婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました

柚木ゆず

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第9話 楽しいはずの時間は、悪い一面によって台無しとなってゆく 俯瞰視点(2)

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「………………ハルク。今日は、もう帰ろうと思う」
「………………ねーリーン。今日はもぅ、帰ろっかなぁ」

 そっぽを向いて、ムスッとしていたオスカーとメリッサ。予約していたお店まであと少しという地点で、2人は二十数分振りに言葉を発しました。

「こんな状態で食事をしても、美味くはない。御者に指示を出してくれ」
「楽しくない時のご飯は、美味しくないもん。もぅ帰る」
「おっ、お待ちください我が主! どうかお考え直しを……!!」
「メリッサお嬢様、落ち着いてください……っ。折角ですし……っ。お食事をしましょうよ……っ」

 このまま戻ってしまうと、修正は不可能になってしまう――。そう悟ったハルクとリーンは即座に反応し、左右に大きく首を振りました。

「こたびの延期は、愛があるが故、でございます……っ。むしろこの出来事は、お二人の愛が強い、という証拠でございますよ……っ!」
「ハルクさんのおっしゃる通りで、こちらは逆に、喜ぶべき出来事ですっ! 最高のものを自分と相手で持ちたい。そういったお気持ちを抱かれているが為の事ですからっ。素敵な事でして、予定通りランチやその他のショッピングを楽しむべきでございます……!!」
「だが……」「だけどぉ……」
「「わたしは(わたくしは)、この発言に自信を持っております……!! 我が主(メリッサお嬢様)……っ!! 是非……!!」」

 ハルクとリーンは、主想いの人間。そのため必死になって訴え、

「そ、そうか……? わ、分かった。そう言うのなら、続けよう」
「わ、わかったよリーン。そこまで言うんだったら、ランチしたりお洋服を見たりするよ」

 メリッサとオスカーはその尋常ではない圧に押され、中止は中止。予定通り、行われることになりました。

(ふぅ、よかった。食通を唸らす名店のランチと、お二人が大好きなショッピング。これらがあれば、持ち直せそうですね)
(ええ。コース料理ですから言い合いをする要素はありませんし、ご自分の服を選ばれるため揉める要素はありません。これが切っ掛けとなって、関係は無事戻りそうですね)

 現地に到着し馬車から降り立った2人は再び、オスカーとメリッサの死角で目配せを送り合います。
 ですが――。そんな予想は、再び外れることになります。
 しかも、今回の予想外は――。関係崩壊の、決定打となってしまうのでした。

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