お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました

柚木ゆず

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第12話 終わりの始まり ファスティーヌ視点(5)

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「ファスティーヌ殿。忘れたのですか? 我々はマークしていた、そう言ったことを」

 呆然となっていたら、大きなため息が吐き出された……。
 そ、そういえば……。言って、いた……。

「今日は貴方がたにとっては最高の日で、じっとしていられなかったのでしょうね。オーレン邸を発ったあと宝石商を訪ね、その指で輝いているものを購入したことも。その間に侍女に命じ、有名店のザッハトルテを購入させていたことも。すべて確認しております」
「そ、それは……。ちが……っ。それも、お父様の命令で――」
「脅迫している娘に指輪を買えと指示を出し、そんな娘は嬉々として店に入ってゆく。随分と酔狂で楽しそうな、おかしな命令ですね」
「そっ、そうでしょうっ!? そう思うでしょうっ!? だけどそうなんですのっ! わたくしは嬉々とするようにも命令されていて――」
「どんなに言い訳をしても、無駄ですよ。『自らの意思で動いていた』。それは覆すことはできません。絶対にね」

 また……。この男は、大きなため息を吐いた……。
 そ、そんな……っ。そんな…………。

「ちなみに――。ファスティーヌ様にもう一点、お伝えしておくことがございます」
「……え……? な、なん、ですの……?」
「こういった行動も、くだんの不名誉の追加に繋がります。親子そろって、罪の上乗せをしてしまいましたね」
「い、いや……。いや……っ。ごっ、ごめんなさい……!! 今のはなかったことにしてください……!!」

 すぐさま両膝をついて、懇願を始める。
 この場に居るのは、貴方達だけっ! 貴方達さえ黙ってくれれば何も起きないんですもの! お願いします……!! 許して……っ!!

「今更何を仰っているのですか? もう手遅れですよ。さあ、外へ出ましょうか」
「おっ、お願いしますっ!! やめて……っ。腕を掴まないで! 離してっ! やめてぇえええええええええええええ!!」

 どんなに泣き叫んでも、意味はない……。
 そのまま護送用の馬車に押し込まれて……。数日後に、裁判が始まって……。
 わたくしもお父様も、貴族籍を剥奪されて……。罪人に、堕ちて……。

 37年……。

 56歳に、なるまで……。人生の半分近くを……。
 強制労働を行いながら、薄暗くて狭い牢で過ごすことになったのだった…………。



 ※明日のお話は視点が移動し、ガエル視点となります。

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