【完結】元つく二人の珍道中!〜(元)魔王と聖女の全国行脚美食旅〜

白(しろ)

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第三章 東の国の大きなお風呂編

事の顛末を話そう

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 それからもう少してぷを補給してからステラはようやく顔を離した。普段一緒にお風呂に入った時にしかやらないことだが、やはり三日も開くと駄目だなと大真面目に頷いた。ステラもてぷも大満足な時間だったのだが、リヴィウスだけはやけに不満げだった。
 だがいつまでもこの神殿にいるわけにもいかない為、それからステラたちは準備をして一度てぷから事の顛末を訊くことにした。

『……』
「……どうかこのまま説明を……」
『気が散るんだぞ……』

 二人と一匹、否、一人と一匹の間に微妙な雰囲気が漂う。それは十中八九ステラのことを後ろから抱き締めている大男のせいだ。ベッドに腰掛け、足の間にステラを座らせて問答無用で抱き締めている様は側から見れば仲睦まじい二人の様子だが、真面目な話をする場合はそぐわない。
 だがしかし、リヴィウスにはそんなもの関係無いのである。

「気にするな」

 ステラはぐ、と溜息を吐くのを堪えたがてぷはこれ見よがしに大きな溜息を吐いた。

『はあああああ、仕方がないから許してやるんだぞ』

 やれやれと首を振り、二人の視線の高さでふよふよと浮きながらてぷが語り出した。
 まず、攫われていた人の大多数は助け出すことが出来たらしい。そこから逃げ出した人はきちんとキキョウが保護をして、アズマヒの国の人間であるなら故郷に戻れるように手配をするし、外海の人なら貿易船に掛け合ってくれるそうだ。
 それくらいの人数がタカマガハラのある店の中に囚われていたようで、発見した時のキキョウはそれは怒りに震えていたらしい。

 ヒドラと共謀し人を攫い、そして場所を提供していた店主やその経営陣は軒並み捕まえて今は行政の沙汰を待っているとか。
 たった数日いなかっただけで大きく動いている事態に少し驚くが、被害を考えれば当然のことだなとステラは声は出さずに頷いた。

『それでヒドラとかいうやつらのことなんだぞ』

 その言葉に無意識に体に力が入り、それを宥めるようにリヴィウスがステラの髪に頬を寄せた。それに羞恥を感じないと言えば嘘になるけれど、今は安堵の方が大きい。

『何人いたかわかんないけど、捕まえたのは一人だぞ。鼻がでっかくてお腹がばいーんってしてるやつ』
「……あの男はどうした。動けない程度には痛めつけたはずだ」

 抱き締めてくれている腕の力が強まった。リヴィウスのいう「あの男」とはキースとみて間違いないのだろう。

『……お前は覚えてないと思うけど、ボクたちをステラのところに案内してくれたヒトの子が連れて逃げたぞ。リヴィはステラのことしか見えてなかったから絶対に覚えてないと思うんだぞ』

 案の定リヴィウスは黙ってしまった。ステラはあの時リヴィウスが来てくれた瞬間までは意識を保てていたが、そこから先は知らない。けれど今てぷの言葉から導き出せる人物に一人だけ心当たりがあった。

「……その子、私と似ていませんでしたか? キースを、その、リヴィが痛めつけたという男を連れて逃げた少年です」
『んん?』

 てぷが短い手を組もうとしてお腹辺りをたぷたぷ叩く。首を傾げながら当時のことを思い出しているのかやがて『ああ』と顔を上げた。

『言われてみれば似てた気がするぞ、髪の色とか!』
「どこも似ていない。ステラとあの半端を一緒にするな」

 半端、その言葉にまた一つ思い出す。全身に毒が回って指先ひとつ動かせなかったあの時、魔族が苛立たしげに吐き捨てた言葉の中に今リヴィウスが出した言葉があった。あの時も今の響きも、決して良いものではないと簡単に推測出来るし何よりステラ自身も半信半疑だった。

「……彼は、魔族と人の間に生まれた子ですか?」

 少しだけ後ろを見ると、そこには大して興味もなさそうな顔をしたリヴィウスがいた。

「そうだな。昔はもっといたが、最近では稀だ。大方何処かの上位魔族がやったんだろう」

 なんてことないふうに告げられた言葉はステラにとって、否、人間にとっては信じ難いものだ。人間と魔族は少なくとも千年の間いがみ合っていて、もはや憎しみの対象と言っても良い。それなのにどうして、と考え込んでいるとリヴィウスが静かに口を開いた。
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