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またでた
しおりを挟む団長さんと一緒に馬に乗せてもらい、王都というところへ向かっているらしい。
このままこんな森にいたら確かに危ないことはわかる。
別に王都というところへ行ったって居場所はないだろうけど。
「団長さん、」
「ロイド」
「団、「ロイドだよ」
すごい押してくる
ここでは名前で呼ぶのが普通なのかな?
「…ロイド」
「うん、どうしたの?」
さっきまで会話を遮っていたのは嘘だったかのようにそう話を続ける。
「王都ってどんなところですか?」
「王都は初めてなのかい?、、そういえば名前を聞いてなかったね、教えてくれる?」
「佐久良、です」
なんとなく、名前を言うのは嫌だった。
またさっきのように何もない人間だと思い返しそうな気がして。
「サクラ?珍しい名前だね、」
"サクラ"が珍しい?苗字でも名前でも使う一般的な名前だけど。
、、やっぱりここは日本じゃないどこかなのかもしれない。
「サクラは王都に行ったことがないって言っていたね、森の方に住んでいたのかい?」
この人すごい話しかけてくる。
後ろにいるのに想像がつくあの爽やかスマイル。
「えっと、、そうですね。遠くから来ました。多分。」
多分?この子頭大丈夫かな?みたいな間を作らないで欲しい。伝わってくるから。
「そっか迷ってしまったんだね、安心して。またあの魔物が出てもここにいる騎士団はなかなかに強いから大丈夫だよ」
"魔物"
なるほど、あのモンスターみたいなやつは魔物というのか。
どこかの漫画やらアニメやらで見たことがある気がしたが、想像の100倍迫力がある気がした
自分の命などどうでもいいとさっきは考えてしまったけれど、「大丈夫」と言われるとどこか安心した
ぐァアアアアァアアア
「っ!」
「リザードだ!気を抜くな!体制を整えろ!!!」
後ろに乗っていたロイドの大きな声が響く
緊張感が増し、自分はどうしていいかわからない
トカゲの形をしているが何倍も大きい体をしている
皮膚は硬そうだ。見た目も毒々しい。
「サクラ、ここに居れば安心だ。決してここから動いてはダメだよ。この馬は頭がいいから近くにいるといい。」
そう言ってロイドはそのトカゲの魔物へ向かっていく
日本では絶対に目にしない光景が広がる
負傷している騎士も少しいる。
本当に現実なんだ、
そんなことを考えていると左足を負傷した騎士が目に入る
自分と同じくらいの年齢だろう
足を引き摺りながら他の騎士の戦闘の邪魔にならないように移動している
「っ!!!」
その光景を見ていた時だった
その騎士はトカゲの魔物が振り返りでもすれば長いしっぽが当たってしまいそうなくらいの距離にいることに気づく
あの騎士に気付いている者は?
ここから見えてはいるが他の人に見えているとは限らない
みんな戦闘に夢中で気づいていない?
なんだか嫌な予感がする、、
咄嗟に麗は走り出していた_______
そして私の記憶はここまでだった
______________________________...
「____からして、」
「____そうか」
なんか聞こえる。誰かの話し声
頭はまだぼーっとしたまま、ゆっくりと目を開ける
「!!!気がついたか!」
そう声が聞こえて左を見ると、何処かで見覚えのあるキラキラ顔、、ああロイドか。
「、、えっと」
「ああ、君は騎士を魔物から庇って怪我をしたんだよ。私がいながら本当に申し訳ない。」
ああ、なんとなく思い出してきた。
なんだか危なそうな騎士がいて、何も考えずに飛び込んで行ったっけ
あのあと魔獣のしっぽが飛んできてそれに当たった私は飛んで行って大怪我、ということらしい
この世界には治癒がすぐにできる薬があるようでそれを飲んでいまは綺麗に治っているみたい
どこかのゲームみたいだ
そんなことをぼけっと考えているとロイドがすごく険しい顔をしてこちらを見ていた。
「危ないことをするな」
低い声で一言、そして怒った顔
あー、また人を怒らせてしまったのだろうか
よかれと思って行動するといつもこうなってしまう。
結局どこの世界に行っても私はうまくいかない
気づいたら1人になる。
自然と目線は下にいく
なんで私はこうも、、
ぐっと力が入っている自分の手を見ているとその上から包み込むように大きな手が重なった
びっくりして顔をあげるとそこには辛そうなロイドの顔があった。
「サクラを責めているわけではない、ただ心配になるからああいったことはもうするな」
出会った時よりも崩れた言葉遣いでロイドはそう言う
心配になる、、?
ロイドが私を心配してくれると言うことだろうか
「、、?」
「今はわからなくともいい、とりあえず俺のために怪我をしないでおこうとでも考えておいてくれ」
俺のために、、
言葉遣いが乱れたロイドは作られた感が一切なくなり、親しみやすさを感じた
俺のために怪我をするな、なんて言われたこともなかったので不思議な気分だ
治療するのが面倒くさいということだろうか?
それは確かにすぎる
うんうんと頷いて
「わかった」
そう一言こぼした
眉毛を下げて「わかったならそれでいい」と微笑むロイドをなんだか不思議な感覚で見つめるのだった
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