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第10話 仁王立ちで待ち構えていたら、大変なことになった ローズ視点(1)
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「ローズ、お義父さんから伺ったよ。入ってもいいかな?」
「……いいから呼んだんでしょ。さっさと入って」
ローランス湖でイライラした日の夕方。なぜか2人は予定より1時間半くらい遅く帰ってきて、返事をすると静かに部屋の扉が開いた。
今日は何度も混乱させて、あたしをムカッとさせたんだもん。遠慮はナシで、厳しくいく。
「お邪魔します。僕に用事、お話があるんだよね? なんなのかな――」
「フェリックス。あたし、すっごく不機嫌になってるよね? その理由が分かる?」
へらへらと入ってきた『裏切り者』を遮り、鋭く睨みつける。
もちろん体勢は、仁王立ち。全身から怒りのオーラを迸らせている。
「り、理由? ご、ごめん、分からないよ。よかったら、教えてくれる――」
「伺う前に、少しは自分で考えなさいよ。思い当たる節、あるでしょ?」
「い、いや、それがないんだよ。ヒントをくれると、有難いな」
「ちっ。はぁ~、仕方がないわね。ヒントは、『ローランス湖』。『2人が気になってあたしは尾行していた』。この2つよ」
時間がかかりそうだから、優しいローズちゃんが特別にサービスしてあげた。ここまで言及したら、そのお間抜けなオツムでも、気が付くでしょ?
「っ!? ローズはあの場に居たのかい!?」
「ええ、居たわよ。ばっちり見て聞いたわよ。愛の言葉も、と~っても素敵なプレゼントもね」
裏切りの現場を、しっかり目撃したわ。
さぁて。フェリックス。アンタは、どんな返事をしてるの? ちゃんと、あたしが納得できるものなんでしょうね?
「そ、そうだったのか……」(…………そうか、ようやく分かったぞ。ローズが不機嫌な理由は、疎外感だ! 実際に、告白を見るのは初めてだから……。そうしたことによって、僕らの絆が更に強くなる――僕ら2人の世界に行ってしまい、ますます自分が入り込む余地がなくなると感じて怒っていたんだ)
ギョッとしていたフェリックスの両目が見開かれ、大きく頷いた。
はぁ。ようやくあたしがご立腹な理由を理解して、弁明が始まるみたい。
「…………ローズ」
「ここに居るのは2人だけなんだから、名前を呼ばなくても分かるわよ。なあに?」
「…………ごめんよ。それは、違うんだ。君は、大きな勘違いをしているよ」
「なんですってぇ!? 勘違い!? 何が勘違いなのよ!!」
否定と責任転嫁の言葉。今のあたしにはそれが我慢できなくて、頬を引っ叩くために右手を思い切り振った。
そうしたらそれは、ヤツの左頬に――当たる前に受け止められてしまい、
「っ、離しなさいよ!! こうでもしないと、この気持ちは収まらな――は……? はあ…………っ!?」
暴れようとしてあたしの手足は、ぴたりと止まってしまう。
だ、だって。だって……っ。
「まずは、これで感じて欲しい。僕の想いを」
そのまま背中に左右の手が回されて、ギュッと優しく抱き締められたから。
ど、どういうコト!? どういうコトなのこれ!?
〇〇〇
((こんなにも取り乱してしまう程に、ローズは想ってくれていたんだね……っ。ありがとう。その不安は今日、全て取り除くよ))
「……いいから呼んだんでしょ。さっさと入って」
ローランス湖でイライラした日の夕方。なぜか2人は予定より1時間半くらい遅く帰ってきて、返事をすると静かに部屋の扉が開いた。
今日は何度も混乱させて、あたしをムカッとさせたんだもん。遠慮はナシで、厳しくいく。
「お邪魔します。僕に用事、お話があるんだよね? なんなのかな――」
「フェリックス。あたし、すっごく不機嫌になってるよね? その理由が分かる?」
へらへらと入ってきた『裏切り者』を遮り、鋭く睨みつける。
もちろん体勢は、仁王立ち。全身から怒りのオーラを迸らせている。
「り、理由? ご、ごめん、分からないよ。よかったら、教えてくれる――」
「伺う前に、少しは自分で考えなさいよ。思い当たる節、あるでしょ?」
「い、いや、それがないんだよ。ヒントをくれると、有難いな」
「ちっ。はぁ~、仕方がないわね。ヒントは、『ローランス湖』。『2人が気になってあたしは尾行していた』。この2つよ」
時間がかかりそうだから、優しいローズちゃんが特別にサービスしてあげた。ここまで言及したら、そのお間抜けなオツムでも、気が付くでしょ?
「っ!? ローズはあの場に居たのかい!?」
「ええ、居たわよ。ばっちり見て聞いたわよ。愛の言葉も、と~っても素敵なプレゼントもね」
裏切りの現場を、しっかり目撃したわ。
さぁて。フェリックス。アンタは、どんな返事をしてるの? ちゃんと、あたしが納得できるものなんでしょうね?
「そ、そうだったのか……」(…………そうか、ようやく分かったぞ。ローズが不機嫌な理由は、疎外感だ! 実際に、告白を見るのは初めてだから……。そうしたことによって、僕らの絆が更に強くなる――僕ら2人の世界に行ってしまい、ますます自分が入り込む余地がなくなると感じて怒っていたんだ)
ギョッとしていたフェリックスの両目が見開かれ、大きく頷いた。
はぁ。ようやくあたしがご立腹な理由を理解して、弁明が始まるみたい。
「…………ローズ」
「ここに居るのは2人だけなんだから、名前を呼ばなくても分かるわよ。なあに?」
「…………ごめんよ。それは、違うんだ。君は、大きな勘違いをしているよ」
「なんですってぇ!? 勘違い!? 何が勘違いなのよ!!」
否定と責任転嫁の言葉。今のあたしにはそれが我慢できなくて、頬を引っ叩くために右手を思い切り振った。
そうしたらそれは、ヤツの左頬に――当たる前に受け止められてしまい、
「っ、離しなさいよ!! こうでもしないと、この気持ちは収まらな――は……? はあ…………っ!?」
暴れようとしてあたしの手足は、ぴたりと止まってしまう。
だ、だって。だって……っ。
「まずは、これで感じて欲しい。僕の想いを」
そのまま背中に左右の手が回されて、ギュッと優しく抱き締められたから。
ど、どういうコト!? どういうコトなのこれ!?
〇〇〇
((こんなにも取り乱してしまう程に、ローズは想ってくれていたんだね……っ。ありがとう。その不安は今日、全て取り除くよ))
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