々な話をした。
 今まで巡った国や料理の話ばかりだったけれどキキョウはこの国から出たことがないらしく楽しそうに相槌を打ちながら聞いてくれたからてぷも楽しそうに思い出を語っていた。

「はっ! あんたはさっきの水掛け男!」
「こらおリン。まずは謝りな」

 途中しっかりお色直しをしたおリンの襲撃に遭ったり。

「やだ外海にはこんな色男いるの⁉︎  ヤダヤダちょっとでいいから匂い嗅がせてぇっ」
『やめるんだぞリヴィ! なんでボクを身代わりみたいにするんだ!』

 お茶やお茶菓子を持ってきたこれもまた個性が爆発している屈強な乙女に迫られたり。

「…アタシ、細い男も好きなのよね。しかも色も白いし、可愛がり甲斐がありそうだわん…」
「え」
「駄目だ触るな」

 光り輝く頭部を持つ、艶かしい乙女に低く甘やかな声で囁かれたり。

「……なんだここは、魔境か」
「うちの可愛い子たち捕まえて魔境たあひどい言い草じゃないか」
「捕まえた覚えはない。あっちが勝手に捕まりに来る」

 長い船旅も炎天下の下の陸路もモンスターとの連続した戦闘もものともしない三人が、この旅で初めて疲労困憊となっていた。行儀が悪いと思いつつ飴色の机にぐてっと上半身を預ける。ひんやりとした温度が心地良いとすら思った。

「ふふ、あの子たちはねあんたみたいな体付きのやつが好きなのさ。背も高くて顔も良いし声もいい。そりゃあこの街の子たちは群がる」

 にんまりと口許を三日月のようにしならせたキキョウの言葉にリヴィウスが目に見えてげっそりと頬をこけさせ肩を落とした。さすがにこれ以上は可哀想だと思いステラはぐてっと机に預けていた上半身をのそりと上げてキキョウを見た。

「あの、どうしてお店に連れてきてくれたんですか?」
「そりゃああんた、口で説明したってここの場所がわかるわけないだろう? それにあたしはこの通り目立つんでね、そう頻繁にあの大通りには出たくないのさ。だから迎えに行く手間を省くために連れてきた。これでいいかい?」

 反射で頷きながら、改めてステラはキキョウの顔を見た。見れば見るほど溜息を吐きたくなる程の美しさだ。リヴィウスの顔面の造形を動とするなら、キキョウのは静のそれだ。氷や水、もしくは研ぎ澄まされた刃のような静かだが迫力のある顔立ちに思わず見入っているとキキョウが緩く首を傾げた。

「そんなに見られると穴が開いちまうよ」
「! すみません」
「いいさ、慣れてる。まああたしはアズマヒ一の美人だからねえ、仕方がないさ」

 自信たっぷりの顔で、さも当然と言わんばかりの口調で告げられてもそれが全く嫌味にならない。むしろ「そうですよね」と全力で頷いてしまいたくなる程の美しさだった。

「さあて、遊ぶのもここまでにして本題に入ろうか。牛鬼の生息場所についてだけどね──」

 すっかり個性が爆発している乙女たちに押されていたせいで当初の目的を忘れていた。キキョウさんが手を叩くとす、と襖が開いて紙を差し出した。顔や姿は見えないが伸ばされた腕の逞しさと、指先に施された爪の装飾でこの人もまた乙女の一人なのだろうなと思いながらステラたちは広げられた地図に視線を落とした。
 西と東で分かれたアズマヒの国、その東側に位置するオーエド領。もちろん海に囲まれたこの領にはいくつもの海岸があるらしく、キキョウが指差したのは今いる町から最も離れた場所。

「ここには牛鬼たちの住処があるんだ。あいつらは夜行性だからね、夜に行けばまず間違いなく遭遇は出来る」

 ステラたちは地図を見ながら同じようなタイミングで頷く。

「全部倒してもいいのか?」
「駄目だねえ」

 一切の迷いもなく首を振ったキキョウにリヴィウスが首を傾げた。

「牛鬼は厄介なバケモノだけど、あいつらがいるから他のバケモノが減って農被害とかが少なくなってるんだよ。だから狩りに行っても倒すのは一体だけだ」

 だけど、とキキョウが呆れたようにリヴィウスを指差した。

「あんたがどんだけ強いかは知らないけど、そう簡単に倒せるバケモノじゃないんだからね」

 ……──。
 そうキキョウが言っていたのはほんの数時間前。

「倒したが?」
「嘘でしょあんた⁉︎」
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