見える私と聞こえる転校生

柚木ゆず

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第4話 幽霊チェック 真鈴視点(2)

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「この家の前を通っている時に声が聞こえてきて、多分大きさ的に庭の辺りにいると思うんです。こっちになります」
「オッケー」

 おじいちゃんとおばあちゃんが住んでいる家より古い、おそらく60年以上は経ってる平屋。空き家だからチャイムを探さずにそのまま門を潜って、水前寺くんの後ろをついていく。

「ねえ、ここの霊はどんな声でなんて言ってたの?」
「大人の女性の声――担任の……梅川先生でしたよね? あの先生とよく似た声です。内容は『誰かわたしの代わりにプレゼントを届けてください』で、今も聞こえてきています」

 耳を澄ませてみたけれど、やっぱりそんな声は聞こえない。でも水前寺くんは嘘を吐いていなくて、確実に近くにいる。

「あの角を曲がった先に、いるはずです。どう、でしょうか……?」
「どうだろうね? えーと……」

 水前寺くんに続いて90度右に曲がって、庭のスペースが見えるようになった。そこには、木が一本生えていて――

「……………………水前寺くん、私が一緒でよかったね」

 ――その傍には、化け物みたいなのがいた。

(あっちに聞こえたらマズいかもだから、小声で言うよ。ここにいる幽霊は、目が3つあって口が裂けてる。アレは悪霊だよ)

 見た目は危なすぎるし、たった今ベロって舌なめずりをした。どう見たって困っている幽霊じゃない。

(悪霊ネットワーク的なのがある? 水前寺くんをまじまじ見てて、明らかに狙ってるよ)
(そ、そうなんですね。見た目が異様な困っている人の霊、という可能性は……?)
(100パーセントない。確実に悪霊だよ)

 木の傍にいる化け物からは、悪意しか感じない。大怪我させられた時の幽霊と同類だ。

(声に返事をしたら、アレがこっちに来るんだよね? そんなことになったら二人とも死ぬかもしれない。行くよ)
(は、はい)

 こっちに返事をしたつもりがなくても、返事になっちゃう言葉がある可能性がある。水前寺くんの手を引っ張って、そうなる前に急いで敷地を出た。

「助かりました。……いきなりハズレを引いてしまい、ご迷惑をおかけしました。恐ろしいものを見てしまって、気分が悪くなってはいませんか?」
「平気だよ。今まで、もっとヤバいのを何回も見てきたから」

 小学1年生の時に見た、身体中に目と口が大量にある地面を這いずり回る幽霊、あれに比べたら可愛い。
 アレが気持ち悪さ&恐ろしさ100だとしたら、今のは10くらいかな。

「私はね、そういうことも理解した上で協力してるの。幽霊チェックだって私の意思でやってるんだから水前寺くんは気にしない。いいね?」
「は、はい。分かりました」
「もう謝るのはなしだよ? じゃあ次の案内よろしくね」

 この人が罪悪感を覚えるのは、おかしいもんね。パンッと手を叩いて気持ちを切り替え、次の幽霊がいる場所を目指したのでした。

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