悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?

柚木ゆず

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4話(2)

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「ええと…………あったあった。あとはこれを使って、はい開いた」

 先輩は室内にある机の鍵を別の合鍵で開け、その中にあった箱の鍵を更に別の合鍵で開けた。
 この人……。一体いくつ合鍵を持ってるんだろ……。

「ん? 俺の手際に惚れちゃったのかな?」
「アナタは、鍵を使って普通に開けただけです。そんなことになるはずはありませんよで、その中には何が入ってるんですか?」
「ここの中で保管されているのは、こいつ。マリナ・アリウの、逮捕状だよ」

 長方形の紙には姉さんの悪事の数々が詳細に記されていて、所長の判も捺されてる。これ、本物の公式書類だ……っ。

「王太子が彼女を気に入って、隠蔽する前に作成されたものだね。この時はまだ庇護がなく、更には国王の怒りを激しく買っていた――国王のお気に入りに、手を出していたからね。一秒でも早くきっちりと裁けるように、実は即作られていたんだよ」
「ど、どうしてこんなものが、ここに……? 万が一見つかったら大変なのに、どうして綺麗なままあるの……?」

 その罪は全部あたしに押し付けられていて、これがあったら大問題になっちゃう。あまりに予想外なことで、頭の中がハテナマークだらけになった。

「? ?? なんで……?」
「それは、副所長であるバージヤ・ハオスが破棄しなかったから。彼はあの手この手を使って処分を担当する係となり、しかしながら――。とある不満があったが故に、処分はしなかったんだよ」

 ニヤリ。ユリオス先輩はもう一度、入室時に見せた嘲笑を浮かべた。

「王太子レビンは 治安所に対し・・・・・・、マリナの罪をエステルにすり替えさせるよう指示をした。そしてその報酬として――口止め料としてレビンは多額の金を与えたのだけれど、トップとその他の差が少々大きかった。下の者はともかくとして、ナンバー2にとっては不満が残る形となってしまったんだ」
「そっか……。だから副所長は……」
「偽装のもととなるものを保管し、それを使って自分も大金を手に入れようと画策していた。被害者の一人は隣国の有力貴族と深く繋がっていて、王家による隠蔽がバレると国際問題に発展しかねないからね。強力な脅迫材料を、捨てずに隠し持ってたんだよ」

 他国が関わったら王族でも揉み消せなくって、それを防ぐためなら出し惜しみをしない。所謂金の生る木だから、ここにあったんだ。

「レビンに『ケチった』つもりはないんだろうけど、彼は自分の感覚で決めてしまった。もしレビンが副所長の性格を加味して渡していたら、副所長が金を望む未来はなかった――こうして、逃れられない証拠を発見される未来はなかった。俺のようにきっちりと振る舞っていたら、大勝利だったのにねえ」
「やっぱり姉さんの時と同じで、悪い事をすればしっぺ返しが来るんですね……っ。先輩、これがあればっ!」
「とてつもなく、面白い事になる。俺の記憶が確かなら…………これを使った反撃は、明日の午前9時に行うのが効果的。エステル、その時を楽しみに」

 そうしてあたし達は書類を持って先輩の家に戻り、翌日を待つことになりました。
 さっきの先輩は、ものすごく狡猾な顔をしてた。だとしたらきっと、平凡な形じゃ終わらない。
 あたしは今度こそ姉さんの最期の姿を見るべく、いつもとは違い柔らかいベッドで眠りについたのでした――。
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