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第19話 全部解決 真鈴視点(2)
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「北山裕介さん、そして奈々子さんと春斗さんを助けられたのは、市川さんが協力してくださったおかげです。ずっと力をかしてくださり、ありがとうございました」
お店を出て、二人きりになってすぐ。水前寺くんは姿勢を正して、お手本みたいな90度のお辞儀をしてくれた。
「嫌な思いをさせてしまうことになったのに、それでも嫌な顔をひとつせず協力してくださりました。市川さんがいなかったら、誰も救えていません。心から感謝しています」
「もう、なんで良いことをしてる水前寺くんが謝るのかな。ほんと、面白い人だよ」
そして、すごい人。
「こっちこそ、ありがとう。このポカポカしてる気持ちは、水前寺くんと出会わなかったらなかったんだもん。幸せな気持ちにさせてくれて、感謝してます」
「市川さん……」
「自分達の力で悲しんでいる人を救えるって、こんなに嬉しくって気持ちのいいことだったんだね。全然知らなくって、気付けてよかったよ」
水前寺くんが転校してこなかったらきっと、知らないままだったんだろうね。
ちゃんと知れて、よかった。
「だからね、こんなことを思ってるんだ」
「? なんでしょう……?」
「これからも幽霊助けをしたいな、って」
きっと世の中には、たくさんの困っている幽霊がいる。そんな幽霊を助けたい、って思ってる。
「始まりは『水前寺くんを助けたい』だけだったけど、今はソレだけじゃなくって『あの笑顔をもっと見たいな』って気持ちがあるんだ。美緒ちゃんや裕介さんみたいな幽霊がいるのなら、探して見つけて笑えるようにしてあげたい」
「市川さん……!」
「そうするには、幽霊が見えるだけじゃ駄目。声が聞こえる人がいてくれなきゃいけなくってさ。……水前寺くん」
目の前にある真っすぐな黒い瞳を見つめて、右手を差し出す。
((夏休み中の私が見たら、きっとビックリするよね))
私自身も、こんな気持ちになるなんて思いもしなかった。幽霊が関係していたら、すぐ知らんぷりをするつもりでいた。
でも。
こんな人と出会っちゃったから。動きたくなっちゃったんだよね。
「これからも一緒に、活動しませんか?」
「喜んで!! 是非お願いします!!」
ふふ。こんなとこも、水前寺くんらしい。
言い終わった瞬間『幸せ』がたくさん詰まった大きな声が聞こえてきて、両手でギュッと手を握ってくれたのでした。
お店を出て、二人きりになってすぐ。水前寺くんは姿勢を正して、お手本みたいな90度のお辞儀をしてくれた。
「嫌な思いをさせてしまうことになったのに、それでも嫌な顔をひとつせず協力してくださりました。市川さんがいなかったら、誰も救えていません。心から感謝しています」
「もう、なんで良いことをしてる水前寺くんが謝るのかな。ほんと、面白い人だよ」
そして、すごい人。
「こっちこそ、ありがとう。このポカポカしてる気持ちは、水前寺くんと出会わなかったらなかったんだもん。幸せな気持ちにさせてくれて、感謝してます」
「市川さん……」
「自分達の力で悲しんでいる人を救えるって、こんなに嬉しくって気持ちのいいことだったんだね。全然知らなくって、気付けてよかったよ」
水前寺くんが転校してこなかったらきっと、知らないままだったんだろうね。
ちゃんと知れて、よかった。
「だからね、こんなことを思ってるんだ」
「? なんでしょう……?」
「これからも幽霊助けをしたいな、って」
きっと世の中には、たくさんの困っている幽霊がいる。そんな幽霊を助けたい、って思ってる。
「始まりは『水前寺くんを助けたい』だけだったけど、今はソレだけじゃなくって『あの笑顔をもっと見たいな』って気持ちがあるんだ。美緒ちゃんや裕介さんみたいな幽霊がいるのなら、探して見つけて笑えるようにしてあげたい」
「市川さん……!」
「そうするには、幽霊が見えるだけじゃ駄目。声が聞こえる人がいてくれなきゃいけなくってさ。……水前寺くん」
目の前にある真っすぐな黒い瞳を見つめて、右手を差し出す。
((夏休み中の私が見たら、きっとビックリするよね))
私自身も、こんな気持ちになるなんて思いもしなかった。幽霊が関係していたら、すぐ知らんぷりをするつもりでいた。
でも。
こんな人と出会っちゃったから。動きたくなっちゃったんだよね。
「これからも一緒に、活動しませんか?」
「喜んで!! 是非お願いします!!」
ふふ。こんなとこも、水前寺くんらしい。
言い終わった瞬間『幸せ』がたくさん詰まった大きな声が聞こえてきて、両手でギュッと手を握ってくれたのでした。
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