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第4話 幽霊チェック 真鈴視点(1)
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「そうそう真鈴、真鈴に見せたいコスメがあるんだ。ちょっと見てってよ」
「ごめん愛莉、今日はこれから予定があるんだよ。また今度でお願い」
「真鈴~、宿題1個やり忘れてたの……! でづだっで……! でづだっでぇぇ……!!」
「予定がなくても手伝いません。林檎ちゃん、ちゃんと自分でやりなさい」
一人目には両手を合わせてお断りをして、二人目にはジト目を送ってお断りをして、鞄を肩にかけて校門に向かう。
今日はこれから、幽霊助(だす)けがある。そっちに集中しないといけないのです。
「一応、お母さんにメッセージを送っておいてっと……。あ、来た来た」
「すみません、お待たせしました」
「んーん。転校生だからしょうがないって」
水前寺くんは本日転校1日目で、その関係で先に職員室に行っていた。彼のせいじゃないから首を2回振っておいた。
「良い2年半になるといいね。私にできることがあったら、何でも言ってよ? なにせ、転校の先輩ですから」
「はい。困った時は頼りにさせていただきます」
「なんて言いながら、水前寺くんは遠慮しそう。そういうのは要らないからね?」
この人の性格は把握できているから、念を押しておく。
おばあちゃんがよく言っている、『遠慮しない方がいい時もあるのよ』がソレなのです。
「ありがとうございます。真っ先に相談させてもらいますね」
「ん、そうして。じゃあ水前寺くん、案内ヨロシク」
「畏まりました。こちらになります」
まずは校門を出てすぐ右に曲がって、下校路とは反対の道を進んでいく。
ちなみに私たちは、どちらも徒歩。幽霊の中には突然悲鳴や奇声をあげるタイプが結構いるらしくって、ビックリして運転を間違えてから彼も乗らないようにしてるみたい。
「歩いてる間は暇になっちゃうし、適当にお喋りでもしよっか。水前寺くんの趣味はなに?」
「僕の趣味は、落語ですね。祖母にすすめられて聴くようになり、そのまま嵌まってしまいました」
「へ、へぇ、落語。落語って、どういうところが面白いの?」
「えんも――お話自体が面白いのもありますが、なによりえんじゃ――話をする人によって、同じ話でも印象など多くの部分が変わる点が特に面白いと感じています。奥深い世界ですよ、本当に」
「そ、そうなんだ」
「市川さんのご趣味はなんですか?」
「家の中でできること全部、かな。ほら、外にいると色々見えて疲れちゃうでしょ? だからできるだけ家から出ないようにしてて、家の中でできることが趣味になったって感じだね。最近一番やってるのは、ゲームかな」
「なるほど。お好きなゲームのジャンルはなんですか?」
「音ゲーかな。今ハマってるのは、このアプリのゲーム。音楽がとにかく良いの」
「初めて見ました。確かに、良い音楽ですね。ゲーム部分も面白そうですし、家に帰ったら自分でも調べてみます」
「……ぁー、暑くて茹でダコになりそう。これだから夏は嫌いなのよ」
「暑さに弱い人にとっては、辛い時期ですよね。ちょっと待っていてください」
「???」
「………………お待たせしました。どうぞ、スポーツドリンクです。こちらで水分補給をしてください」
「あ、ありがとう。……水前寺くんって、紳士だね」
「そうですか? 当たり前のことをしただけですよ?」
「でた、当たり前。水前寺くんは、ずっとそのままの水前寺くんでいてね」
お互いの趣味を伝え合ったり水前寺くんの人間性を改めて知ったり、色んなことがありながらトコトコスタスタ。楽しいと感じる時間を20分くらい過ごして、
「着きました。ここです」
古い民家の前で、水前寺くんの足が止まったのでした。
「ごめん愛莉、今日はこれから予定があるんだよ。また今度でお願い」
「真鈴~、宿題1個やり忘れてたの……! でづだっで……! でづだっでぇぇ……!!」
「予定がなくても手伝いません。林檎ちゃん、ちゃんと自分でやりなさい」
一人目には両手を合わせてお断りをして、二人目にはジト目を送ってお断りをして、鞄を肩にかけて校門に向かう。
今日はこれから、幽霊助(だす)けがある。そっちに集中しないといけないのです。
「一応、お母さんにメッセージを送っておいてっと……。あ、来た来た」
「すみません、お待たせしました」
「んーん。転校生だからしょうがないって」
水前寺くんは本日転校1日目で、その関係で先に職員室に行っていた。彼のせいじゃないから首を2回振っておいた。
「良い2年半になるといいね。私にできることがあったら、何でも言ってよ? なにせ、転校の先輩ですから」
「はい。困った時は頼りにさせていただきます」
「なんて言いながら、水前寺くんは遠慮しそう。そういうのは要らないからね?」
この人の性格は把握できているから、念を押しておく。
おばあちゃんがよく言っている、『遠慮しない方がいい時もあるのよ』がソレなのです。
「ありがとうございます。真っ先に相談させてもらいますね」
「ん、そうして。じゃあ水前寺くん、案内ヨロシク」
「畏まりました。こちらになります」
まずは校門を出てすぐ右に曲がって、下校路とは反対の道を進んでいく。
ちなみに私たちは、どちらも徒歩。幽霊の中には突然悲鳴や奇声をあげるタイプが結構いるらしくって、ビックリして運転を間違えてから彼も乗らないようにしてるみたい。
「歩いてる間は暇になっちゃうし、適当にお喋りでもしよっか。水前寺くんの趣味はなに?」
「僕の趣味は、落語ですね。祖母にすすめられて聴くようになり、そのまま嵌まってしまいました」
「へ、へぇ、落語。落語って、どういうところが面白いの?」
「えんも――お話自体が面白いのもありますが、なによりえんじゃ――話をする人によって、同じ話でも印象など多くの部分が変わる点が特に面白いと感じています。奥深い世界ですよ、本当に」
「そ、そうなんだ」
「市川さんのご趣味はなんですか?」
「家の中でできること全部、かな。ほら、外にいると色々見えて疲れちゃうでしょ? だからできるだけ家から出ないようにしてて、家の中でできることが趣味になったって感じだね。最近一番やってるのは、ゲームかな」
「なるほど。お好きなゲームのジャンルはなんですか?」
「音ゲーかな。今ハマってるのは、このアプリのゲーム。音楽がとにかく良いの」
「初めて見ました。確かに、良い音楽ですね。ゲーム部分も面白そうですし、家に帰ったら自分でも調べてみます」
「……ぁー、暑くて茹でダコになりそう。これだから夏は嫌いなのよ」
「暑さに弱い人にとっては、辛い時期ですよね。ちょっと待っていてください」
「???」
「………………お待たせしました。どうぞ、スポーツドリンクです。こちらで水分補給をしてください」
「あ、ありがとう。……水前寺くんって、紳士だね」
「そうですか? 当たり前のことをしただけですよ?」
「でた、当たり前。水前寺くんは、ずっとそのままの水前寺くんでいてね」
お互いの趣味を伝え合ったり水前寺くんの人間性を改めて知ったり、色んなことがありながらトコトコスタスタ。楽しいと感じる時間を20分くらい過ごして、
「着きました。ここです」
古い民家の前で、水前寺くんの足が止まったのでした。
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