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勇気と決断編
episode488
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目の前に現れた宮殿の華麗さに、キュッリッキは目を輝かせた。
ハワドウレ皇国皇王家、ワイズキュール一族の住むグローイ宮殿だ。
白い外壁は煌びやかなライトで照らされ、不思議な色合いの光を柔らかく放っていた。昼間はごく普通に豪奢な宮殿、といった様相だが、夜間こうしてライティングされると一際輝く。
電気エネルギーはこのハーメンリンナの地下で作られている。超古代文明の遺産の一つで、電気エネルギーというものは、あまり世界に普及しているものではなかった。
皇都イララクス全体でも、街のいたるところにほんの少しだけ供給され、あとは公立病院や行政施設など、決まった場所にしか提供されていない。庶民の生活には無縁のものだ。しかしハーメンリンナでは常に電気エネルギーが供給されるため、贅沢に使い放題である。
「いっぱい緊張してきちゃった……」
宮殿の圧倒さに緊張をより煽られ、両手をぎゅっと握り合わせると、キュッリッキはこわばった表情を俯かせた。
「俺が一緒だから、緊張しなくて大丈夫だぞ」
「わたしがずっとそばにいますからね。安心してください」
2人に励まされている間に、ゴンドラは宮殿の玄関前に到着した。
ゴンドラに同乗していた警護兵が先に降りると、左右に立って敬礼する。
ベルトルドが先に降り立ち、キュッリッキに手を差し伸べた。キュッリッキはドレスの裾を少したくしあげ、ベルトルドの手を掴んでゆっくりと降りる。裾を踏んで転ばないか気になってしょうがない。
顔を上げて前を見ると、ベルトルド邸よりも大きくて立派な玄関前に、幾人もの紳士淑女が立ってこちらを見ていた。
黒などのスーツを着た紳士たちの傍らには、眩いばかりの煌びやかなドレス姿の貴婦人たちがいる。そして皆が皆、好奇心の眼差しを隠そうともせず、キュッリッキに向けているのだ。
「なんか、ジロジロこっちを見てる…」
気後れしたようにぽつりとこぼすと、
「リッキーの美しさに興味津々なだけだ」
「そうですよ。この場にいる誰よりも、あなたは美しいんですから」
「そ、そうなのかな……」
場違いな気がしてならなくて、改めてジロジロ見られるのは気恥ずかしい。それに美醜の差が自分ではよくわからない。
ベルトルドとアルカネットの選んだドレスを退けて、キュッリッキが自分で選んだドレスは、オーロラの光沢がある淡いシャーベットオレンジ色のドレスだ。
ウエストから胸にかけて、まるで大輪の花が開いたように幾重にもフリルが広がっていて、気になってしょうがない胸をすっぽり覆い隠している。ひろがる裾も花びらのようで、上腕まで覆い隠す同色の手袋が、怪我の傷跡を見せないようにしていた。
「お嬢様のように、華奢なお姿でないと着こなしが難しいですわ」
そうリトヴァに言われた、少女過ぎず、程よい華やぎと愛らしさの素敵なドレスだ。
はだけた右肩にあった怪我の痕は、もうすっかり見えなくなっている。そして小粒の真珠のネックレスが、上品なアクセントになっていた。
ドレスの雰囲気に合うように髪は全て上にまとめず、ゆるやかに編まれた髪の房が数本自然に垂らされている。そうすることで、おしゃまになりすぎない甘やかな品の良さが際立っていた。
エスコートするレディが、誰よりも美しいことに大満足している2人は、キュッリッキを伴って宮殿へと入っていった。
ハワドウレ皇国皇王家、ワイズキュール一族の住むグローイ宮殿だ。
白い外壁は煌びやかなライトで照らされ、不思議な色合いの光を柔らかく放っていた。昼間はごく普通に豪奢な宮殿、といった様相だが、夜間こうしてライティングされると一際輝く。
電気エネルギーはこのハーメンリンナの地下で作られている。超古代文明の遺産の一つで、電気エネルギーというものは、あまり世界に普及しているものではなかった。
皇都イララクス全体でも、街のいたるところにほんの少しだけ供給され、あとは公立病院や行政施設など、決まった場所にしか提供されていない。庶民の生活には無縁のものだ。しかしハーメンリンナでは常に電気エネルギーが供給されるため、贅沢に使い放題である。
「いっぱい緊張してきちゃった……」
宮殿の圧倒さに緊張をより煽られ、両手をぎゅっと握り合わせると、キュッリッキはこわばった表情を俯かせた。
「俺が一緒だから、緊張しなくて大丈夫だぞ」
「わたしがずっとそばにいますからね。安心してください」
2人に励まされている間に、ゴンドラは宮殿の玄関前に到着した。
ゴンドラに同乗していた警護兵が先に降りると、左右に立って敬礼する。
ベルトルドが先に降り立ち、キュッリッキに手を差し伸べた。キュッリッキはドレスの裾を少したくしあげ、ベルトルドの手を掴んでゆっくりと降りる。裾を踏んで転ばないか気になってしょうがない。
顔を上げて前を見ると、ベルトルド邸よりも大きくて立派な玄関前に、幾人もの紳士淑女が立ってこちらを見ていた。
黒などのスーツを着た紳士たちの傍らには、眩いばかりの煌びやかなドレス姿の貴婦人たちがいる。そして皆が皆、好奇心の眼差しを隠そうともせず、キュッリッキに向けているのだ。
「なんか、ジロジロこっちを見てる…」
気後れしたようにぽつりとこぼすと、
「リッキーの美しさに興味津々なだけだ」
「そうですよ。この場にいる誰よりも、あなたは美しいんですから」
「そ、そうなのかな……」
場違いな気がしてならなくて、改めてジロジロ見られるのは気恥ずかしい。それに美醜の差が自分ではよくわからない。
ベルトルドとアルカネットの選んだドレスを退けて、キュッリッキが自分で選んだドレスは、オーロラの光沢がある淡いシャーベットオレンジ色のドレスだ。
ウエストから胸にかけて、まるで大輪の花が開いたように幾重にもフリルが広がっていて、気になってしょうがない胸をすっぽり覆い隠している。ひろがる裾も花びらのようで、上腕まで覆い隠す同色の手袋が、怪我の傷跡を見せないようにしていた。
「お嬢様のように、華奢なお姿でないと着こなしが難しいですわ」
そうリトヴァに言われた、少女過ぎず、程よい華やぎと愛らしさの素敵なドレスだ。
はだけた右肩にあった怪我の痕は、もうすっかり見えなくなっている。そして小粒の真珠のネックレスが、上品なアクセントになっていた。
ドレスの雰囲気に合うように髪は全て上にまとめず、ゆるやかに編まれた髪の房が数本自然に垂らされている。そうすることで、おしゃまになりすぎない甘やかな品の良さが際立っていた。
エスコートするレディが、誰よりも美しいことに大満足している2人は、キュッリッキを伴って宮殿へと入っていった。
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