皆さん、覚悟してくださいね?

柚木ゆず

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第4話 目覚めた後に待っているものは リュシエンヌ視点(4)

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「さ、サインを行いました。捺させていただきました。で、ですのでそちらのペンダントを――」
「ペンダントを返すのはまだよ」
「え!? 返していただけるのではなかったのですか……!?」
「いつ誰が、『サインと拇印を捺したら返してあげる』と言ったの? 返ってくるのはまだよ」

 あたしは書類を仕舞いながら首を横に振り、続いて右の人差し指を2本立てた。

「このペンダントを返してあげるのは、あと2人――。アンタの仲間マチルドとパトリシアへのお返しが終わった時よ」
「ほ、本当に返していただけるのですよね……? マチルドさんとパトリシアさんへの仕返しが――ああいえっ! 正当な反撃が終わったら必ず返していただけるのですよねっ? 決してリュシエンヌさんを疑っているのではなくって! 私(わたくし)には人間不信な一面がありましてっ、つい何度も確認をしたくなっているだけなのですっ。悪いのは私ですっ。しっ、信じさせていただいてもよろしいのですよねっ?」
「…………ええ、そうね。信じていいわよ」

 うん、そう。ペンダントは、ちゃんと返してあげる。

「ありがとうございますっ。感謝いたしますっ! このご恩は一生忘れません!」
「どうせペンダントを返したらコロッと変わるんでしょうけど、まあいいわ。じゃあこの話は終わりで、次の話を始めるわ」
「はっ、はいっ! リュシエンヌさんへの感謝っ、恩返しの気持ちは変わることはありませんがっ、はいっ! 是非御聞かせくださいっ!」
「さっき言ってた、マチルドとパトリシアへのお礼の件だけれど。次はターゲットはマチルドと決めていて、今のあたし達のように1対1の場面を作りたいの。その手伝いをしてもらうわ」

 今日はたまたま2人きりになれただけで、こんな機会が何度も続くとは思えない。それに『偶然』が作り出した状況は、不安要素が多い――予想外のトラブルが発生する可能性があるから、本来は頼りたくないのよね。

「次に移るまでに少し準備がいるから、そうね。完成したら連絡を――入れるのは得策じゃないわね。今日から…………2日後の5時限目を抜け出して、マチルドがココに単独で来るように仕向けて頂戴」

 どのタイミングで、どんな風に誘い出すか、などなど。あたしが考えた流れを伝え、齟齬がないように念入りに確認した。

「……ここまでやったら、伝達ミスはありえないわね。じゃあもう一つ――今日最後の命令をするわ」
「はっ、はいっ! なんなりとお申し付けください!」
「3人全員へのお礼が終わるまで、マチルドとパトリシアがあたしへ攻撃しないようにしなさい」

 準備があるから3バカの相手をしている暇はないし、そもそも、アレをこれ以上経験したくなるような特殊な性癖を持ってはいない。
 だから、こんな指示を出しておいた。

「適当に理由付けをして、あたしに近づかないようにしてちょうだい。できるわよね?」
「はいっ! 特にパトリシアさんはああいった方ですので、難しくはあるのですが……。お任せください! お優しいリュシエンヌさんの御役に立てるよう、粉骨砕身で取り組ませていただきますわっ!」
「そう。よろしく頼んだわよ」

 手のひら返しの持ち上げは気分が悪いけど、まあいいでしょう。
 伝えたいことは以上でお仕舞だから、今日のところは解散。あたしは丁重に見送られながら教室に戻り、放課後になったらすぐ動き出す。

((急いで、外出許可を取らないといけないわね。そのあとは、近くにある『ラクレート山』へと行って――))
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