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勇気と決断編
episode466
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「は~い、リッキーちゃんどうぞっ」
「あ…ありがと…」
目の前の応接テーブルの上には、誰が食べるんだろうと思える程の、大量のお菓子が所狭しと並んでいる。生クリームやスポンジの甘い香り、フルーツのフレッシュな香りなどがあたりに充満している。
キュッリッキの膝の上では、フローズヴィトニルが水色の目を輝かせてブンブン尻尾を振り、目の前のお菓子を食べたくて食べたくてうずうずしていた。
「おかわりたーっくさんあるから、どんどん食べてね」
語尾にハートマークでも付きそうなご機嫌のヘイディ少佐にすすめられ、キュッリッキはゲッソリしつつ銀のスプーンを手に取る。食欲は一切なかったが、取り敢えず手前にあるヨーグルトババロアにスプーンをつき入れた。
フローズヴィトニルが待ちきれなくなって、膝の上で跳ねたりクルクル回ったりと落ち着かないので、ババロアを口に放り込んでやった。
ヘイディ少佐はにこやかに見ながら、心の中でガッツリ握り拳を握る。
(閣下が素直に出仕してくれるなら、もう毎日でも召喚士様に同伴してもらえば万々歳だわ!! 事務仕事もすぐ片付くし、残業もしなくて済むもの!)
チラリと奥のデスクを見ると、書類の山に囲まれたアルカネットが、次々書類を処理していた。
(これで午後の会議には間に合いそうね! ありがとうございます、ありがとうございます神様召喚士様!!)
キュッリッキに土下座でもしたいくらいの大感謝で、ヘイディ少佐は心で滝の涙を流した。
副官の何気ない一言で、魔法部隊(ビリエル)の本部にキュッリッキを伴って出仕したアルカネットは、書類の山を減らしながら、時折キュッリッキに目を向けていた。
フローズヴィトニルにお菓子を食べさせているその様子は、傍目にはいつも通りだが、心の中はまだまだ痛みでいっぱいだろう。独りきりにすれば、悲しみにまた涙を流すに違いない。こうして外に連れ出してやれば、気も紛れて笑顔を見せてくれるだろう。
泣き顔よりも笑顔の方が、何倍も素敵な少女なのだから。
キュッリッキを想いながら、書類の内容に目を通していると、リュリュから念話が入った。
(はーい、アルカネット。小娘の様子はどうなの?)
(とても深く傷ついています。一人にしておけないくらいに……)
(……まあ、そうでしょうね)
さすがのリュリュも、何と言っていいのか調子の狂うような雰囲気を、声に滲ませていた。
(ところでどうしました、何か御用でも?)
(ああ、そうそう。今日の午後に控えてる会議だけど、魔法部隊はとくに用事もないから出席しなくて結構だそうよ)
(おや。――まあ、あまり戦争では出番がありませんでしたからねえ)
(正規部隊とダエヴァくらいで、この後動くことになるのも彼らと別の特殊部隊だし。てことで、ハーメンリンナに残って事務処理に精を出してン)
(ええ、助かります。リッキーさんを一人には出来ませんしね)
(ベルに何か伝言ある?)
アルカネットは暫し考え込むと、にっこりと笑顔を浮かべた。
(こちらのことは心配せず気にせず余計なことは粉微塵も考えず、しっかり現地で仕事に励んで、永遠に帰ってこなくていいです。そう、お願いします)
(………今すぐ飛んで帰りそうなコトを言ってるわね、あーた……)
(せっかリッキーさんとく2人きりだというのに、邪魔されたくはありませんから)
(一応、一言一句正しく伝えとくわ。じゃあねん)
リュリュからの念話が切れると、自分のデスクに齧り付いて仕事をしているヘイディ少佐を呼んだ。
「今日の午後の会議には出席の必要なしと、リュリュから連絡がきました」
「あら」
意外そうに目を見開くと、ヘイディ少佐はガッカリしたように肩で息をついた。
「事務処理が立て込んでいるので、出席しなくていいのは助かりますけど。総帥閣下のように空間転移出来るわけではないですし、移動にも時間がかかりますから」
「そういうことです。一応現地へ誰かやって、会議の報告書などを受け取ってくるよう指示を出しておいてください」
「承りました」
ヘイディ少佐は敬礼すると、颯爽とオフィスを出て行った。
「あ…ありがと…」
目の前の応接テーブルの上には、誰が食べるんだろうと思える程の、大量のお菓子が所狭しと並んでいる。生クリームやスポンジの甘い香り、フルーツのフレッシュな香りなどがあたりに充満している。
キュッリッキの膝の上では、フローズヴィトニルが水色の目を輝かせてブンブン尻尾を振り、目の前のお菓子を食べたくて食べたくてうずうずしていた。
「おかわりたーっくさんあるから、どんどん食べてね」
語尾にハートマークでも付きそうなご機嫌のヘイディ少佐にすすめられ、キュッリッキはゲッソリしつつ銀のスプーンを手に取る。食欲は一切なかったが、取り敢えず手前にあるヨーグルトババロアにスプーンをつき入れた。
フローズヴィトニルが待ちきれなくなって、膝の上で跳ねたりクルクル回ったりと落ち着かないので、ババロアを口に放り込んでやった。
ヘイディ少佐はにこやかに見ながら、心の中でガッツリ握り拳を握る。
(閣下が素直に出仕してくれるなら、もう毎日でも召喚士様に同伴してもらえば万々歳だわ!! 事務仕事もすぐ片付くし、残業もしなくて済むもの!)
チラリと奥のデスクを見ると、書類の山に囲まれたアルカネットが、次々書類を処理していた。
(これで午後の会議には間に合いそうね! ありがとうございます、ありがとうございます神様召喚士様!!)
キュッリッキに土下座でもしたいくらいの大感謝で、ヘイディ少佐は心で滝の涙を流した。
副官の何気ない一言で、魔法部隊(ビリエル)の本部にキュッリッキを伴って出仕したアルカネットは、書類の山を減らしながら、時折キュッリッキに目を向けていた。
フローズヴィトニルにお菓子を食べさせているその様子は、傍目にはいつも通りだが、心の中はまだまだ痛みでいっぱいだろう。独りきりにすれば、悲しみにまた涙を流すに違いない。こうして外に連れ出してやれば、気も紛れて笑顔を見せてくれるだろう。
泣き顔よりも笑顔の方が、何倍も素敵な少女なのだから。
キュッリッキを想いながら、書類の内容に目を通していると、リュリュから念話が入った。
(はーい、アルカネット。小娘の様子はどうなの?)
(とても深く傷ついています。一人にしておけないくらいに……)
(……まあ、そうでしょうね)
さすがのリュリュも、何と言っていいのか調子の狂うような雰囲気を、声に滲ませていた。
(ところでどうしました、何か御用でも?)
(ああ、そうそう。今日の午後に控えてる会議だけど、魔法部隊はとくに用事もないから出席しなくて結構だそうよ)
(おや。――まあ、あまり戦争では出番がありませんでしたからねえ)
(正規部隊とダエヴァくらいで、この後動くことになるのも彼らと別の特殊部隊だし。てことで、ハーメンリンナに残って事務処理に精を出してン)
(ええ、助かります。リッキーさんを一人には出来ませんしね)
(ベルに何か伝言ある?)
アルカネットは暫し考え込むと、にっこりと笑顔を浮かべた。
(こちらのことは心配せず気にせず余計なことは粉微塵も考えず、しっかり現地で仕事に励んで、永遠に帰ってこなくていいです。そう、お願いします)
(………今すぐ飛んで帰りそうなコトを言ってるわね、あーた……)
(せっかリッキーさんとく2人きりだというのに、邪魔されたくはありませんから)
(一応、一言一句正しく伝えとくわ。じゃあねん)
リュリュからの念話が切れると、自分のデスクに齧り付いて仕事をしているヘイディ少佐を呼んだ。
「今日の午後の会議には出席の必要なしと、リュリュから連絡がきました」
「あら」
意外そうに目を見開くと、ヘイディ少佐はガッカリしたように肩で息をついた。
「事務処理が立て込んでいるので、出席しなくていいのは助かりますけど。総帥閣下のように空間転移出来るわけではないですし、移動にも時間がかかりますから」
「そういうことです。一応現地へ誰かやって、会議の報告書などを受け取ってくるよう指示を出しておいてください」
「承りました」
ヘイディ少佐は敬礼すると、颯爽とオフィスを出て行った。
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