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【男爵視点】家族の輪郭── 『義理の息子への、変わらぬ信頼』
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──謝罪というものは、過ちを帳消しにはしない。ただ、次に進むための扉を少しだけ開けるものだ。
かつて誇り高く、誰よりも強気だった男が、今やひとりの父親として、後悔の渦中にいた。
「あの失礼な手紙もな……実は、こうすれば二人が来てくれると思ったんだ」
声はかすれ、申し訳なさそうな震えが混じっていた。
言葉の続きなんて、聞かなくても予測はつく。あいつの長年の悪癖だ──遠回しに伝え、正面からは何も頼まない。だから余計にこじれる。
「まさか、こんな結果になるとは思いもしなかった……本当にすまない、クロード君。心の底から謝罪する」
クロードは黙っていた。顔を上げもしない。その沈黙には怒りも、恨みもなかった。ただ、感情が追いついていないだけのように見える。
アルフォンスなりに必死だったことはわかった。だが、結果としてクロードを深く傷つけたのも事実だ。
「事情は理解した。……でもな、それでもティタ嬢のやったことは、決して許されるものではない。どんな理由があっても、だ」
彼は再び頭を下げ、言葉少なに頷いた。
「……申し訳ない。何度謝っても足りないくらいだ」
私には、これ以上アルフォンスを責める言葉が見つからなかった。ただ事態の重さを胸に刻み、静かに目を閉じた。
「今夜はクロードと同室にしてくれないか。明日の朝、私たちはここを出ることにするよ」
そう告げると、彼は小さく頷いて静かに席を立った。
部屋に入ると、クロードは椅子に座り込み、どこか遠くを見るような目をした。机の上のランプが揺れ、その顔に影を落としている。
「……男爵様、本当に申し訳ございません。不甲斐ない姿を見せてしまいました」
私は穏やかに首を振った。
「いいや、クロード。お前は何一つ悪くない。あんなことをされて、謝るべきはお前じゃない」
クロードの顔が少しだけ震え、彼の瞳にかすかに涙が浮かぶのを見た。普段冷静で無表情な彼のそんな姿を見ると、胸が詰まる思いだった。
「ですが、私は……妻以外の女性に……」
「お前が望んでそうなったのか?」
問いに返事はなかった。ただ、唇を強く噛みしめるその様子が、全てを物語っていた。
「お前は誠実で、律儀で、聡明で、私の娘を大切にしてくれている。だからこそ、私はお前を婿に迎えた。……その判断に今も一点の曇りはない」
「……ありがとうございます」
クロードの肩がわずかに震えたのがわかった。だから私は、少しだけ口角を上げて見せた。
「お前は、私の可愛い義理の息子だ。……可愛げはないがな」
ほんの冗談のつもりだった。だけど、その一言で、クロードの目にまた涙が滲んだ。静かに、溢れ出すように。
私は椅子にもたれ、灯りを落とした。部屋に柔らかな暗がりが満ち、夜の静けさが戻ってくる。
「今日はもう眠れ。目を閉じて、少しでも身体を休めるんだ」
クロードは小さく頷き、ゆっくりとベッドに身を沈めた。その横顔はまだ硬いが、少しだけ張り詰めた糸が緩んだ気がした。
私はしばらくその寝息を聞きながら、窓の外を眺めた。
──家族というものは、いつだって思い通りにはならない。それでも、誰かが傷ついたときに寄り添えることが、本当の家族の在り方だと私は信じている。
ならば、私はこの義理の息子の盾であり続けるさ。何度だって、たとえ相手が、どんな過去を背負っていたとしても。
人は皆、謝罪に何かしらの救いを求めているのかもしれない。けれどそれが真に誰かを救えるかどうかは、言葉の重さと、受け止める側の心次第だ。
かつて誇り高く、誰よりも強気だった男が、今やひとりの父親として、後悔の渦中にいた。
「あの失礼な手紙もな……実は、こうすれば二人が来てくれると思ったんだ」
声はかすれ、申し訳なさそうな震えが混じっていた。
言葉の続きなんて、聞かなくても予測はつく。あいつの長年の悪癖だ──遠回しに伝え、正面からは何も頼まない。だから余計にこじれる。
「まさか、こんな結果になるとは思いもしなかった……本当にすまない、クロード君。心の底から謝罪する」
クロードは黙っていた。顔を上げもしない。その沈黙には怒りも、恨みもなかった。ただ、感情が追いついていないだけのように見える。
アルフォンスなりに必死だったことはわかった。だが、結果としてクロードを深く傷つけたのも事実だ。
「事情は理解した。……でもな、それでもティタ嬢のやったことは、決して許されるものではない。どんな理由があっても、だ」
彼は再び頭を下げ、言葉少なに頷いた。
「……申し訳ない。何度謝っても足りないくらいだ」
私には、これ以上アルフォンスを責める言葉が見つからなかった。ただ事態の重さを胸に刻み、静かに目を閉じた。
「今夜はクロードと同室にしてくれないか。明日の朝、私たちはここを出ることにするよ」
そう告げると、彼は小さく頷いて静かに席を立った。
部屋に入ると、クロードは椅子に座り込み、どこか遠くを見るような目をした。机の上のランプが揺れ、その顔に影を落としている。
「……男爵様、本当に申し訳ございません。不甲斐ない姿を見せてしまいました」
私は穏やかに首を振った。
「いいや、クロード。お前は何一つ悪くない。あんなことをされて、謝るべきはお前じゃない」
クロードの顔が少しだけ震え、彼の瞳にかすかに涙が浮かぶのを見た。普段冷静で無表情な彼のそんな姿を見ると、胸が詰まる思いだった。
「ですが、私は……妻以外の女性に……」
「お前が望んでそうなったのか?」
問いに返事はなかった。ただ、唇を強く噛みしめるその様子が、全てを物語っていた。
「お前は誠実で、律儀で、聡明で、私の娘を大切にしてくれている。だからこそ、私はお前を婿に迎えた。……その判断に今も一点の曇りはない」
「……ありがとうございます」
クロードの肩がわずかに震えたのがわかった。だから私は、少しだけ口角を上げて見せた。
「お前は、私の可愛い義理の息子だ。……可愛げはないがな」
ほんの冗談のつもりだった。だけど、その一言で、クロードの目にまた涙が滲んだ。静かに、溢れ出すように。
私は椅子にもたれ、灯りを落とした。部屋に柔らかな暗がりが満ち、夜の静けさが戻ってくる。
「今日はもう眠れ。目を閉じて、少しでも身体を休めるんだ」
クロードは小さく頷き、ゆっくりとベッドに身を沈めた。その横顔はまだ硬いが、少しだけ張り詰めた糸が緩んだ気がした。
私はしばらくその寝息を聞きながら、窓の外を眺めた。
──家族というものは、いつだって思い通りにはならない。それでも、誰かが傷ついたときに寄り添えることが、本当の家族の在り方だと私は信じている。
ならば、私はこの義理の息子の盾であり続けるさ。何度だって、たとえ相手が、どんな過去を背負っていたとしても。
人は皆、謝罪に何かしらの救いを求めているのかもしれない。けれどそれが真に誰かを救えるかどうかは、言葉の重さと、受け止める側の心次第だ。
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