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第7話 今宵のパーティーは、理不尽とストレスが多め エリック視点 (1)
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時は、午後の6時半頃。場所は、ワーズ卿所有の大きな屋敷。件のパーティーが幕を開け、俺はリナと共に参加をしていた。
『ミオファ君、サーハル君も、来てくれて嬉しいよ。今夜は無礼講、必要なものは最低限のマナーのみ。この空間では身分を忘れ、宴を楽しんでくれたまえ』
『ワーズ卿、ありがたきお言葉。今宵はリナと共に、素敵な一時に浸らせていただきます』
『おおミオファ殿、サーハル殿も、久方ぶりですな。こうして言葉を交わすのは、お二人の婚約発表以来ですな』
『そうですね、オータス卿。あの日はわざわざ遠方よりお越しくださり、改めて感謝をさせていただきます』
主催者であるワーズ公爵は、お喋りがお好きな御方。そのためパーティーは言葉通り、堅苦しいやり取りは一切なしの立食スタイル。
通常のパーティーとは違って、最低限のマナーの一つ――一通りの挨拶を終えると、あとはもう自由。各々が好きなように動き、好きな相手と好きなだけ喋り、好きな食べ物を好きなだけ食べていい。
意外かもしれないが、貴族でも――いや、貴族だから、なのだろう。堅苦しい席が苦手な者は老若男女問わず多く、そういう人々は特に声を弾ませ満喫している。
((かくいう俺も、同類。何気にこの会は毎回楽しみにしている、のだが……))
あいにく、というか、腹立たしい事に。いつものように、心から楽しめそうにはない。
なぜならば、
「………………………………」
隣にいるリナが、ムスッとしているから。
馬車で迎えに行った時も、到着した時も、控え室で化粧を直していた時も。ずっと機嫌がよかったのに、挨拶をしている途中からそういう色が覗くようになった。
他貴族と言葉を交わしている時は笑顔なのに、二人きりになるとすぐこうなる。こんな状態になるのは出会ってから初めてで、一体なんなんだ……?
(リナ、なにかあったんだよね? どうしたのかな?)
周りには人が沢山いるので、小声で確認をしてみる。
リウと違って、お前の不満げな顔は只々不快なんだ。特別に要望を聞いてやるから、さっさとのその不細工なツラを引っ込めろ。
「………………………………」
(リナ、遠慮なく言ってよ。どうしたの、かな?)
いつまでもそんな風にしてたら俺が楽しめないし、貴族達に仲良しアピールができないだろ。
いつものように、とっとと従え。操り人形らしく、大人しく操られていろ。
「………………………………エリックさん」
はぁ、やっと口を開いた。
ワガママ女は、何を思われているんですかねえ? このわたくしめに、何を希望なされるんですかねえ?
(うん。なんだい、リナ?)
「………………エリックさんに、お話があります。一緒に、控え室に来てください」
顔を覗き込むとヤツはムスッとしたまま、踵を返して会場を出ていってしまった。
……は? あの女、独りで勝手に出て行ったぞ!?
((っっ、なんて自分勝手なヤツなんだ……。今すぐ怒鳴りつけて、戻ってこさせたいが……))
人目があるから実行できないし、アイツがこんな態度を取るのは初めてだ。恐らく下手に出ておかないと、もっと面倒な事態に陥りかねない。
((なんで俺が、あんな女に――と言っても仕方ないな……っ。とにかく従っておくか……っっ))
怒りが半分で、不安が半分。奇妙な心境で俺は小さく舌打ちを行い、操り人形のあとを追ったのだった。
『ミオファ君、サーハル君も、来てくれて嬉しいよ。今夜は無礼講、必要なものは最低限のマナーのみ。この空間では身分を忘れ、宴を楽しんでくれたまえ』
『ワーズ卿、ありがたきお言葉。今宵はリナと共に、素敵な一時に浸らせていただきます』
『おおミオファ殿、サーハル殿も、久方ぶりですな。こうして言葉を交わすのは、お二人の婚約発表以来ですな』
『そうですね、オータス卿。あの日はわざわざ遠方よりお越しくださり、改めて感謝をさせていただきます』
主催者であるワーズ公爵は、お喋りがお好きな御方。そのためパーティーは言葉通り、堅苦しいやり取りは一切なしの立食スタイル。
通常のパーティーとは違って、最低限のマナーの一つ――一通りの挨拶を終えると、あとはもう自由。各々が好きなように動き、好きな相手と好きなだけ喋り、好きな食べ物を好きなだけ食べていい。
意外かもしれないが、貴族でも――いや、貴族だから、なのだろう。堅苦しい席が苦手な者は老若男女問わず多く、そういう人々は特に声を弾ませ満喫している。
((かくいう俺も、同類。何気にこの会は毎回楽しみにしている、のだが……))
あいにく、というか、腹立たしい事に。いつものように、心から楽しめそうにはない。
なぜならば、
「………………………………」
隣にいるリナが、ムスッとしているから。
馬車で迎えに行った時も、到着した時も、控え室で化粧を直していた時も。ずっと機嫌がよかったのに、挨拶をしている途中からそういう色が覗くようになった。
他貴族と言葉を交わしている時は笑顔なのに、二人きりになるとすぐこうなる。こんな状態になるのは出会ってから初めてで、一体なんなんだ……?
(リナ、なにかあったんだよね? どうしたのかな?)
周りには人が沢山いるので、小声で確認をしてみる。
リウと違って、お前の不満げな顔は只々不快なんだ。特別に要望を聞いてやるから、さっさとのその不細工なツラを引っ込めろ。
「………………………………」
(リナ、遠慮なく言ってよ。どうしたの、かな?)
いつまでもそんな風にしてたら俺が楽しめないし、貴族達に仲良しアピールができないだろ。
いつものように、とっとと従え。操り人形らしく、大人しく操られていろ。
「………………………………エリックさん」
はぁ、やっと口を開いた。
ワガママ女は、何を思われているんですかねえ? このわたくしめに、何を希望なされるんですかねえ?
(うん。なんだい、リナ?)
「………………エリックさんに、お話があります。一緒に、控え室に来てください」
顔を覗き込むとヤツはムスッとしたまま、踵を返して会場を出ていってしまった。
……は? あの女、独りで勝手に出て行ったぞ!?
((っっ、なんて自分勝手なヤツなんだ……。今すぐ怒鳴りつけて、戻ってこさせたいが……))
人目があるから実行できないし、アイツがこんな態度を取るのは初めてだ。恐らく下手に出ておかないと、もっと面倒な事態に陥りかねない。
((なんで俺が、あんな女に――と言っても仕方ないな……っ。とにかく従っておくか……っっ))
怒りが半分で、不安が半分。奇妙な心境で俺は小さく舌打ちを行い、操り人形のあとを追ったのだった。
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