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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode393
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もし遺跡から宣戦布告を発していなければ、ベルトルドはここまで大掛かりな規模で戦争を行おうなどと考えてはいなかった。せいぜい2部隊程度を送り込んでおけばいい程度に思っていたので、想定外の事態だった。
世界中の目を引きつけてもらうために、キュッリッキをメディアの目に晒し、召喚士を害したソレル王国を――本当はソレル王国は一切関与していない――批難して民心を煽り、この戦争の大義名分をでっち上げて注目を集めさせた。
そして大々的に戦争宣言をし、エルアーラ遺跡の存在を隠した。エルアーラ遺跡へは、自らとライオン傭兵団のみで赴く。エルアーラ遺跡を取り戻すまでの間、どの国の軍隊も派手に戦闘をしてくれればいい。
エルアーラ遺跡には、多勢の命をヴェールにするだけの価値が有る。そして真の価値を、多くが知る必要はないのだから。
「なら、心置きなく遺跡に乗り込めるな」
ベルトルドは満足げに、にやりと口を歪めた。
「アタシたちは遺跡に乗り込んで、何をするの?」
キュッリッキが片手をあげて質問を投げかけると、ベルトルドとアルカネットはにっこりと微笑んだ。
「悪い王様を引きずり出してぶっ殺す!」
握り拳を顔の高さに上げると、ベルトルドは物凄く要訳してきっぱり断言した。
「うわー、簡潔すぎ…」という空気が漂う中、キュッリッキは指を折りながら悪い王様を数える。
「全部で4人もいるね」
どこかはしゃぐように言うキュッリッキに、ベルトルドはウンウンと笑いかけた。
「まあ、そのものズバリは王たちの息の根を止めることもありますが、一緒にどのくらいの戦力が持ち込まれているか判りません。あなた方には、敵戦力の一掃をやっていただきます。その間に私とベルトルド様は、王たちを処分しに行きます」
「キューリちゃんは、アタシらと一緒でいいのぉ~?」
「ええ、身を引き裂かれるような思いですが、今回はあなた方と行動を共にしていただきます」
「やった!」
キュッリッキは万歳して満面に笑みを浮かべると、隣のメルヴィンに嬉しそうに笑いかけた。その笑みを受けて、メルヴィンも微笑む。
「ナルバ山でのような失態は、くれぐれも起こさぬように。厳命しておきますよ」
射抜くようなアルカネットの視線を受けて、皆生唾を飲み込んだ。キュッリッキはハッとすると、笑顔が引っ込み、しゅんっと俯いてしまった。
ナルバ山での出来事が、いつまでも引きずっていてみんなに申し訳なく思う。自分も傭兵団の一員なのに、召喚士というだけで特別扱いされ、守られるだけの存在。一緒に仕事ができることを喜んでも、かえって迷惑にしかなっていないような。そんな風に思えてならない。
いつまでみんなを、ナルバ山の事件で縛るのだろうか。
膝の上で小さく拳を握り締めていると、その上にメルヴィンがそっと掌を重ねてきた。言葉はなかったが、勞ってくれるような穏やかな笑みが、沈む気持ちを柔らかく包んでくれて嬉しい。
自棄を起こしたり軽はずみな行動をせず、慎重に行動すれば大丈夫。今度はしっかりみんなのサポートをする。
メルヴィンの手の甲を見つめながら、キュッリッキは自らに何度も言い聞かせた。
「明日の出発時間だが…」
「どわあああああああっ!!!」
「ちょっ! そこ窓ドああああああああ」
世界中の目を引きつけてもらうために、キュッリッキをメディアの目に晒し、召喚士を害したソレル王国を――本当はソレル王国は一切関与していない――批難して民心を煽り、この戦争の大義名分をでっち上げて注目を集めさせた。
そして大々的に戦争宣言をし、エルアーラ遺跡の存在を隠した。エルアーラ遺跡へは、自らとライオン傭兵団のみで赴く。エルアーラ遺跡を取り戻すまでの間、どの国の軍隊も派手に戦闘をしてくれればいい。
エルアーラ遺跡には、多勢の命をヴェールにするだけの価値が有る。そして真の価値を、多くが知る必要はないのだから。
「なら、心置きなく遺跡に乗り込めるな」
ベルトルドは満足げに、にやりと口を歪めた。
「アタシたちは遺跡に乗り込んで、何をするの?」
キュッリッキが片手をあげて質問を投げかけると、ベルトルドとアルカネットはにっこりと微笑んだ。
「悪い王様を引きずり出してぶっ殺す!」
握り拳を顔の高さに上げると、ベルトルドは物凄く要訳してきっぱり断言した。
「うわー、簡潔すぎ…」という空気が漂う中、キュッリッキは指を折りながら悪い王様を数える。
「全部で4人もいるね」
どこかはしゃぐように言うキュッリッキに、ベルトルドはウンウンと笑いかけた。
「まあ、そのものズバリは王たちの息の根を止めることもありますが、一緒にどのくらいの戦力が持ち込まれているか判りません。あなた方には、敵戦力の一掃をやっていただきます。その間に私とベルトルド様は、王たちを処分しに行きます」
「キューリちゃんは、アタシらと一緒でいいのぉ~?」
「ええ、身を引き裂かれるような思いですが、今回はあなた方と行動を共にしていただきます」
「やった!」
キュッリッキは万歳して満面に笑みを浮かべると、隣のメルヴィンに嬉しそうに笑いかけた。その笑みを受けて、メルヴィンも微笑む。
「ナルバ山でのような失態は、くれぐれも起こさぬように。厳命しておきますよ」
射抜くようなアルカネットの視線を受けて、皆生唾を飲み込んだ。キュッリッキはハッとすると、笑顔が引っ込み、しゅんっと俯いてしまった。
ナルバ山での出来事が、いつまでも引きずっていてみんなに申し訳なく思う。自分も傭兵団の一員なのに、召喚士というだけで特別扱いされ、守られるだけの存在。一緒に仕事ができることを喜んでも、かえって迷惑にしかなっていないような。そんな風に思えてならない。
いつまでみんなを、ナルバ山の事件で縛るのだろうか。
膝の上で小さく拳を握り締めていると、その上にメルヴィンがそっと掌を重ねてきた。言葉はなかったが、勞ってくれるような穏やかな笑みが、沈む気持ちを柔らかく包んでくれて嬉しい。
自棄を起こしたり軽はずみな行動をせず、慎重に行動すれば大丈夫。今度はしっかりみんなのサポートをする。
メルヴィンの手の甲を見つめながら、キュッリッキは自らに何度も言い聞かせた。
「明日の出発時間だが…」
「どわあああああああっ!!!」
「ちょっ! そこ窓ドああああああああ」
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