【R18】貴方の傍にいるだけで。

樹沙都

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§ Blue moon —Side Ryo

03

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 関根と話をしているのは、小柄で目鼻立ちの整ったきれいな子だ。大抵の男は落ちるだろうと思われるかわいらしい笑顔を振りまいているが、口調はさっぱりしていて、言葉の端々には強かさも垣間見られる。
 関根の狙いは、この子に違いない、と、簡単に当たりは付いた、が、そう易々と落とせるような女ではなさそうだ。

「まさか……小夜ちゃん、お見合いするの?」
「え? しないわよ」

 小夜ちゃん・・・? なんと、本当に知り合いだったとは驚いた。こいつは俺の知らないところでいつの間に——と、本当の目的は、これ、か。
 関根が俺を執拗に誘った理由が、なんとなく見えてきた。最初から小夜ちゃん目当てでこの店を訪れたのが真相だ。

「じゃあ……こっちの子? こんだけきれいだったら男なんて選り取り見取りでしょう? 見合なんてする必要あるの?」
「必要かどうかなんて問題じゃないの。親に持ち込まれちゃうんだから、どうしようもないのよ」
「親かぁ。まあ、親が心配するのはわかるから、ある程度の年齢になったら、煩くなるのも仕方がない面があるよね。え、っと、なにちゃん……だっけ? まだ名前聞いてないわ」
「瑞稀よ。河原瑞稀」
「瑞稀ちゃん、かぁ。かわいい名前だね。俺は関根学で、こっちは松本亮っていうの。ねえ、瑞稀ちゃんは彼氏とかいないの?」
「…………」
「いないわよ。いたら、見合なんて煩く勧めてこないんじゃない?」

 代わりに喋るのは小夜ちゃんで、瑞稀という名の彼女は、表情も変えず関根を一瞥しただけだった。

「そうか、いないのかぁ。ねえ? こいつなんてどうよ? 友だちだから言うわけじゃないけど、有能だし、見た目もそこそこだし、俺が元いた会社の出世頭の優良物件だよ」
「なによ? 私だってフリーなのに。私には紹介してくれないの?」

 身を乗り出して俺を覗き込む小夜ちゃんに「どうも」と、社交辞令の笑みを張り付ける。瑞稀はといえば、こちらを見向きもせず。興味すらないらしい。

「あ、グラス空になるね。お近づきの印に、一杯奢らせてよ」
「いいの? 嬉しい! じゃあ、私はファジーネーブルにしようかな? 瑞稀はなににする?」
「……ブルームーン」

 暫くの間を置いて、瑞稀が低い声で言う。
 
ひとりはアルコール度数低めのカクテルを選び、もうひとりは『お断り』のカクテル言葉を持つブルームーンを選ぶ。つまり、遠回しに俺たちはお呼びでないと言っているのだが。

 狙った獲物は逃さない。気に入った女相手にこの程度のことで怯む関根ではないのは、これに付き合わされる俺が知っている。

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