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第12話 再会と、その先にあるもの リナ視点 (1)
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「リナ、おかえり。レオ様がいらっしゃっているぞ」
「こんばんは、お邪魔しています」
閣下と共に家に戻ると馬車が停まっていて、客間に入ると正装に身を包んだ男の人が椅子から立ち上がりました。
背が高くて、やや細身で、サラサラの髪が肩まで伸びていて。ブルーの瞳はとても優しげで、爽やかな雰囲気を纏っている人。
この人は、あの美少年さん。何度か報告に来てくださっていた、あの人です……。
「レオとして会うのは、12年ぶりだね。お久しぶりです、リナちゃん」
「そ、その呼び方は、レオ様なんですけど……。え……? あれ……? すみません、本当にあのレオ様なのですよね……?」
姿と雰囲気が、全く違っています。
体型が違うのは納得できるのですが、目付きと纏っている空気が別人。自信がなかった瞳には落ち着きと頼もしさがあって、閣下とは性質が違いますが、覇気を感じます。
確かに初めてお会いした日、不思議な感覚はありましたが……。この方が、あのレオ様……?
「うむ。そこにいる男は正真正銘、我が息子のレオだ。こやつはあの騒動後、一皮も二皮も剥けたのだよ」
「……僕を守るために兄に立ち向かってくれて、そのせいでリナちゃんは性格が変わってしまった。僕のせいで、大きな迷惑をかけてしまった」
レオ様は、私の背後を――当時問題が起きた部屋を見やり、自分自身に対して呆れのため息を吐いた。
「あの日お喋りをして君の優しさに触れ、大好きな人となっていたのに。あの頃の僕には何の力もなくて、愛する人を守れなかった。兄達の前では泣いているだけで、性格が変わったと知った時もショックを受ける事しかできなかったんだよ」
「……レオ様……」
そう、だったんだ。
そんな風に想ってくれていて、そんな風に思ってくれていたんですね。
「僕はそんな自分が情けなくて、その日決意をしたんだ。大好きな人の体も心も守れるように、『強く』なろうと決めたんだよ」
「あの日からこやつは勉学や運動に打ち込み、その熱心さは常識を逸脱していた。周りが止めても一切休もうとはせず、たった一年で今の体型になるほどだったよ」
兄様達にバカにされちゃうから痩せたいけど、痩せにくい体質みたいなんだ。そう仰っていたのに、何十キロも落ちた。
想像を絶するような努力を、されたのですね。
「僕には才がまるでなく、強くなるには人一倍の努力が必要だったんだよ。だから睡眠や食事の時間以外を費やす必要があって、だから――。やがて、国外に修行に出る事になるんだ」
「こやつは貪欲でな、更なる高みを目指すべくあらゆる場所であらゆるものを吸収していった。君の心を守る為に、政治学、帝王学、経済学を。君の体を守る為に、剣術体術など。レオは約十年をかけて目的のものを全て体得し、二週間前に『次期当主』として戻ってきたのだよ」
貴族の家庭は大抵長男が次の当主を担うようになっていて、しかもアルク様とサイズ様はとても優秀。謝罪に来てくださった時は目の色が変わっていて、今では多くの方に慕われ支持されています。
にもかかわらず、閣下がお選びになられたということは。そういうこと、なのですね。
「リナ。レオ様は帰国されたら――自分が納得できる人間になれたら、お前に告白をされる予定だったそうだ。けれどその時には、すでにエリックがいた」
「僕は、リナちゃんが幸せならそれでよかった。彼の評判はとても良いとも聞いたし、陰から見守ろうと決めたんだ。……だけど、そうもしてはいられなくなった」
私の見る目がなく、下心を見抜けませんでした。自分はともかくとして、お父様と葡萄畑――お母様とも思い出が、大変なことになりかけていました。
「その報告を聞くやレオは動き出し、先頭に立って情報の収集を行ったのだよ。あの手際は、暗部も真っ青な程だったな」
「レオ様が迅速に動いてくださったから、あそこまで早く疑惑が確信となっていたんだ。レオ様は本当に、頼もしい存在でした」
「いえ、そこまでの者ではありませんよ。僕にも、甘さと油断がありましたからね」
お父様の感謝の目線を受け取ったレオ様は、即座にかぶりを振りました。
思い返せば数日前に、責任は『例外にある』と仰っていましたよね。それは、どういうことなのでしょうか……?
「こんばんは、お邪魔しています」
閣下と共に家に戻ると馬車が停まっていて、客間に入ると正装に身を包んだ男の人が椅子から立ち上がりました。
背が高くて、やや細身で、サラサラの髪が肩まで伸びていて。ブルーの瞳はとても優しげで、爽やかな雰囲気を纏っている人。
この人は、あの美少年さん。何度か報告に来てくださっていた、あの人です……。
「レオとして会うのは、12年ぶりだね。お久しぶりです、リナちゃん」
「そ、その呼び方は、レオ様なんですけど……。え……? あれ……? すみません、本当にあのレオ様なのですよね……?」
姿と雰囲気が、全く違っています。
体型が違うのは納得できるのですが、目付きと纏っている空気が別人。自信がなかった瞳には落ち着きと頼もしさがあって、閣下とは性質が違いますが、覇気を感じます。
確かに初めてお会いした日、不思議な感覚はありましたが……。この方が、あのレオ様……?
「うむ。そこにいる男は正真正銘、我が息子のレオだ。こやつはあの騒動後、一皮も二皮も剥けたのだよ」
「……僕を守るために兄に立ち向かってくれて、そのせいでリナちゃんは性格が変わってしまった。僕のせいで、大きな迷惑をかけてしまった」
レオ様は、私の背後を――当時問題が起きた部屋を見やり、自分自身に対して呆れのため息を吐いた。
「あの日お喋りをして君の優しさに触れ、大好きな人となっていたのに。あの頃の僕には何の力もなくて、愛する人を守れなかった。兄達の前では泣いているだけで、性格が変わったと知った時もショックを受ける事しかできなかったんだよ」
「……レオ様……」
そう、だったんだ。
そんな風に想ってくれていて、そんな風に思ってくれていたんですね。
「僕はそんな自分が情けなくて、その日決意をしたんだ。大好きな人の体も心も守れるように、『強く』なろうと決めたんだよ」
「あの日からこやつは勉学や運動に打ち込み、その熱心さは常識を逸脱していた。周りが止めても一切休もうとはせず、たった一年で今の体型になるほどだったよ」
兄様達にバカにされちゃうから痩せたいけど、痩せにくい体質みたいなんだ。そう仰っていたのに、何十キロも落ちた。
想像を絶するような努力を、されたのですね。
「僕には才がまるでなく、強くなるには人一倍の努力が必要だったんだよ。だから睡眠や食事の時間以外を費やす必要があって、だから――。やがて、国外に修行に出る事になるんだ」
「こやつは貪欲でな、更なる高みを目指すべくあらゆる場所であらゆるものを吸収していった。君の心を守る為に、政治学、帝王学、経済学を。君の体を守る為に、剣術体術など。レオは約十年をかけて目的のものを全て体得し、二週間前に『次期当主』として戻ってきたのだよ」
貴族の家庭は大抵長男が次の当主を担うようになっていて、しかもアルク様とサイズ様はとても優秀。謝罪に来てくださった時は目の色が変わっていて、今では多くの方に慕われ支持されています。
にもかかわらず、閣下がお選びになられたということは。そういうこと、なのですね。
「リナ。レオ様は帰国されたら――自分が納得できる人間になれたら、お前に告白をされる予定だったそうだ。けれどその時には、すでにエリックがいた」
「僕は、リナちゃんが幸せならそれでよかった。彼の評判はとても良いとも聞いたし、陰から見守ろうと決めたんだ。……だけど、そうもしてはいられなくなった」
私の見る目がなく、下心を見抜けませんでした。自分はともかくとして、お父様と葡萄畑――お母様とも思い出が、大変なことになりかけていました。
「その報告を聞くやレオは動き出し、先頭に立って情報の収集を行ったのだよ。あの手際は、暗部も真っ青な程だったな」
「レオ様が迅速に動いてくださったから、あそこまで早く疑惑が確信となっていたんだ。レオ様は本当に、頼もしい存在でした」
「いえ、そこまでの者ではありませんよ。僕にも、甘さと油断がありましたからね」
お父様の感謝の目線を受け取ったレオ様は、即座にかぶりを振りました。
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