わたしたち、いまさら恋ができますか?

樹沙都

文字の大きさ
77 / 83
§ すべてはここから始まった。

05

しおりを挟む
「……わかったよ」
「いいの? 良かった、助かる。この埋め合わせはするからさ」
「それで? いつ行けばいいの?」
「それがさ……急で悪いんだけど、今日これから来て欲しいんだよね」
「え? 今日これから? あっ」
「いてっ!」
「……ちょっとなに今の声? 誰かいるの?」
「あ! 違うっ! やっ……」

 お腹に回っていた俊輔の手に悪戯され、反射的に肘鉄をお見舞いしたら仕返しとばかりに耳朶に噛みつかれた。まずい、聞かれた、と、思ったときにはもう遅い。

「今の声なに? オトコ? お姉ちゃん、真昼間からなにやってんの? イヤラシイ」 
「いや、だから……違うって」
「ごまかさなくてもいいじゃない? へぇー、お姉ちゃんがねぇ」
「栞里ぃ!」
「ちょうどいいわ。彼氏連れてきて紹介してよ。ついでに荷物の片付けも手伝ってもらえると助かるしさ。いいでしょ? そのくらい」
「だから違うし、そんなこと急に言われたって……」
「なあに? 嫌なの?」
「いきなり無茶言わないでよ」
「……そんなに嫌なら別にいいわよ。お母さんに言いつけるから。このこと、お母さん聞いたらどうするかな? ふふふっ」
「ちょっと! それだけはやめて……」
「じゃ、決まりね。場所メールするわ。荷物は引越し屋が昼頃には運んでくるから、遅くとも二時までには来てね」

 通話の切れた携帯をベッドに放り投げ、身を捩って俊輔を突き飛ばした。

「しゅんすけっ! よくも……」

 腹立ち紛れに殴りかかろうとした腕を掴まれ、抱きしめられ身動きが取れない。力で抑えられてのキス攻撃を喰らえば、勝ち目があるわけも無く、悔しいが、出るのは甘い吐息ばかりだ。

「それで? なんだって?」
「彼氏と一緒に引越しの手伝いに来いだって」
「栞里、引っ越すんだ?」
「言ってなかったっけ? 結婚するのよあの子」
「ふーん。そーゆこと。ま、いいんじゃない? 行ってやれば」
「俊輔、あんた、行く気なの?」
「だって、どうせいずれは会わなきゃいけない相手だろ? 栞里だけじゃなくて、おじさんとおばさんにも話し通さなきゃなんないんだし」
「それ……本気?」
「じゃなかったら、なんだよ?」

 私の親に話を通すとは、何を意味するのか。こいつの考えていることがわからないのもさることながら、これから栞里と会うことすら突然過ぎて、私の思考が追いつかない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。

NOV
恋愛
俺の名前は鎌田亮二、18歳の普通の高校3年生だ。 中学1年の夏休みに俺は小さい頃から片思いをしている幼馴染や友人達と遊園地に遊びに来ていた。 しかし俺の目の前で大きなぬいぐるみを持った女の子が泣いていたので俺は迷子だと思いその子に声をかける。そして流れで俺は女の子の手を引きながら案内所まで連れて行く事になった。 助けた女の子の名前は『カナちゃん』といって、とても可愛らしい女の子だ。 無事に両親にカナちゃんを引き合わす事ができた俺は安心して友人達の所へ戻ろうとしたが、別れ間際にカナちゃんが俺の太ももに抱き着いてきた。そしてカナちゃんは大切なぬいぐるみを俺にくれたんだ。 だから俺もお返しに小学生の頃からリュックにつけている小さなペンギンのぬいぐるみを外してカナちゃんに手渡した。 この時、お互いの名前を忘れないようにぬいぐるみの呼び名を『カナちゃん』『りょうくん』と呼ぶ約束をして別れるのだった。 この時の俺はカナちゃんとはたまたま出会い、そしてたまたま助けただけで、もう二度とカナちゃんと会う事は無いだろうと思っていたんだ。だから当然、カナちゃんの事を運命の人だなんて思うはずもない。それにカナちゃんの初恋の相手が俺でずっと想ってくれていたなんて考えたことも無かった…… 7歳差の恋、共に大人へと成長していく二人に奇跡は起こるのか? NOVがおおくりする『タイムリープ&純愛作品第三弾(三部作完結編)』今ここに感動のラブストーリーが始まる。 ※この作品だけを読まれても普通に面白いです。 関連小説【初恋の先生と結婚する為に幼稚園児からやり直すことになった俺】     【幼馴染の彼に好きって伝える為、幼稚園児からやり直す私】

フッてくれてありがとう

nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」 ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。 「誰の」 私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。 でも私は知っている。 大学生時代の元カノだ。 「じゃあ。元気で」 彼からは謝罪の一言さえなかった。 下を向き、私はひたすら涙を流した。 それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。 過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

処理中です...