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§ わたしたち、いまさら恋はできません。
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「俺……、良いこと思いついちゃった」
「なによ? どうせ変なことでしょ?」
「へへ……」
「ちょっとなに? あっち戻りなさいよ! 気持ち悪い」
俊輔は、突然立ち上がり、何杯目かのビールジョッキを持ったまま、隣に座り込んできた。テーブルに肘をつき、ニヤニヤしながら私の顔を上目がちにじーっと覗き込んでいる。
「なあ波瑠、いっそのこと、俺たち付き合っちゃわない?」
「はあ?」
「だからさ、俺たちが付き合えば、面倒臭いこと全部解決するんじゃね? って言ってんの」
「なんで?」
「わっかんないかなあ? いい? 俺たちが付き合えば、もう誰にも彼女作れだの結婚しろだのって煩く言われなくて済むんだよ? 気楽な生活に戻れるだろ?」
「それって……いつもみたいに恋人を偽装するってこと?」
「偽装じゃなくて、本当に恋人になるんだよ、って、そもそも、俺たち恋人だったよな」
「…………」
「これは……妙案だよ。だってさ、よくよく考えてみなよ? 俺たちってお互いを知り尽くしてるから気楽だし、変に束縛し合うことも無いだろ? 最悪、そのまま結婚するとしても、誰に反対されることも無いし、堂々とずっと今の生活を続けられるわけ。それに、お互いの条件だって、ぴったりだ。お前はそれなりに良い女だし、稼いでるから生活の心配も無いし、俺は、顔は良いし、優しいし、スペック高いし最高じゃない? どうよ? これ以上ない魅力的な提案だと思うんだけどな」
「意味わかんない。どうよくよく考えるとそういう話になるわけ? だいたいねえ、人のことそれなりってすっごく失礼だし、あんた、自己評価高過ぎ! それにね、なにその『最悪』結婚って! あんたなんかと結婚したら、それこそ『最悪』じゃない!」
「最悪最悪言うなよ……」
「そりゃあ、私だって結婚に夢なんか持ってないし、結婚する気なんてさらさら無いけど、万が一、本当に結婚することがあるんなら、そのときはやっぱりちゃんと本気の恋愛した結果として、本当に好きな人としたいわけ。だから、あんたみたいに軽いノリで結婚なんてできない!」
「だったら、ちゃんと本気の恋愛すればいいだろ? 俺と」
「はっ……いまさら……」
「じゃあ訊くけど、俺たちって、別れたっけ?」
「意味わかんないんですけど?」
「だ、か、らー、俺たち、別れたっけ? って訊いたの」
「はあ? いったいいつの話し?」
「小五のとき」
「なによ? どうせ変なことでしょ?」
「へへ……」
「ちょっとなに? あっち戻りなさいよ! 気持ち悪い」
俊輔は、突然立ち上がり、何杯目かのビールジョッキを持ったまま、隣に座り込んできた。テーブルに肘をつき、ニヤニヤしながら私の顔を上目がちにじーっと覗き込んでいる。
「なあ波瑠、いっそのこと、俺たち付き合っちゃわない?」
「はあ?」
「だからさ、俺たちが付き合えば、面倒臭いこと全部解決するんじゃね? って言ってんの」
「なんで?」
「わっかんないかなあ? いい? 俺たちが付き合えば、もう誰にも彼女作れだの結婚しろだのって煩く言われなくて済むんだよ? 気楽な生活に戻れるだろ?」
「それって……いつもみたいに恋人を偽装するってこと?」
「偽装じゃなくて、本当に恋人になるんだよ、って、そもそも、俺たち恋人だったよな」
「…………」
「これは……妙案だよ。だってさ、よくよく考えてみなよ? 俺たちってお互いを知り尽くしてるから気楽だし、変に束縛し合うことも無いだろ? 最悪、そのまま結婚するとしても、誰に反対されることも無いし、堂々とずっと今の生活を続けられるわけ。それに、お互いの条件だって、ぴったりだ。お前はそれなりに良い女だし、稼いでるから生活の心配も無いし、俺は、顔は良いし、優しいし、スペック高いし最高じゃない? どうよ? これ以上ない魅力的な提案だと思うんだけどな」
「意味わかんない。どうよくよく考えるとそういう話になるわけ? だいたいねえ、人のことそれなりってすっごく失礼だし、あんた、自己評価高過ぎ! それにね、なにその『最悪』結婚って! あんたなんかと結婚したら、それこそ『最悪』じゃない!」
「最悪最悪言うなよ……」
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「だったら、ちゃんと本気の恋愛すればいいだろ? 俺と」
「はっ……いまさら……」
「じゃあ訊くけど、俺たちって、別れたっけ?」
「意味わかんないんですけど?」
「だ、か、らー、俺たち、別れたっけ? って訊いたの」
「はあ? いったいいつの話し?」
「小五のとき」
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