幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず

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第8話 逆監視4日目 監視前 (1)

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「あ、あの……。これ、は……」

 次の日の、朝のことでした。
 お部屋にいらっしゃったラズフ様が、いつものように映鏡を創られると――

《エリー、久しぶりだね。元気だったかい?》
《こうやってお話するのは、何年ぶりかしらね。おはよう、エリー》

 ――よく知っている、人達が……。お父様とお母様の姿が、映し出されたのでした。

「ら、ラズフ、様。……。これは……」
「ご実家に映鏡の送信用と受信用を1枚ずつ、そんでこの部屋にも1枚ずつ置いて、お互いに顔を見ながら喋れるようにしたんスよ。ミウヴァ様が『会いたい』って漏らしてたんで、昨日行ってきたんス」
「昨日……ですか……。もしかして、あの時お急ぎになられていたのは……っ」
「あ~、それはきっと別用っスよ。てかそんなお話は置いておいて、お父さんとお母さんがいるんスよっ。そっちに集中してくださいっスっ」

 私の肩を押さえてクルっと向きを変え、御自身はヒラヒラと手を振って退室されました。
 ……前日から、ありがとうございます。御言葉に、甘えさせていただきますね。

《ぼくらに会いたいと、言ってくれてたんだよね? 本当に嬉しいよ》
《エリー、ありがとうね。そして、ごめんなさいね》

 鏡の向こうにいるお父様とお母様は、予想外の言葉を口にしました。
 ぇ……? ごめんなさい……?

《母さんっ! それはっっ》
《ぁ、あたしったらつい……っ。エリー、なんでもないのよっ》
「で、ですが……。お父様お母様、さっきの言葉はなんだったのですか……?」
《それはまた別の機会に、必ずちゃんとお話しするわ。だから今日は、違うお話をするわね》

 よく、分かりませんが……。後日聞かせていただけるのなら、そうですね。今は忘れておきましょう。

《エリー。父さんと母さんは、元気にやってるよ。近年この地方の野菜が注目されているおかげで、収入もグンと増えたんだ》
《去年からは近所の人達と農家の食堂を始めて、そっちも軌道に乗っているの。早くて安くて美味しいって、この辺りでは評判なのよ》
「そうなのですね……っ。いつか、食べてみたいです」
《繁忙期を過ぎたら、そちらに届けに行くよ。もちろんメニューは、エリーが好きだった『ズッキーニの炒め物』と『新鮮トマトのパスタ』だよ》
《貴女が頑張ってる間にあたしも腕を磨いて、あの頃の何倍も美味しくなってるはずよ。変わらないけど進化はしている大好物を、楽しみにしていてね?》
「はいっ、楽しみにしていますっ。でしたらその際は、私もクッキーを焼きますね」

 初めて一緒に作った時は、『すっごく美味しいよっ!』『お菓子職人さん、また作ってくださいね?』と微笑んでくれていました。
 また一緒に食卓を囲んで、一緒に笑いましょうっ。

《そうだ、エリー。神殿は、動物の立ち入りもOKなのかな?》
《はい、構いませんよ。どうされましたか?》
《実は去年の終わりに衰弱した迷い猫が来てね、ウチで飼っているの。ほら、おいでおいでっ。――この子も連れていくわね》
《にゃっ、うにゃ~っ! くるるっ》

 お母様が三毛猫を優しく抱きかかえ、小猫さんは目を瞑って喉を鳴らしました。
 確かゆっくりと目を瞑るのは『挨拶』や『敵意はありませんよ』の合図で、喉鳴らしは『リラックスしてくる時』や『甘えている時』に出るものです。初対面なのですがこの子も、私に会いたがってくれているようですね。

「はい、お待ちしています。三毛猫さん、その時は撫で撫でをさせてくださいね?」
《にゃ~っ! うにゃ~! くぅーんっ》
《はははっ。エルナスは撫でて欲しそうにしているね――ああ、そうそうっ。エリー、この子はエルナスという名前なんだよ》
《『エリー』、『ルミス』、『ナーグ』の家に『水曜日』に来たから、『エルナス』。いい名前でしょ?》
「ですねっ。素敵な名前です……っ」

 お父様、お母様、ありがとうございます。
 当然のように、私の名を入れてくれていて……っ。本当に、嬉しいです。

《さて、そろそろエリーについても聞きたいな。楽しいことはあったのかな?》
「はいっ。楽しくなる、素敵な出会いがありましたよ」

 7年の間に様々なことがありましたが、一番お伝えしたいのはあの方のこと。リュシアン・ラズフ様について、お話しをすることにしました。






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