隣にある古い空き家に引っ越してきた人達は、10年前に縁を切った家族でした

柚木ゆず

文字の大きさ
21 / 24

第12話 ピリオド ジュリエット視点(2)

しおりを挟む
「……そん、な……」
「……そんな……」
「……そ、んな……」
「ジュリエットちゃんも僕も、過去は水に流すつもりだった。何もしなければこの家で暮らせていました。僕らがいなくなったあとに何があったか分かりませんが、また全てを失う羽目になりましたね」

 この方々は、何もないのに地位を手放しはしません。10年の間に2回も、大きな大きな選択ミスをしてしまいました。

「あの頃も今も、ジュリエットちゃんの忠告を聞いていればよかったのに。残念でしたね」
「………………」
「………………」
「………………」
「これ以上話すことはありませんし、ジュリエットちゃんも――彼女も、ないようです。この者達の連行をおねがいしま――」
「リーリス!! 許してくれ!!」
「リーリス! 許してちょうだいっ!」
「お姉様っ! チャンスをください!」

 呆然棒立ちとなっていた3人が両膝をつき、胸の前で手を組みました。

「あの頃も今もっ、本当に酷い真似をしてしまった!! ようやく己の行いに気付いたのだっ!! 心から反省していてっ、おっ、恩返しをさせていただきたいと思っているのだよっ! この身体も心もっ、お前のために使いたいのだ!! ほっ、ほらっ、牢の中に居ては使えないだろう!? 外でっ、お前――いや貴方の傍で使えるようにしてほし――いただきたいのです!!」
「過去と今のお詫びをさせて欲しいんです!! 後悔はさせませんから!! どうかっ、どうか寛大な御決断を!!」
「私もっ、お姉様のためにこの人生の全てを使うと誓います!! 手となり足となりっ、お姉様の人生がさらにさらに良いものになるよう粉骨砕身で行動すると誓います!! させてっ、ください!!」

 ……御三方には、改めて驚かされますね。
 今更挽回できると思っているだなんて、本当にビックリです。

「わたしの隣には、とても頼りになる大好きな人がいます。貴方がたは要りませんよ」
「そっ、そう仰らずに!! かっ、家族の最初で最後の懇願を聞いてください!!」
「くださいっ!」
「くださいっ!」
「……10年前のあの時から、貴方がたは家族ではありませんよ」

 苦言を聞き入れない件はともかくとして、自らが招いた事態の穴埋めのためにガスパールくんを――旧友に託された子を、とんでもない人間に売ろうとしていた。
 そんな真似をする人は、父でも母でも妹でもありません。

「永遠に、さようなら」
「だ、そうです。……お願いします」
「「リーリス!! リーリス!! リーリスううううううううう!!」」
「お姉様!! お姉様!! お姉様ぁあああああああああああ!!」

 何度呼んでも、意思が変わるはずがありません。お三方は控えてくださっていた治安機関の方々によって引きずられていき、やがてその声は聞こえなくなったのでした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら

つちのこうや
恋愛
牢獄の妹に向けた手紙を書いてみる話です。 すきま時間でお読みいただける長さです!

私から婚約者を奪う為に妹が付いた嘘…これにより、私の人生は大きく変わる事になりました。

coco
恋愛
私から婚約者を奪う為、妹が付いた嘘。 これにより、後の私の人生は大きく変わる事になりました─。

だって悪女ですもの。

とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。 幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。 だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。 彼女の選択は。 小説家になろう様にも掲載予定です。

魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。

星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」 涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。 だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。 それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。 「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」 「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」 「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」 毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。 必死に耐え続けて、2年。 魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。 「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」 涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

本当は幼馴染を愛している癖に私を婚約者にして利用する男とは、もうお別れしますね─。

coco
恋愛
私は、初恋の相手と婚約出来た事を嬉しく思って居た。 だが彼は…私よりも、自身の幼馴染の女を大事にしていて─?

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

処理中です...