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If ローズの恋と変わる心 俯瞰視点(6)
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「へぇ、まるで別人だな。この1年で何があったんだ?」
「……1年前のあの日。あたしはレオス様に助けられて、恋をしました。でもあのあたしは嫌われていたので、嫌われないように生まれ変わったんです」
騎士団本部内にある、応接室。ガラス製のテーブルを挟んで座っているローズは、対面にいる、愛する人に1年間の出来事を説明しました。
姉と婚約者に謝罪をしたこと。
奉仕活動をしていたこと。
行動の理由も含め、全てを伝えました。
「ふーん、俺が理由ね。……その変化は他意のある、自分の目的を果たす為のものなんだな」
「はい、そうです。どうしても諦めきれなくって、あたしは生まれ変わりました」
「…………なあ。アンタはなぜ、馬鹿正直に話した?」
黙っていれば、心証が良くなったのに――。ベラベラ喋ったせいで、俺の印象は最悪だぞ――?
レオスがそう告げると、ローズは苦笑い。「そうですよね。自分でもそう思います」と口にしました。
「自覚はあったんだな。じゃあ、なんで言った?」
「それを隠してしまったら、レオス様の嫌いな腹黒のまま。生まれ変わったことにはなりません。だから、正直にお伝えしたんです」
自分が納得できる人間になれないから。彼女は敢えて、不利になる内容を告げていたのです。
「…………レオス様。改めて、お伝えさせていただきます」
ソファーに座っているローズ。彼女は姿勢を正し、その先にあるツリ目を真っすぐ見つめます。
「あたしローズは、貴方様が好きです。大好きです。…………もしも現在お相手がいなくって、少しでも興味を持っていただけたのなら……。まずはお友達になって、恋人や結婚についても考えてくださいませんか?」
そうしてローズは想いを相手に伝え、そうすると――
「喜んで。ぜひとも、良い付き合いをさせていただきたく思います」
対面にいた彼は立ち上がり、膝を曲げて流麗に頭を下げました。
「不都合になることを堂々と言える人間は、そうそういない。貴女みたいな方なら、大歓迎。光栄でございます」
「……レオス様……っ。ありがとうございます……! 受け入れてくださって……っ。気付かせてくださって、ありがとうございます……っ」
あのまま本を手にして魅了を使っていたら、きっとロクでもない人生になっていた。1年間の間にそう感じるようになっていたローズは、2つの意味を込めて頭を下げ返しました。
「ああ、今日の礼は受け取らせてもらうよ。これからは、良い関係を築けそうだ。よろしくお願いします、レディ」
そうしてローズとレオスの間には新たな縁が生まれ、2人はじっくりと関係を深めてゆきます。
平日は手紙でやり取りをして、休日には会って。そうすることによってローズはますますレオスを好きになって、レオスの中でローズへの『ライク』が『ラブ』になって。
2人の交流、交際が始まって、ちょうど1年後でした。
「「ローズっ、おめでとう……っ」」
「おめでとう……っ。ローズ、よかったね……っ」
「ローズ、おめでとうございます。おめでとう……っ」
ローズは、両親、そして今では大の仲良しとなった姉と義兄に見守られながら誓いのキスを交わし、ローズ・ブランシュはローズ・フェシタルとなったのでした――。
「……1年前のあの日。あたしはレオス様に助けられて、恋をしました。でもあのあたしは嫌われていたので、嫌われないように生まれ変わったんです」
騎士団本部内にある、応接室。ガラス製のテーブルを挟んで座っているローズは、対面にいる、愛する人に1年間の出来事を説明しました。
姉と婚約者に謝罪をしたこと。
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「はい、そうです。どうしても諦めきれなくって、あたしは生まれ変わりました」
「…………なあ。アンタはなぜ、馬鹿正直に話した?」
黙っていれば、心証が良くなったのに――。ベラベラ喋ったせいで、俺の印象は最悪だぞ――?
レオスがそう告げると、ローズは苦笑い。「そうですよね。自分でもそう思います」と口にしました。
「自覚はあったんだな。じゃあ、なんで言った?」
「それを隠してしまったら、レオス様の嫌いな腹黒のまま。生まれ変わったことにはなりません。だから、正直にお伝えしたんです」
自分が納得できる人間になれないから。彼女は敢えて、不利になる内容を告げていたのです。
「…………レオス様。改めて、お伝えさせていただきます」
ソファーに座っているローズ。彼女は姿勢を正し、その先にあるツリ目を真っすぐ見つめます。
「あたしローズは、貴方様が好きです。大好きです。…………もしも現在お相手がいなくって、少しでも興味を持っていただけたのなら……。まずはお友達になって、恋人や結婚についても考えてくださいませんか?」
そうしてローズは想いを相手に伝え、そうすると――
「喜んで。ぜひとも、良い付き合いをさせていただきたく思います」
対面にいた彼は立ち上がり、膝を曲げて流麗に頭を下げました。
「不都合になることを堂々と言える人間は、そうそういない。貴女みたいな方なら、大歓迎。光栄でございます」
「……レオス様……っ。ありがとうございます……! 受け入れてくださって……っ。気付かせてくださって、ありがとうございます……っ」
あのまま本を手にして魅了を使っていたら、きっとロクでもない人生になっていた。1年間の間にそう感じるようになっていたローズは、2つの意味を込めて頭を下げ返しました。
「ああ、今日の礼は受け取らせてもらうよ。これからは、良い関係を築けそうだ。よろしくお願いします、レディ」
そうしてローズとレオスの間には新たな縁が生まれ、2人はじっくりと関係を深めてゆきます。
平日は手紙でやり取りをして、休日には会って。そうすることによってローズはますますレオスを好きになって、レオスの中でローズへの『ライク』が『ラブ』になって。
2人の交流、交際が始まって、ちょうど1年後でした。
「「ローズっ、おめでとう……っ」」
「おめでとう……っ。ローズ、よかったね……っ」
「ローズ、おめでとうございます。おめでとう……っ」
ローズは、両親、そして今では大の仲良しとなった姉と義兄に見守られながら誓いのキスを交わし、ローズ・ブランシュはローズ・フェシタルとなったのでした――。
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ノコノコ様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。お返事が遅くなってしまいすみません。
IFですが。こちらは、もし隣国で違うことが起きていたら、という前提のもと始まる物語となっております。
本編とは違う経験をする。
それにより、彼女が(妹が)どう変化をするのか。どんな道を歩むのか。
ご期待、くださいませ。
こすや様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。
ローズを引き続き気に入ってくださり、本当に嬉しく感じております。
この人は、行動力と根性は相当なものがあるんですよね。それらをここでも発揮して居場所をしっかり見つけていました……。が……。いよいよ、その時がやってまいりました。
あの手紙をみたとき。彼女はどんな反応をするのでしょうか……?
こすや様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。
ローズを気に入っていただけて、とても嬉しくありがたいです。
仰られているように実際に修道院や孤児院では好かれているので、こういった努力できる一面を違う方向に注げば……だったのですが……。魅了などといった方向にその力を使ってしまいましたので。壮大な思い込みが発生することとなり、当初からは考えられない人生を歩むこととなりました。
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