行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず

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第10話 一変 俯瞰視点(1)

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「「「…………」」」

 残念!? 真実!? 言わなかった!?
 あっという間に三人の頭の中は錯乱し、全員が顔を強張らせながら振り向きました。

「ヴぁ、ヴァランタン様……。な、なにを仰っているのですか……?」
「なにを言っているのか? 貴方がたは分かっているはずですよ」
「お、思い当たる節がありませんな。な、なあ二人とも」
「え、ええ。ないわね」
「え、ええ。ありませんわ」

 このタイミングでの、『残念』。思い当たる節はありましたが、一様に首を左右に振りました。

「……そうですか。仕方がありませんね、この場で言及しましょう」
「「「…………」」」
「僕が言っているのは、貴方がたが盗んだイヤリングのことですよ」

 !!!!!!
 三人の心臓が、過去最高の大きさで鳴りました。

「い、イヤリング……? イヤリングって、あの……? は、はははは、なにを仰るのです……? そんなもの知りませんよっ」
「わたくしもっ、知りませんわっ」
「同じくっ。私も知りません」
「そうでしたか。でしたら、アレはなんだったのでしょうか……?」
「「「あ、アレ……?」」」
「三階の廊下に設置してある壺の傍でイヤリングを見つけ、拾い上げ、嬉々として懐に仕舞う。今日見たあの光景は、なんだったのでしょうね?」

 !!!!!!!!!!!
 三人の心臓はあっさりと、『過去最高』を塗り替えました。

「ピエールさん、ミサさん、ポーリーヌさん、僕は最初から知っていたんですよ。落とし物を盗んだ犯人をね」
「「「…………」」」
「貴方がたの前でわざわざ落とし物の話をしたのは、副支配人として、正直に打ち明けてくれるのを期待していたのですよ。……残念でした」

 部屋で告げている時も一緒に探している時も、犯人について言及している時も白状しなかった。罪悪感を覚える様子すらなかった。
 ヴァランタンは大きな大きなため息を吐き、顔面蒼白で言葉を失っている三人に対して、こう告げたのでした。


「先ほど申し上げたように、窃盗は犯罪です。然るべき機関にこの出来事を報告します」


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