困った時だけ泣き付いてくるのは、やめていただけますか？

第８話 愚者のその後～その１～ 俯瞰視点

「うがああああ!!　なぜ俺がこんな目にぃぃぃいいいいいいいいいいいい!!」

　あれから一週間後。サンテールズと呼ばれる閑静な土地、その中にある豪華な建物の中で、ひもじい姿をした男が叫び回っていました。
　彼の名前は、ケヴィック。つい一週間前まで大商会の会頭であり、男爵家の当主を務めていた人間です。

「生まれも育ちも貴族な俺がぁあああああ!!　平民以下のっっ！　下等以下の環境で生きていかなければならないんだぁああああああああああああああ!!」

　服はかつてとは異なり、ボロボロのシャツとズボン。
　住居はかつてとは異なり、古いベッドがある狭い寝室一部屋だけ。
　食事はかつてとは異なり、夕食はパンとスープとちょっとしたサラダのみ。

　何もかも、１８０度の変化。ケヴィックがこれらに我慢できるはずがなく、彼は事あるごとに怒り狂っていたのです。

「ヴィッケルっ、アルセっ、ダニエルっ、ジョインっ、ライオっ、マイクっ、レイクっ、ハイルっ、トム!!　ルシアン!!　エリオッツ!!　アン!!　ゆるさんぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

　空になったボウルを壁に投げつけ、手に持っていたスプーンを床にたたきつけ、さらに大絶叫。今夜も『元フェリルーザ家の別邸』には非常にやかましい怒声が響き渡り、ケヴィックの生ある限り、こういった日々が続く――

　ことには、なりません。

　その、数日後のことでした。

「……………………。え……？」

　ケヴィックの日常に突然、彼が予想だにしないとある変化が起きることとなるのでした。