婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず

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第2話 夢のような楽しい時間と、はじめてのモヤっと 俯瞰視点(2)

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「ああ、そうだよ。開封も設置も、ぜんぶ僕ら2人でやるんだよ」

『え……。あ、あれ……? 残りの引っ越し作業って、あたし達だけでやるの……?』。そんな大きな困惑を伴った質問に、オスカーは即答しました。

「な、なんで……っ? ど、どして、なの……っ?」
「それは勿論、他の人間に邪魔をされたくないからさ。ここは君の新たな自室、そんな場所は2人の手で染めないとね。使用人や従者、侍女の手は借りられないよ」

 大切な場所だからこそ、一から十まで自分達の手で行いたい。オスカーは費用の削減などではなく、純粋な想いによってそう口にしていました。
 ですが――。
 そんな想いを聞いても、メリッサの顔は笑顔にはなりません。曇ったままで、フルフルと首が左右に振られました。

「お荷物はたくさんあって、2人でやってたら夜になっちゃうよ~っ。まだ下には業者さんとかも居るんだし、お願いしよ~よっ」

 メリッサは、力仕事が大嫌い。腕や足が疲れる行動は嫌で、そんな提案は有難迷惑でしかありませんでした。

愛用してるあたしのベッドはもう運び込まれてるんだしっ、ついでにお任せしちゃおうよ~っ。ココであたし達が一緒にいれば、あたし達色で染まっていくしさ~っ。ねっ、そ~しよっ?」
「いや。ベッドは運び込んでしまった、だからこそなんだよ。これ以上他人の手が加わってしまうと、『聖域』ではなくなってしまう気がするんだ。すまないが、僕のワガママを受け入れて欲しい」

 かわいらしく顔の前で両手を合わせると、今度は苦々しい顔が返ってきます。
 メリッサの言うことは、何でも聞いてあげたい。けれど、ソコはどうしても譲れない――。オスカーは心の中で葛藤しており、先程メリッサがしたように、首を左右に振りました。

「最初は、肝心なんだよ。頼むよ、メリッサ」
「…………オスカー。オスカーのお気持ちは、嬉しいよ」
「メリッサ……っ! ありがと――」
「でもでもね、こ~ゆ~トコは効率重視でい~と思うの。こんな部分はパパパ~っとやっちゃって、他の部分で愛を深めあお?」

 オスカーは一瞬ぱぁっと顔が明るくなりましたが、帰ってきたのは再び左右への首振り。拒否の拒否を更に拒否し、引っ越し作業は停滞してしまいました。


 オスカーとメリッサ。どちらかの案を選択しないと、この問題は先には進みません。


 ですが2人とも、自らの主張を訴え続けます。
 いったい――。この問題は、いつ決着がつくことになるのでしょうか……?

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