見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず

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第3話 理由 真鈴視点(3)

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「……見える? 本当なんですかっ!?」
「本当だよ。ごめんね。小学生の頃に色々あって、言わないようにしてたんだ」

 そっちが教えてくれたんだから、こっちも教えないと不公平。引っ越しする前の場所であったアレコレを、全部説明した。

「そうでしたか……。だからあの時……」
「そ、同じような思いをして欲しくなかったんだ。あの頃はめちゃくちゃ辛かったから」

 親友だと思っていた子たちが離れていって、他の人たちもできるだけ私と話しをしないようにする。あの頃は朝起きたら時間が巻き戻ってないか確認をして落ち込んで、学校から帰ってきたら毎日泣いてたっけ。

「中学校生活を台無しにしたくなかったから、水前寺くんが聞いてきても知らないフリをするつもりだった。でも、無理だったよね。こんな人が目の前にいるんだもん」

 困っている人がいたら、助けたいじゃないですか。
 サラッと言えちゃう人なんて、いないよ。

「私もじっとしてられなくなっちゃった。幽霊助け、協力するよ」

 私は、幽霊の姿を見える。私が一緒だったら、騙されたりしない。

「ありがとうございます! ありがとうございます……!」
「なんで水前寺くんが嬉し泣きしそうになってるの。ほんと、変わってるよね」

 悪い意味じゃなくって、とっても良い意味で。ヘンな人。

「ますます、言ってよかったと思ってるよ。ええっと……。協力って、どんな風にすればいいのかな? 困っている幽霊って、今もいるの?」
「はい、います。現在4人、助けを求めている幽霊を知っています」

 見える人に出会えた時はすぐ助けられるように、放課後や休みの日にウロウロしてたみたい。水前寺くんが元々住んでた隣街に2人、この街に2人見つけてるそう。

「この街で見つけた2人の幽霊は、どちらも僕の家の近く――学校から、30分以内のところにいるんです。放課後空いている日がありましたら、判断をしに一緒に来てもらいたいです」
「30分、ね。だったら、今日でいいよ」

 今日は午後に先生の会議があって、5時間目で授業は終わりになる。下校がいつもより早いから寄り道しても大丈夫。
「助かりますっ。市川さん、ありがとうございます! よろしくお願いします!」
「だーかーらー、そんなに感謝しなくていいってば。……ふふ。うん、よろしくお願いします」

 とにかく嬉しそうに右手を差し出してきた、水前寺くん。そんな彼に頷きを返して、その手をしっかりと握ったのでした。


 9月1日、新学期1日目。
 わたしは4年ぶりに幽霊が見えることを明かして、人生で初めて幽霊助けをすることになったのでした。

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