【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

文字の大きさ
16 / 73

16 冒険仲間 弱点?

しおりを挟む
「お前達と一緒に冒険をしろだと?」

「はい。それならば、双方の希望通りに事が進むと思うのですが、いかがでしょうか」

 レッド・ローズさんはわたくしと高みを目指し、わたくしはマット・ロビー・ケイと共に冒険が出来ます。
 3人も一緒に高みを目指せるのなら、それは良い事でしょう。

「お前は……ふざけている訳では、無い様だな」

「はい。わたくしは本気で言っています」

 下を向いて、何かを考えた後でコーヒーを飲み、ため息を一つ付いて口を開きました。

「どうやらお前は、俺が思っている以上にが強い様だな」

「そうでしょうか。わたくしは、わたくしの思う最善を選択しているだけです」

「お前の最善を人に押し付けているんだ。やはり我が強いな。まあいい、今回はお前の思う最善に付き合ってやる。それが一番手っとり早い様だ」

「ありがとうございます。それではこれから先、よろしくお願い致します」

「ああ」

 丁寧に頭を下げます。これで、今回レベルの危機は回避が可能でしょう。
 旅の安全性が上がりましたが、これ以上の危機に襲われた時、その時こそがわたくし達の成長速度にかかってきます。
 あまりにも成長が遅くて、呆れられないように努力をしなければ。

「ご飯できたよ~」

 テーブルに料理を並べながら、ケイがわたくし達を呼んでいます。
 ケイの料理はおいしいので、きっとレッド・ローズさんも喜んでくれるでしょう。

 夜の見張りは交代でする、と言ったのですが、レッド・ローズさんはいう事を聞かず、ずっと一人で見張りをしてしまいました。
 この方にとっては当たり前なのでしょうか。それとも別の意図があるのでしょうか。

 しかしお陰でゆっくり休め、盗賊に襲われた疲れが無くなりました。





 翌朝になり馬車を進めます。4人から5人になり、馬車は狭くなるかと思いましたが、元々大人4人が入れる馬車ですので、子供3人とわたくし、大人のレッド・ローズさんならば問題はありませんでした。

 それにしてもレッド・ローズさんは無口で、聞いた事にしか答えてくれません。
 しかし逆に言えば、聞いた事には答えてくれます。
 なので戦いのときの心構えや戦い方、依頼を受ける時の注意点なども教わりました。

 やはりこの方は経験が豊富ですね。

「なぁおっちゃん。おっちゃんはフランをナンパしに来たのかと思ったけど、違ったんだな」

「……俺はおっちゃんではない。まだ23だ」

 馬車の御者席ではマットとレッド・ローズさんが会話をしていますが……ハラハラします。
 マットがレッド・ローズさんをおっちゃん呼ばわりするとは。
 確かに子供のマットからしたらおっちゃんなのかもしれませんが。

「23ならおっちゃんじゃん。俺なんて13だぜ」

「それはお前がガキなだけだ」

 少々眉がヒク付いていますが、何とか平静を保っているようです。

「俺はガキじゃねーよ! おとなだ!」

「ふん。大人はこんな事で取り乱したりしない」

「な!? べ、別に怒ってねーし?」

 どうやらレッド・ローズさんの方が上手ですね。
 しかしこの2人、良いコンビなのではないでしょうか。

 その後は半分ケンカ腰のマットと、冷静を装うレッド・ローズさんとのやり取りが面白く、3人で笑っていました。
 意外な副作用がある物ですね。

「話づかれた……」

「うるさい、もうしゃべるな」

 そろそろ街の城壁が見えてきました。
 あれから盗賊にも魔物にも襲われず、平和に到着できそうです。

 確か次の街は鍛冶が盛んな街・ロジー・アーンでしたね。
 やはり聖都に近いだけあり、武器や防具が沢山必要なのでしょうか。

 門で受付をし、冒険者ギルドに顔を出します……が、ここでも同じ事が起こりました。

「ようこそいらっしゃいました聖女様! ロジー・アーンへよこそ!」

 受付嬢のその言葉の後、わたくし達は沢山の人に囲まれてしまいます。
 嫌ではありませんが、その、勧誘合戦はやめて欲しいのです。

 なので急いでギルドを後にし、宿を決めて街に逃げ込みました。

「うっひゃ~、なんだなんだ? あっちこっち鍛冶屋だらけじゃんか!」

「本当だね。鍛冶の街とは聞いてたけど、ここまで多いんだね」

「トンカチの音がうるさい~」

 確かに金属を叩く音が常に鳴り響いています。
 しかし街の人達は平気そうな顔なので、これも慣れという物でしょうか。
 ですが慣れていない人が約一名、顔色が悪くなっています。

「大丈夫ですかレッド・ローズさん。音がうるさいのなら、宿で待っていても良いのですよ?」

「……違う。ギルドで囲まれた……人が沢山……有象無象に囲まれた……」

 どうやら音にではなく、ギルドで囲まれた事が嫌だったようです。
 きっと人ごみが苦手な人なのでしょう。

「人が多くても……俺を見ていなければ大丈夫だ。もう少しで……回復する」

 ああ、街中は大丈夫なのですか。
 中々に厄介な症状をお持ちのようですね。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】あなたの思い違いではありませんの?

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?! 「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」 お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。 婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。  転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!  ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/19……完結 2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位 2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位 2024/08/12……連載開始

【完結】婚約破棄され国外追放された姫は隣国で最強冒険者になる

まゆら
ファンタジー
完結しておりますが、時々閑話を更新しております!  続編も宜しくお願い致します! 聖女のアルバイトしながら花嫁修行しています!未来の夫は和菓子職人です! 婚約者である王太子から真実の愛で結ばれた女性がいるからと、いきなり婚約破棄されたミレディア。 王宮で毎日大変な王妃教育を受けている間に婚約者である王太子は魔法学園で出逢った伯爵令嬢マナが真実の愛のお相手だとか。 彼女と婚約する為に私に事実無根の罪を着せて婚約破棄し、ついでに目障りだから国外追放にすると言い渡してきた。 有り難うございます! 前からチャラチャラしていけすかない男だと思ってたからちょうど良かった! お父様と神王から頼まれて仕方無く婚約者になっていたのに‥ ふざけてますか? 私と婚約破棄したら貴方は王太子じゃなくなりますけどね? いいんですね? 勿論、ざまぁさせてもらいますから! ご機嫌よう! ◇◇◇◇◇ 転生もふもふのヒロインの両親の出逢いは実は‥ 国外追放ざまぁから始まっていた! アーライ神国の現アーライ神が神王になるきっかけを作ったのは‥ 実は、女神ミレディアだったというお話です。 ミレディアが家出して冒険者となり、隣国ジュビアで転生者である和菓子職人デイブと出逢い、恋に落ち‥ 結婚するまでの道程はどんな道程だったのか? 今語られるミレディアの可愛らしい? 侯爵令嬢時代は、女神ミレディアファン必読の価値有り? ◈◈この作品に出てくるラハルト王子は後のアーライ神になります!  追放された聖女は隣国で…にも登場しておりますのでそちらも合わせてどうぞ! 新しいミディの使い魔は白もふフェンリル様! 転生もふもふとようやくリンクしてきました! 番外編には、ミレディアのいとこであるミルティーヌがメインで登場。 家出してきたミルティーヌの真意は? デイブとミレディアの新婚生活は?

婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~

腐ったバナナ
ファンタジー
「地味で役立たずな令嬢」――そう婚約者に笑われ、社交パーティで公開婚約破棄されたエリス。 誰も味方はいない、絶望の夜。だがそのとき、神殿の大神官が告げた。「彼女こそ真の聖女だ」と――。 一夜にして立場は逆転。かつて自分を捨てた婚約者は社交界から孤立し、失態をさらす。 傷ついた心を抱えながらも、エリスは新たな力を手に、国を救う奇跡を起こし、人々の尊敬を勝ち取っていく。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

処理中です...