8年ぶりに再会した男の子は、スパダリになっていました

柚木ゆず

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第13話 裏切り 俯瞰視点(4)

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「娘を売って得た1・5億、そのすべてを領民に還元する。全員貴族籍を放棄して隠居する。それが、お前達への命令だ」

 ミーアは幼い頃からずっと、領民の未来を案じていました。そこでイサックは、彼女が大切にしていた存在を守れる罰を用意していたのです。

「あの金はお前達が好きに使っていいものではないし、お前達はトップに居続けてはいけない人間だ。だから――」
「お待ちください!! 私が退けば無能な弟が当主となってしまいます! アレに領地領民の維持など無理です!! お気持ちは分かりますが得策ではございませ――」
「確かにそうらしいな。そこで、当主には従弟にあたるラズロック殿に就いていただこうと思っている」

 2人いる実弟と1人いる実妹は、ミーアの件を知りながら放置する同類。直系が好ましいと承知しているものの、直系が愚者ずくしなためズラす・・・べきだとかんがえていました。

「ら、ラズロック……? ラズロック……!? どうしてその名を……!?」
「僕は超能力者じゃない。となると?」
「まさか……。わたくし達の、周辺を……。調べ、た……?」
「ああ、そうだよ。徹底的に調べて、お前達に関する情報はすべて手元にあるのさ。ミーアをお迎えに上がる前からね」

 詳しく知っておかないとミーアを助けることはできませんし、その後の様々な対応も完全にはできなくなっていまいます。最後までしっかりとミーアを守り幸せな毎日を提供するべく、隅々まで調査していたのでした。

「……そ、そうか……。伯爵家の力を使って……」
「いいや、ラズオル様の御力は借りていない。僕の影が全て行ったよ」

 貴族・子爵家と言っても、ルファポール家に特筆すべき点はありません。その程度の相手ならば容易でした。

「ラズオル様は、貸しを一つ、と仰っていたはずだ。頼んだのは今回が初めてだ」
「ば、かな……」
「うそ、よ……。できるはずが、ない……。いくら金持ちでも……貴族相手にそこまでのことができるはずはないわ……」
「そこまでのことができない? ウチの影は情報収集のあとに、お前達を監視し続けていたぞ?」
「監視だって!?」「監視ですって!?」「「監視!?」」
「お前達は喜劇を演出するために意図的に自分達の行動をウチに流し、それによって到着時刻を把握できたと思っていたんだろう? 大間違いだ。僕はそれを承知で動いていたんだよ。お前達流のやり方で対応するためにな」

 全てを知っているからこそ、ルーザンの裏切りに合わせてラズオルを待機させていた。4人はようやくその点に気付き、全身から完全に血の気が引きました。

「「「「ば、ばけもの……」」」」
「そうだな、僕は――僕達は、自分でも驚くくらいに力をつけた。ミーア様・・・・のおかげでね」

 元々3人には商売の才がありましたが、自力だけではどんなに必死になってもこんな短期間でこんな成長は遂げられませんでした。

 ――絶対にあの人を救いたい――。

 そんな想いが、力を何倍にも増幅させていたのです。

「「「「…………」」」」
化け物・・・の命令に背いたらどうなるか、分かるな? 命が惜しかったら即座に従え」

 イサックもザードもファラも、当主達が突然いなくなったら領地が混乱に陥りかねない、という理由で『脅迫』という方法を取っている。どうしても従わないのであれば、事故死などに見せかけて帰路で穏便に・・・消すこともできました。

「承知、いたいました……」「「「承知いたしました……」」」

 ルウゴ、アルバ、ジャード、レア。冷たい視線と声音に射抜かれた4人は手のひらの上にいることを痛感し、声と身体を激しく震わせながら服従を示したのでした。

 そうしてルウゴ達はここを訪れる際とは真逆の表情でこの場を去り、それを見届けたイサックは――
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