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第5話 回想 ディオンとの出会い(1)
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「クリステル。明後日から、旅行をしてみないかい?」
それは今から11か月前、私が寝込み始めてから1か月が経った頃のことでした。いつものように部屋まで消化に優しい食べ物を持って来てくれたお父様が、優しく微笑みました。
「隣国・イリュテは自然が豊かで、美味しい空気と素晴らしい景色を楽しむことができるんだよ。大自然に包まれれば、多少は気持ちが開放されると思う。どうかな? クリステルさえよければ、一緒に旅をしてみないかい?」
「……え……? お父様は来週、お忙しいと聞いていますが……?」
「ちょうど予定が全てキャンセルとなって、暇になってしまったんだ。こういう機会は滅多にないから、遠方に足を伸ばしてみようかなと考えていたんだよ。そんな時に友人の言葉を思い出し、イリュテ旅行を思い付いたんだ」
せっかく生まれた機会は、活かさないと勿体ないからね――。そんな言葉、さっきの言葉も全部、優しい嘘だと知っています。
お父様は私を誘うために急いで仕事を片付けてくれて、気を遣わせないようにそう言ってくださった。
その気持ちが、嬉しくないはずがありません。
だから私は頷き、そうして久しぶりに外出をすることになりました。
隣国までは、馬車で2時間と少し。久々にメイクをしてパジャマ以外を着た私は、
「クリステル。暇つぶしにカードゲームでもしないか?」
「はい。やりましょう」
車内でお父様と楽しい時間を過ごしながら移動して、そのおかげであっという間。体感では僅か数十分でイリュテに着き、3泊4日の旅が始まりました。
「ここは、『ヴィラルの滝』。なんと滝幅は72メートル、長さは121メートルもあるんだってさ」
「そんなにもあるんですね……っ。すごいです……っ」
「クリステル。そろそろ、お腹が空いてきた頃じゃないかな?」
「そうですね。移動も景色も楽しくって、久しぶりにお腹が空いています」
「はははっ、それはよかった。ではここで、プチピクニックをしよう。今日のランチは、こういうものを用意してあるんだ」
「これは…………お弁当……っ。もしかして、お父様が……?」
「うん、わたしの手作りだ。実は決まった日から、コッソリ練習してしていたんだよ」
「クリステル。この風車、どこかで見た事はないかな?」
「あります……っ。これと同じ風車を、小さな頃に絵本で見ましたっ。『サイドル大風車』ですよね?」
「正解。あの絵本の風車は、これをモデルにされたそうだよ」(……僕も早く、このくらい雄大な存在にならないとね)
「??? お父様、何か仰いましたか?」
「いいや、独り言だよ。あの風車は、中を見学できる。行ってみようか」
一緒に自然に触れたり、手作りのお弁当を食べたり、名所を観光したり。お父様のおかげで私の心はどんどん明るくなっていって、徐々に体調も良くなってきました。
そして、4日後――旅の最終日。最後のスポットとして訪れたラベンダー畑で私はそれこそ運命的な出会いを果たし、心身が快復することになるのです。
それは今から11か月前、私が寝込み始めてから1か月が経った頃のことでした。いつものように部屋まで消化に優しい食べ物を持って来てくれたお父様が、優しく微笑みました。
「隣国・イリュテは自然が豊かで、美味しい空気と素晴らしい景色を楽しむことができるんだよ。大自然に包まれれば、多少は気持ちが開放されると思う。どうかな? クリステルさえよければ、一緒に旅をしてみないかい?」
「……え……? お父様は来週、お忙しいと聞いていますが……?」
「ちょうど予定が全てキャンセルとなって、暇になってしまったんだ。こういう機会は滅多にないから、遠方に足を伸ばしてみようかなと考えていたんだよ。そんな時に友人の言葉を思い出し、イリュテ旅行を思い付いたんだ」
せっかく生まれた機会は、活かさないと勿体ないからね――。そんな言葉、さっきの言葉も全部、優しい嘘だと知っています。
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その気持ちが、嬉しくないはずがありません。
だから私は頷き、そうして久しぶりに外出をすることになりました。
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「クリステル。暇つぶしにカードゲームでもしないか?」
「はい。やりましょう」
車内でお父様と楽しい時間を過ごしながら移動して、そのおかげであっという間。体感では僅か数十分でイリュテに着き、3泊4日の旅が始まりました。
「ここは、『ヴィラルの滝』。なんと滝幅は72メートル、長さは121メートルもあるんだってさ」
「そんなにもあるんですね……っ。すごいです……っ」
「クリステル。そろそろ、お腹が空いてきた頃じゃないかな?」
「そうですね。移動も景色も楽しくって、久しぶりにお腹が空いています」
「はははっ、それはよかった。ではここで、プチピクニックをしよう。今日のランチは、こういうものを用意してあるんだ」
「これは…………お弁当……っ。もしかして、お父様が……?」
「うん、わたしの手作りだ。実は決まった日から、コッソリ練習してしていたんだよ」
「クリステル。この風車、どこかで見た事はないかな?」
「あります……っ。これと同じ風車を、小さな頃に絵本で見ましたっ。『サイドル大風車』ですよね?」
「正解。あの絵本の風車は、これをモデルにされたそうだよ」(……僕も早く、このくらい雄大な存在にならないとね)
「??? お父様、何か仰いましたか?」
「いいや、独り言だよ。あの風車は、中を見学できる。行ってみようか」
一緒に自然に触れたり、手作りのお弁当を食べたり、名所を観光したり。お父様のおかげで私の心はどんどん明るくなっていって、徐々に体調も良くなってきました。
そして、4日後――旅の最終日。最後のスポットとして訪れたラベンダー畑で私はそれこそ運命的な出会いを果たし、心身が快復することになるのです。
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