わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都

文字の大きさ
5 / 83
§ わたしたち、いまさら恋はできません。

05

しおりを挟む
 思い出したくもないが、こいつは私の初恋の相手だ。

 俊輔と私は小学校の同級生。五年生のとき、初めて俊輔と同じクラスになった。気さくでお調子者の俊輔は、すぐにクラスの人気者になった。うちのクラスは男子女子ともに仲が良く、私と俊輔は男子女子入り混じった十人ほどのグループでよく遊んでいた。

 ふたりのうち、どちらが先に意識をしだしたのかはわからない。運動公園へ遊びに出かけたあの日、ドラム缶池の辺りで他のみんなと逸れ、ふたりきりになったとき、突然、私が好きだと告白されたのだ。

 とはいえ、付き合ったのはごく短期間。それも、放課後、一緒に下校したこと数回、こっそりとふたりだけで遊んだこと数回と、至って健全で可愛いお付き合いだった。

 私たちの関係は、どこからバレたのかはわからないが、あっという間にクラス中、ひいては学校中に広まってしまい、面白おかしい噂話と化した。よそのクラスの子や六年生までが、休み時間に私たちを覗きに来る毎日。ニヤニヤされ、囃し立てられ、冷やかされ、その度に私の気持ちも一緒に冷えていった。そして、ある日を境に、私たちは話すことも、目を合わせることもしなくなってしまった。

 五年生と六年生は、そのまま持ち上がりで同じクラス。私たちは、同じグループに属して一緒に遊びながらも、お互いをいないもの同然に無視したまま、卒業まで過ごした。卒業後は、彼は地元の公立中学、私は私立へと進路が分かれ、それっきり。大学生のとき、私のアルバイト先の近くのカフェで、同じくアルバイトをしていた俊輔と偶然の再会を果たすまで、初恋はおろか、こいつの存在すら忘れていた。

 昔の俊輔は、ただのチャラけたチビだったが、大人になって目の前に現れたこいつは、背もすっかり伸びて、整形でもしたのかと思うほど見目麗しく、且つ、逞しい男に変身していた。しかし、チャラいのは相変わらず。いや、年とともにさらに磨きがかかっている。

 だから、私が俊輔といまさら恋愛するなんて、たとえ無人島にふたりだけで取り残されたとしても、地球最後の日にふたりきりの生存者になったとしても、絶対に絶対に絶対にありえないのだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

処理中です...