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ささる気持ち
しおりを挟む「なんでここに女がいるんだよ」
そんな声が聞こえた。
振り返ると私と同い年くらいの男の人が立っていた。
黒の短髪に、眉毛辺りに随分昔の傷跡が残っているようだった
こんな形の傷痕は珍しいな、、
「おい、」
しかも顔が整っているため不謹慎かもしれないが結構似合っていた。
もう痛くないのだろうか?
「おい!!!近い!!!!!!!」
あ、やばい。完全に1人の世界に入っていた。
青年の声で現実に戻ってきたがどうしたんだろう?顔が真っ赤だ。
でもこの顔どこかでみたこともあるような、、?どこだったかな。
「すみません、ちょっと珍しくてつい」
「つい、でこんな近くに来たら危ねぇだろ!何やってんだよ!」
すごい怒られてる…
またやってしまったかな。
「ルトファ様はサクラさんを心配してるんですよ」
右にいたルーマスさんが小声でそんなことを言う。
心配?
確かに危ねぇだろって言っていたな。
そんでこの人はルトファさんと言うんですね、
しかもやっぱり顔が真っ赤だけど大丈夫かな?
えっと、もしかして本当に心配してくれてる?
少し可愛く見えてきてしまった。
そんなこと言ったらもっと怒られるだろうけど。
「すみません、失礼しました。本日付けで使用人として騎士団寮で働かせて頂きます。サクラです。どうぞよろしくお願いします。」
大勢の前で話すのは苦手だが、業務と思えば大丈夫だ。
「あん時の傷は」
ん?何か言った?
と顔を先ほどの青年に向ける。
「あの時の傷はもう大丈夫なのかよ、」
あの時の傷、、?
「この前、飛び込んだやつ」
飛び込んだ、、ああ。
魔物のしっぽで気絶したやつか。
こうやって一言で表すと恥ずかしいけど。
「はい、もう大丈夫です」
そういえばよく見ればあの時の騎士か。
どこかでみたことあると思ったけど。
「その、、悪かった」
わるかった、??
「え?」
聞き間違いと思いもう一度聞き直す
何故だかその青年はとても声が小さい
「っ、、だから!お前を守らなきゃ行けない立場なのに怪我させて悪かったって言ってんだよ」
わあ、
次はすごく大きい声だ。
「えっと、貴方が無事ならよかった、」
そっか。
この人は少し不器用なのかもしれないな。
怒っているように見えるけど心の底は随分と温かい気がする。
そう思い、ふっと笑みをこぼす。
シーーーーンと静まり返るこの場に気付き周りを見渡す
???
「っおま!」
目の前の青年は先程より更に顔を赤くしている。
青年だけではなく、周りの使用人や騎士たちも顔が真っ赤だ。
なに?流行り病???
本気で心配になり周りを見渡そうとすると、
後ろから大きな手が伸びてきて、私の顔を覆った
「っ!」
いきなり真っ暗になった視界に驚く
「そんな顔を見せたらだめだよ、レイ。」
低い声が上から聞こえる。
この声はロイド、、?
ゆっくりその手を退かし、上を見上げる
上から覗き込むロイドの青い瞳は真っ直ぐにこちらを見ている。
、、すごく近いな。
「、、そんな顔?」
そんなに私は酷い顔をしていただろうか?
みんなに不快感を与えてしまったなら申し訳ない。
「うん、すごく可愛い顔をするからみんなが驚いてしまっただろ?」
、、、可愛い?
「え?誰が?」
「レイが」
私が可愛い顔?
何を言ってるのか。愛想がないとは散々言われ続けたけど可愛いなんて一回も言われたことない。
「ロイドって不思議なこと言うんだね?」
レイは100人に聞いたら100人が美人と答える容姿をしているにも関わらず、人と関わらなすぎてそれすらも自覚していなかった。
可愛いと言ってくれる両親も友達も彼氏もいなかったからか鈍感の鈍鈍無自覚美人へと成長してしまった。
「、、これは相当大変だな」
ロイドの小さな呟きはレイの耳へと届くことはなかった。
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