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第1話 こんな人とは喜んで別れましょう ヴィクトリア視点
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と、いうワケなんだ。僕は――僕らは真の愛に気付き、運命的な恋をして、それが成就した。となれば、結ばれるしかないだろう?」
「おねぇちゃん、ごめんなさ~い。運命的な恋なんだから、するっきゃないの~っ。あたし達を許してください。笑顔で祝福してくださいっ」
みたび唖然となっていると――ううん。唖然を通り越して乾いた笑みが勝手に浮かんできていると、2人が仲良く首を傾けてきた。
この人達、本当にすごいわね。ここまで自分たちの世界に入れる人って、そうそういないわよ。
「ごめんよ、ヴィクトリア。僕の中にある愛という名の感情は、もうメリッサ以外には注げないだ」
「うん、いいわよ。私ももう、貴方の愛は要らないから」
違う人を好きになったと熱弁された瞬間、この人への想いは泡沫(うたかた)のように消えた。今あるのは『私はどうして、こんな人に恋をしていたんだろう?』、ともう一つのとあることで、未練は一切ない。
「それって、退いて見守ってくれるってコトだよねっ? やったぁっ、ありがとうお姉ちゃんっ」
「……そうやって素ではにかめるメリッサって、ある意味大物よね……」
私はズキズキと痛み始めたこめかみを押さえてため息を吐き、そのあと、2人を交互に見る。
「? なにかな、ヴィクトリア」
「私はいいけど、それ以外の人はどうなってるの? お父様やおじ様達には、この件をちゃんと説明して許可は取っているの?」
結婚式まであと一か月で、ウェディングドレスや招待状など様々な準備がすでに進んでいる。中止になると様々なものが台無しになっちゃうし、お父様もおじ様も『一度誓ったなら絶対に曲げるな』が信条の人。
私を気遣ってくれて白紙にはなるけど、2人の結婚は認めてもらえるのかしら?
「ああ、勿論だとも。最初は即座に反対されて、メリッサと共に酷く怒鳴られてしまったけれど――。計5時間ほど根気強く愛を伝えたら、認めてくれたよ」
「あたし達の愛の大きさが、伝わったのっ。パパもおじ様も、涙を流してたよっ」
お父様もおじ様も、『コイツらはもう駄目だ』と思ったのね……。その心中、お察しするわ。
「それに式場や招待状については、何も問題ないんだよ。その日はすでに、僕達が結婚式を行う日になっているからね」
「ウェディングドレスも、オスカーの知り合いに頼んでオーダーメイドが間に合うようになってるんだよ~っ。1か月後がたのしみだねっ、オスカーっ」
2人はまたいちゃつきながら肩を寄せ合い、
「ヴィクトリアへの報告は、これで全部終わりだね。僕らは引っ越しの準備があるから、失礼するよ」
「今まで一緒に居られなかった分を取り戻すためにね、あたしは今日からオスカーの家で一緒に住むようになったの~っ。お姉ちゃん、これまでお世話になりました。寂しくなったら、会いに来てねっ」
それはもう幸せそうに指を絡ませ合って、仲良く並んで部屋を去った。
そうして、嵐が去ってから3分後。ヴィクトリアつきの護衛兼侍女がやって来て、右手の方向――2人がいるメリッサの部屋を睨みつけ、ガーターリングに忍ばせている投げナイフを手にとった。
「旦那様と奥様より、お聞きしました。今回のメリッサ様の言動は、過去最大級の酷さでございます。裏切り者と共に、少々お仕置きを致しましょうか……?」
「ありがとう、大丈夫よスザンヌ。結婚前にこういう事に気付けてよかったし、振り回してくれたお仕置きは勝手に起きると思うから」
「勝手に、でございますか? それは、どういう……?」
小首をかしげる、スザンヌ。私はそんな彼女に対し、苦笑交じりでこう告げたのだった。
「ずっと一緒に居るようになったら、相手の嫌な部分が見えてきてしまうものなのよ。……ああ見えて2人は意外と我が強いし、短所を個性として受け入れられる人じゃない。今の関係は、いつまでもつのかしらね」
「おねぇちゃん、ごめんなさ~い。運命的な恋なんだから、するっきゃないの~っ。あたし達を許してください。笑顔で祝福してくださいっ」
みたび唖然となっていると――ううん。唖然を通り越して乾いた笑みが勝手に浮かんできていると、2人が仲良く首を傾けてきた。
この人達、本当にすごいわね。ここまで自分たちの世界に入れる人って、そうそういないわよ。
「ごめんよ、ヴィクトリア。僕の中にある愛という名の感情は、もうメリッサ以外には注げないだ」
「うん、いいわよ。私ももう、貴方の愛は要らないから」
違う人を好きになったと熱弁された瞬間、この人への想いは泡沫(うたかた)のように消えた。今あるのは『私はどうして、こんな人に恋をしていたんだろう?』、ともう一つのとあることで、未練は一切ない。
「それって、退いて見守ってくれるってコトだよねっ? やったぁっ、ありがとうお姉ちゃんっ」
「……そうやって素ではにかめるメリッサって、ある意味大物よね……」
私はズキズキと痛み始めたこめかみを押さえてため息を吐き、そのあと、2人を交互に見る。
「? なにかな、ヴィクトリア」
「私はいいけど、それ以外の人はどうなってるの? お父様やおじ様達には、この件をちゃんと説明して許可は取っているの?」
結婚式まであと一か月で、ウェディングドレスや招待状など様々な準備がすでに進んでいる。中止になると様々なものが台無しになっちゃうし、お父様もおじ様も『一度誓ったなら絶対に曲げるな』が信条の人。
私を気遣ってくれて白紙にはなるけど、2人の結婚は認めてもらえるのかしら?
「ああ、勿論だとも。最初は即座に反対されて、メリッサと共に酷く怒鳴られてしまったけれど――。計5時間ほど根気強く愛を伝えたら、認めてくれたよ」
「あたし達の愛の大きさが、伝わったのっ。パパもおじ様も、涙を流してたよっ」
お父様もおじ様も、『コイツらはもう駄目だ』と思ったのね……。その心中、お察しするわ。
「それに式場や招待状については、何も問題ないんだよ。その日はすでに、僕達が結婚式を行う日になっているからね」
「ウェディングドレスも、オスカーの知り合いに頼んでオーダーメイドが間に合うようになってるんだよ~っ。1か月後がたのしみだねっ、オスカーっ」
2人はまたいちゃつきながら肩を寄せ合い、
「ヴィクトリアへの報告は、これで全部終わりだね。僕らは引っ越しの準備があるから、失礼するよ」
「今まで一緒に居られなかった分を取り戻すためにね、あたしは今日からオスカーの家で一緒に住むようになったの~っ。お姉ちゃん、これまでお世話になりました。寂しくなったら、会いに来てねっ」
それはもう幸せそうに指を絡ませ合って、仲良く並んで部屋を去った。
そうして、嵐が去ってから3分後。ヴィクトリアつきの護衛兼侍女がやって来て、右手の方向――2人がいるメリッサの部屋を睨みつけ、ガーターリングに忍ばせている投げナイフを手にとった。
「旦那様と奥様より、お聞きしました。今回のメリッサ様の言動は、過去最大級の酷さでございます。裏切り者と共に、少々お仕置きを致しましょうか……?」
「ありがとう、大丈夫よスザンヌ。結婚前にこういう事に気付けてよかったし、振り回してくれたお仕置きは勝手に起きると思うから」
「勝手に、でございますか? それは、どういう……?」
小首をかしげる、スザンヌ。私はそんな彼女に対し、苦笑交じりでこう告げたのだった。
「ずっと一緒に居るようになったら、相手の嫌な部分が見えてきてしまうものなのよ。……ああ見えて2人は意外と我が強いし、短所を個性として受け入れられる人じゃない。今の関係は、いつまでもつのかしらね」
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